本記事で、店舗を開業する流れと…
2022.02.09 2022.06.30|新規開業ノウハウ
店舗兼住宅を建てる方法!デザインするポイントやローンについて解説
「店舗を経営しているが自宅から遠い」や「引越しのタイミングで店舗兼住宅を建築したい」などの理由から、店舗兼住宅を建築・賃借して開業する方は少なくありません。しかし「どんな住宅にどんな店舗でも開業できる」のでしょうか?
そこで今回は店舗兼住宅を建てる方法やデザインするポイント、住宅ローンの組み方などに関してご説明します。店舗兼住宅について総合的な知識がつく内容となっておりますので、ぜひ参考にしてください。
店舗兼住宅とは
店舗兼住宅とは、ひとつの建物の中に店舗と住宅が存在しており行き来できる物件です。住宅に暮らしながら店舗を経営できるため、店舗兼住宅は自営業を始めたい人や家族経営をしたい人などにおすすめです。
建物の構造や間取りを自由に決めることができるため、多くの業種において店舗兼住宅で開業することができます。1階を店舗にして2階を住宅にする間取りが一般的です。
店舗兼住宅のメリット・デメリット
店舗兼住宅にはさまざまなメリットやデメリットがあります。店舗兼住宅のメリットは以下のとおりです。
- 店舗家賃が不要である
- 通勤時間や交通費も不要である
- 建築費の一部を経費として計上可能である
- 店舗経営を終えたら賃貸可能である
店舗兼住宅には店舗家賃や通勤時間、交通費が不要で、建築費の一部を経費計上できるため、開業資金を削減できます。また店舗の経営が悪化して廃業しても、賃貸物件として貸し出すことで家賃収入を得られます。
一方で以下のようなデメリットが挙げられます。
- 立地条件により集客が左右される
- 近隣への配慮が必要である
- 専用住居よりも売却しにくい
店舗への集客に影響が出るため、立地条件を慎重に検討することが必要です。顧客がにぎやかに会話をする飲食店などの店舗を開業する場合には、近隣への配慮が必要になります。それから専用住居より売却しにくいため、廃業のリスクに備えておきましょう。
店舗兼住宅の種類
店舗兼住宅には、一軒家タイプと集合住宅タイプがあります。
一軒家タイプは自宅用の一軒家の一部を店舗として利用します。自宅の1階を店舗にして2階を居住スペースにするケースが代表的ですが、平家1階の一部を店舗にする場合もあります。一軒家を所有している場合は、すぐに店舗を開業することが可能です。
また一軒家タイプのレイアウトは、「店舗と住宅を行き来できる」レイアウトと「分離して行き来できない」レアアウトに分かれます。開業する店舗の業種や法的要件、予算、私生活などを考慮して、店舗と住宅のレイアウトを考えることが必要です。
集合住宅タイプは、アパートやマンションなどの集合住宅の一部を店舗にします。一般的には、特定のフロアの全てや一部を店舗として利用します。なかでも1階部分に店舗が入り、2階以上を住居としているケースが多いです。立地の良い人気物件であれば効果的な集客を期待できます。
集合住宅の一部を所有して賃貸物件として貸し出すことで、月々の収入を増やすことが可能です。「将来的に家賃収入を得たい」「賃貸収入で住宅ローンの補填をしたい」「集客に力を入れたい」と考える方は、集合住宅タイプが適しているでしょう。集合住宅タイプに開業する店舗として、コンビニやスーパー、100円ショップなどの業種が人気です。
店舗兼住宅を建てる流れ
店舗兼住宅を建てるときの流れは、以下のとおりです。
- 業者(内装デザイン会社や工務店)との面談やヒアリング
- 立地調査
- デザイン制作
- 見積もりと契約
- 工事と検査
- 引き渡し
デザインと工事を依頼する業者を選ぶ時には、数社をピックアップして面談やヒアリングを申し込みましょう。相見積もりを取ることで、費用やデザインを比較検討することができるからです。
デザイン制作においては、店舗の立地やコンセプトなどの細かな部分まで希望を伝えて、店舗兼住宅のレイアウトを決めていきます。納得できる内容を契約するために、見積もりの不明点や疑問点を確認しましょう。
業者と契約したら、工事中に定期的に連絡を取りながら理想とする店舗の完成を目指していきます。工事の様子を定期的に見学して、気になる点を確認するようにしましょう。
店舗兼住宅をデザインするポイント
店舗兼住宅の概要を理解したところで、間取りづくりのポイントを8点に整理して解説します。
1階に店舗を構える
店舗を1階に構えると歩行者やドライバーの目に留まりやすく、集客に効果的です。
2階以上にある店舗へ入るためには階段やエレベーターを利用する必要があり、1階にある店舗より心理的にも物理的にも入りにくい傾向があります。
セキュリティ対策をする
セキュリティ対策として、まず店舗と住宅の動線を分けることが挙げられます。店舗と自宅の入口を分けることで、不審者にプライベート空間へ侵入されることを防止できます。特に店舗を貸し出して家賃収入を得たい場合には、店舗と住宅の動線を完全に分けて行き来できないようにしましょう。
