2017.09.21  2020.08.07|新規開業ノウハウ

”中庭”が演出する癒しの空間をメディカルセンターの待合室を例に見てみよう!

”中庭”が演出する癒しの空間をメディカルセンターの待合室を例に見てみよう!

最近注目を引くデザイン要素になってきている中庭。「中庭」というとレンガ作りの西洋的な建物の間にあるこじんまりとした庭のイメージが強いかもしれませんが、日本の伝統的な武家屋敷などには、わびさびをテーマにした中庭が作られていました。

開放感を造り出し、癒しを提供する中庭。そんな中庭を店舗デザインの一つとしてどのように活用できるかを、メディカルセンターの待合室にフォーカスしながら見ていきたいと思います。

メディカルセンターの待合室

メディカルセンターは病気の人や気分のすぐれない人が行くところですから、その待合室は気が滅入らないように工夫したいものですが、実際には、ただ単に白一色に囲まれた内装になっている所が多いようです。

白ですから、汚れがあればすぐ目立ち、常にきれいで清潔に保つのには最高の色だと思うのですが、どこかに緊張感が漂っているのは事実です。

患者が求めているのは「清潔感」と「癒し」なのですが、普通の医療機関では「清潔感」はデザインできても「癒し」が作り出せていないのです。では「癒し」を演出するにはどうしたらいいでしょうか。

グランドピアノを置いたメディカルセンター

何年か前に、待合室にグランドピアノを置き、天井からシャンデリアをぶら下げたメディカルセンターがシドニーに開業しました。最初はテレビなどでも紹介され、物珍しさも手伝って、集客にもつながったのですが、やがて倒産してしまいました。

果たして、そのグランドピアノやシャンデリアが災いして倒産したのかどうかは確かではないのですが、個人的には、病気になっても、ホテルのような豪華な内装のメディカルセンターには行きたくない気がします。

それは、「豪華さ」は病気の時の気分を良くしてくれることはなく、かえって、病気という現実とのギャップを感じさせられてしまうからです。このメディカルセンターには緊張感はありませんが、豪華さでは「癒し」を提供できないのです。

静岡がんセンターに学ぶ癒しの作り方

数年前に、知人ががんにかかり、静岡県のがんセンターに入院し、何度かお見舞いに行きました。

このがんセンターは2002年に、「患者の気持ちを大切に」というコンセプトのもとに創設されましたが、敷地及び建物のデザインが素晴らしいものでした。

まず環境が抜群でした。富士山を間近に望む小高い丘の上に建てられたので、毎日窓から富士山を見ることができました。

室内は普通の病院とあまり変わらないのですが、建物の周りには芝生や植木、花壇など緑がいっぱいで、病室から簡単に外に出ることができ、散歩をするのに最適な環境が作り出されていました。

そして感じたことが、こうした植物こそが病気の人を癒す最高の物だということでした。それは、たぶん植物が「成長」するものであるため、生命の強さを感じさせてくれるからだと思います。

中庭の活用

では、普通のメディカルセンターに戻って、もう一度癒しの演出の仕方について考えてみましょう。

前述のがんセンターは病院ですから、敷地も広く、庭や芝生の面積もかなり大きく取ってありますが、小規模のメディカルセンターでは、それほどの敷地を確保することはできません。

けれども、植物を植えるところが「中庭」なら、必要な面積を確保することはそれほどむずかしくないと思います。

メディカルセンターの待合室から見える所に小さくても良いのでガラス張りにした中庭を造れば、待っている間に、植物を見て楽しむことができます。そこには鳥やチョウがやってくるかもしれません。

こうしたものが「癒し」となって病気の人を元気づけるのです。

メディカルセンターには不向きな室内用植物

中庭を作るのは少し手間暇がかかります。「それだったら、室内用植物を鉢に植え、室内に置けばいいのでは」という人もいるかもしれません。

ただ、室内用植物には鉢に入れた土があり、そこに何かの虫が卵を産み付ける可能性があります。虫退治だけなら殺虫剤をスプレーして解決しますが、その殺虫剤が良くないと言う問題も発生します。

このような理由から、メディカルセンターには、室内用植物は不向きで、ガラス張りの中庭を活用するほうが適していると言えるでしょう。

中庭の維持管理

「中庭」と言うと維持管理が大変なのではという人もいます。でも最近では維持管理が簡単な庭づくりが一般に知られるようになっています。

庭の維持管理で一番大切なのが水の管理ですが、植物に水を供給するには、配管を地面から10㎝くらいの下の所に這わせ、タイマーを取り付けます。

こうすることにより、水が自動的に植物に供給されることになります。タイマーの中には、湿度を検知して、雨が降りそうな時やすでに降っているときには水の供給をストップできるタイプもあります。

次に中庭に植える植物ですが、成長が遅い常緑樹を選べば、剪定の頻度が少なくなり落ち葉もほとんどありませんから管理が楽になります。

また、雑草は地面を小石やレンガなどで覆ってしまえばそれほど生えてこなくなるでしょう。

まとめ

店舗デザインの中で、開放感を生み出し癒しを演出する中庭は、メディカルセンターの待合室のように癒しの要素を特に必要とする場所に大きな効果をもたらします。

通常、庭の維持管理は大変と思われがちですが、工夫することで、手間暇のかからない中庭作りが可能になるでしょう。

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監修者

IDEAL編集部

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