2024.05.13 2024.04.08|店舗運営ノウハウ
店舗の電気代を節約・削減する際の注意点!業種・業態別の事例も紹介
本記事で、店舗の電気代を節約・削減する際の注意点を解説します。また店舗の業種・業態別の電気代を節約・削減する方法や事例もご紹介します。店舗の開業や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。
目次
店舗の電気代に関する基本情報
店舗を開業する際には、電気代に関する基本情報を押さえておきましょう。基本情報を押さえることで、電気代を節約・削減しやすくなるからです。本記事では4点(重要な理由と値上げの状況、仕組み、料金プランの比較)について取り上げます。
重要な理由
まず店舗の電気代が重要な理由は、コスト削減やSDGs達成などのためです。以下の調査によると、多くの飲食店において、水道光熱費が売上の5%程度を占めています。そして水道光熱費の中で、電気代の節約が一番の課題です。
参照元:PRTIMES「水道光熱費の削減に関する調査を実施。86.2%の飲食店が電気代の削減に「興味あり」と回答」
また店舗経営においては、地球温暖化の防止やエネルギーの安定供給、経済の効率性等を意識して、SDGs達成への貢献が求められます。店舗の省エネ対策の方法について紹介していますので、次の記事も併せてご覧ください。
値上げの状況
次に店舗の電気代については、値上げの状況が続いています。複数の要因(寒波による電力需要の増加や原油・天然液化ガス価格の高騰、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー供給の不足など)から、2021年より電気代の値上げが続いてきました。
参照元:経済産業省 資源エネルギー庁「第1節 世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰
そして2024年4月利用分からは、再エネ賦課金の値上げに伴い、電気代が550円程度値上げする見通しです(2024年4月時点の情報)。
参照元:Yahoo!ニュース「電気料金 4月利用分から大手電力10社全てで値上げへ “再エネ賦課金”引き上げで」
仕組み
それから店舗の電気代の仕組みは、基本料金・電力量料金・再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)から成り立っています。
- 基本料金 :ブレーカーの容量によって決まる固定料金で、毎月同じ金額が請求される
- 電力量料金 :電力使用量に応じて発生する料金で、「1kWhの単価×使用した電力量」で計算される
- 再エネ賦課金:電気使用者に割り当てられる再生可能エネルギーの普及費用
参照元:東京電力「電気料金の計算方法」
ただし契約する電気会社によって、プランや割引の仕組みが異なりますので、ご注意ください。
料金プランの比較
そして店舗の電気代を節約・削減するためには、料金プランの比較が必要です。大手電力会社(東京電力や中部電力など)の従来プランでは、基本的に使用した電力量によって電力単価が変動します。
参照元:東京電力エナジーパートナー株式会社「スタンダードプラン(関東)|電気料金プラン」
一方で、2016年に電力の小売全面自由化より、大手電力会社以外の新たに参入した電力会社は「新電力会社」と呼ばれます。新電力会社のプランには、時間帯で変動する電力単価のプランや基本料金無料のプランなどがあります。
店舗の業種・業態別の電気代を節約・削減する方法
基本情報を押さえたうえで、店舗の業種・業態別の電気代を節約・削減する方法をご紹介します。本記事では、5業種(飲食サービス・宿泊業と生活関連サービス業、小売業、教育・学習支援業、医療・福祉業)について取り上げます。
飲食サービス・宿泊業
まず飲食サービス・宿泊業の店舗の電気代を節約・削減する方法として、冷蔵庫の節電や営業時間外の省エネなどに取り組みましょう。傷んでいるパッキンを交換したり、ドアに遮熱カーテンを付けたりして、冷蔵庫内の温度を一定に保つと、節電効果が得られます。
また営業時間外(晴天時の日中の清掃時など)には自然の採光や換気を基本にして、極力消灯したり、空調設備の利用を最小限にしたりすると、電気代の削減につながります。ただし電気代削減だけではなく、従業員の健康や安全に対する配慮も重要です。
生活関連サービス業
次に生活関連サービス業の店舗の電気代を節約・削減する方法には、省エネ性の高い設備や電子ブレーカーの設置、営業時間外の省エネ対策などがあります。年代の古い設備の省エネ性能は低い恐れがあるからです。
電子ブレーカーなら、設備の稼働状況や契約している電力プランによって、通常のブレーカーよりも電気代を削減できます。営業時間外には、使用していない部屋の電気を消灯したり、空調温度を調節したりして、省エネ対策を心がけましょう。