動線を分ける以外にも、防犯カメラや金庫の設置が必要です。関係者以外の立ち入りを禁止するスペースには鍵をつけることも忘れてはなりません。セキュリティ対策することで顧客に安心して来店してもらうことができ、集客や売上げに良い影響をもたらします。
店舗の利便性や環境をよく検討する
顧客と従業員が利用しやすいように、店内の利便性や環境をよく検討することが大事です。例えば飲食店やサロンにおいては、店内の様子を外にいる歩行者やドライバーから見られないようにすると、顧客が居心地よく過ごすことができます。
また家族層や高齢者層をターゲットにする場合には、多目的トイレやバリアフリー環境を整備することで、多くの集客を狙えます。快適な環境を提供する店舗をデザインできれば、リピーターや新規顧客を獲得できるでしょう。
店舗内が外から見えるようにする
店舗内の様子が外から見えるようにすると、歩行者やドライバーに店の混雑状況や雰囲気を伝えることができます。また店内の綺麗さや魅力を見せることで、集客効果を期待できます。特に道路に面した窓を大きくすることで、店舗の内装をアピールすることができます。
ただし飲食店やサロンにおいては、店内の様子がみえることで顧客が居心地悪さを感じる危険性を考慮しなくてはなりません。
テラスやウッドデッキを設置する
カフェやレストランなどの飲食店においては、テラスやウッドデッキの座席を設置すると集客に効果的です。
特に若年層をターゲットする場合にテラスやウッドデッキで「おしゃれ」で「にぎわう」雰囲気を演出すると、顧客にSNSからお店を発信してもらいやすくなります。
駐車場や駐輪場を確保する
地域やエリアによっては顧客が主に車で来店することになりますので、駐車場を確保することが必要です。駐輪場も併せて設けることで、より多くの集客を期待できます。
店舗敷地内に駐車場を確保できないときは、近隣の駐車場を契約しましょう。顧客の滞在時間が比較的短い花屋やベーカリーショップなどにおいては、あえて駐車場を設けずにコインパーキングを利用してもらうことで、回転数を向上させることできます。
集客に大きく影響するため、出店エリアや業種などを考慮した上で駐車場や駐輪場の設置を検討しましょう。
バックヤードや休憩室、執務スペースを確保する
バックヤードや休憩室、執務スペースを設置することで、業務の効率化を図り快適な労働環境を整備できます。必要なスペースで在庫管理や事務処理をして作業効率を上げると、コストを削減して利益を増やすことができます。
ただしバックヤードを設置する分だけ「売り場やサービスに利用できるスペース」が狭くなるため、店舗全体のバランスを考慮することが必要です。
店舗兼住宅の法規制
店舗兼住宅は、どんな土地にも建築できるわけではありません。店舗兼住宅に関する法規制を確認しましょう。
兼用住宅と併用住宅の違い
一言で「店舗兼住宅」といっても、建築基準法では「店舗と住宅の行き来ができるか」によって次の2つの種類に分けられています。
・店舗兼用住宅:店舗と住宅の行き来ができる建物
・店舗併用住宅:店舗と住宅の行き来ができない建物
用途地域による制限
建築基準法第48条には、「用途地域等」が定められています。つまり「どの地域にどんな建物を建ててよいか」が決められているのです。
例えば第一種低層住居専用地域には主に低層住宅を建てることができ、学校や福祉施設なども建築可能です。しかし例外を除いて、小規模であっても商店を建てることが許可されません。
それでは第一種低層住居専用地域に店舗兼住宅を建てることはできないのでしょうか?
第一種低層住居専用地域内
第一種低層住居専用地域内では、次の条件や用途を満たすことで兼用住宅を建築して店舗を開業することができます。
兼用住宅の建築条件
「延べ面積2分の1以上が住宅で、店舗部分床面積が50㎡以下であること」
兼用住宅の用途条件
- 事務所(※)
- 日用品販売店舗・食堂・喫茶店
- サービス業の店舗(美容院・クリーニング屋・洋服店など)
- 洋服店・畳屋・建具屋など(※)
- パン屋・菓子屋・豆腐屋など(※)
- 学習塾・華道教室など
- アトリエ・工房(※)
※一部適用外あり
なお店舗の業態や使用する原動機の出力(0.75kw以上)には制限があり、建築が許可されない場合がありますのでご注意ください。
第一種低層住居専用地域外
第一種低層住居専用地域外になると、兼用住宅も併用住宅も建築できるケースが増えます。例えば第二種低層住居専用地域(1~2階の低層住宅が建ち並ぶ地域)では、次のように建築基準が緩和されます。
・店舗床面積が150㎡以下
・使用する原動機の出力が0.75kw以下
参考:「建築基準法施行令」第130条の5
また第一種中高層住居専用地域になると、店舗などの面積が500㎡を超えても店舗兼住宅を建築できるため、大規模な店舗を開業できます。
店舗兼住宅で住宅ローンを組むには?
店舗兼住宅を建築するときは、金融機関のローンを検討する場合が多いでしょう。住宅ローンは、事業用ローンに比べて一般的に金利が低いからです。
そこで店舗兼住宅に対する「住宅ローンの申請条件」と「住宅ローン控除」のポイントをご説明します。
住宅ローンの申請条件
店舗兼住宅に対して住宅ローンを組んでもらえる金融機関は限られており、事前に申請条件を確認する必要があります。一般的には次のような申請条件が定められています。
- 店舗部分の床面積が「建物全体の2分の1以下」
- 店舗部分を自分の事業のために使用(賃貸目的ではないこと)
他にもローンの種類によって「建物の床面積」や「登記の形式」などの条件があるので、申請する金融機関のローン担当者に相談して条件をよく確認しましょう。
住宅ローン控除の適用条件
住宅ローンを組んで店舗兼住宅を建てると、一定の条件を満たすことで住宅ローン控除が適用されます。住宅ローン控除とは、「住宅を購入してから一定期間、所得税から所定の額が控除される」制度です。
店舗兼住宅を新築したときに住宅ローン控除が適用されるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 新築から6ヶ月以内に居住開始
- 控除を受ける年の合計所得が3,000万円以下
- 住宅の床面積が50㎡以上
- 床面積の2分の1以上が住宅
- 返済期間が10年以上
- 「長期譲渡所得の課税の特例」が一定期間適用されていないこと
参考:国税庁「No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
また中古住宅を購入して店舗兼住宅を建てる場合は、新築住宅に対する住宅ローン控除の適用条件に加えて、次の条件をクリアする必要があります。
- 建設住宅性能評価書の取得
- 耐震基準適合証明書を取得
- 既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約の加入
- 築年数が20年以下(木造建築物)か25年以下(耐火建築物)
なお適用される住宅ローンの控除額や控除期間は、住宅を購入する年に応じて異なりますので注意してください。
参考:国税庁「No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
店舗兼住宅の経費計上
最後に店舗兼住宅で店舗を経営する場合に経費として計上できるものがありますので、具体的に解説します。ただし店舗の会計処理について詳しく知りたい場合には、税理士などの専門家に相談しましょう。
光熱水道費
店舗で使った分の光熱水道費(水道・電気・ガスなど代金)を経費として計上するためには、住宅用と店舗用に使用した分を按分(比例配分)して費用を計算します。
通信費
店舗で利用した通信費(電話・インターネット接続・切手・テレビ受信などの代金)も、店舗で使用分を按分して計算します。
火災保険料
店舗兼住宅に申請する火災保険料も経費として計上できます。ただし店舗兼住宅は一般物件に該当するため、住宅物件よりも保険料が高くなる傾向にあります。
また同じ店舗兼住宅においても、火を使う飲食店などの業種の保険料は事務所や小売店よりも割高になる傾向です。
なお保険会社によっては店舗兼住宅に申請できる火災保険を販売していない場合があるので、注意しましょう。
建築費用のローン利息・減価償却費・固定資産税
店舗兼住宅の建築費用に組んだローンについて、元本を経費にすることはできません。しかし利息や減価償却費・固定資産税については、住宅と按分することで経費として計上することが可能です。
設備費
店舗兼住宅の設備(ソーラーパネルやキッチンなど)についても、店舗で使用する分を按分して経費に計上することができます。
店舗兼住宅の魅力を活かして経営しよう!
店舗兼住宅の間取りや法規制、費用の基礎的知識を解説しましたが、参考にして頂けましたか?住宅と店舗が同じ敷地内にあるという魅力を生かして、様々な店舗を開業することが可能です。
しかし店舗を開業して売上を伸ばすためには、コンセプト設計や内装工事も重要です。店舗開業や内装デザインなどに関して下の記事にまとめてありますので、併せてご覧ください。
またIDEALは、店舗デザインや施工をワンストップで支援するサービスを多くの経営者の皆様に提供して参りました。
店舗開業や内装デザインなどに関してお悩みの方は、ぜひご相談ください。
監修者
-
IDEAL編集部
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