小売業
それから小売業の店舗の電気代を節約・削減する方法は、コンセントの節電や照明器具・空調設備のセンサー導入などです。使用していない電化製品の電源をこまめに切ったり、可能な範囲でプラグを抜いたりすると、節電効果があります。
照明器具に人感センサーを取り付けると、使用しない照明の付けっぱなしを防ぎます。空調設備のセンサーは、室温を感知しながら温度を一定に保つことで、効きすぎの防止が可能です。
教育・学習支援業
そして教育・学習支援業の施設の電気代を節約・削減する方法には、空調設備の設定温度や熱負荷計算などがあります。環境省の推奨する室温(夏季28℃と冬季20℃)を目安に、空調設備の設定温度を調節しましょう。
熱負荷とは、建築物内の温度を保つために必要な熱量です。過剰な電気消費を防ぐために、熱負荷に合う性能の空調設備を選びましょう。空調設備をデザインするポイントについて紹介していますので、次の記事も併せてご覧ください。
医療・福祉業
なお医療・福祉業の施設の電気代を節約・削減する方法には、電力会社・プランの乗り換えやグリーンカーテンなどがあります。条件に合うプランの電力会社に乗り換えれば、月々の電気代を削減できます。消費電力が多い施設には、一律単価の電力会社が効果的です。
グリーンカーテンとは、外壁に沿ってカーテン状に設置された植物(つる性のゴーヤや朝顔など)です。窓や外壁の表面温度を下げて、空調設備の省エネにつながります。
参照元:横浜市南区「緑のカーテンの効果」
店舗の電気代を節約・削減する際の注意点
店舗の電気代を節約・削減する方法だけでなく、注意点も押さえましょう。本記事では、9点(課題と時間帯・季節、使用量、継続性、内装デザイン、メンテナンス、断熱・遮熱性、コスト、周知)をご紹介します。
課題の特定
まず課題の特定が、店舗の電気代を節約・削減する際の注意点として挙げられます。店舗で使用する設備・機器ごとに電力使用量を把握して、電気代を計算します。電気代の課題(電力使用量の多い設備・機器)を特定しましょう。
例えばエアコンの電気代が高い場合には、省エネ性の高いエアコンへの買い替えを検討したり、空気を循環させるサーキュレーターを取り入れたりしましょう。
使用する時間帯や季節
次に使用する時間帯や季節も、店舗の電気代を節約・削減する際の注意点です。時間帯によって電気料金が変動するプランにおいては、電気使用量が集中する時間帯(ピークタイム)の使用を避けましょう。
ただし店舗の業種・業態や季節によって、電気を使用する時間帯は異なります。自店舗の電気使用量のピークタイムを調査したうえで、適した電力料金プランの選択が重要です。
適切な使用量
また適切な使用量も、店舗の電気代を節約・削減する際の注意点です。電気代の節約・削減を優先しすぎると、店舗の営業に支障をきたす恐れがあります。商品・サービスの品質低下は、集客と売上の低下を引き起こします。
例えばエアコンの電気使用量を減らそうとしすぎると、店舗内の室温を快適に保てません。店舗の快適性を下げてしまうと、顧客の満足度や従業員の業務効率の低下などが起こってしまいます。
施策の継続性
それから施策の継続性も、店舗の電気代を節約・削減する際の注意点です。従業員の負担が大きい施策は、継続性を低下させます。従業員が継続しやすい電気代の節約・削減方法から取り入れましょう。
例えば照明器具の電気代削減という目標を立てた場合に、手動でオンオフする施策では従業員の負担やエラーが生まれます。そこで自動でオンオフできる人感センサー付きの照明を導入して、施策の継続性を高めましょう。
内装のデザイン
そして内装のデザインも、店舗の電気代を節約・削減する際の注意点です。店舗の雰囲気作りに照明が重要な役割を果たす業種・業態(生活関連サービス業の美容院や小売業の雑貨屋など)においては、省エネ性の高いLED照明が内装デザインに合わない恐れがあります。
例えば美容室においては、照明の当たり具合で髪色が違って見えてしまいますので、照明の色味や角度に注意しましょう。店舗におしゃれな照明をデザインするポイントをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
メンテナンス
さらにメンテナンスも、店舗の電気代を節約・削減する際の注意点です。電気設備を定期的にメンテナンスすることで、省エネ性能を維持したり、修理・交換などのコストを節約・削減したりできます。
例えばエアコンのフィルターは、定期的に掃除しましょう。照明器具が汚れていると明るさが低下してしまうので、常に清潔に保ちましょう。店舗メンテナンスの重点箇所についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
店舗物件の断熱・遮熱性
加えて店舗物件の断熱・遮熱性も、店舗の電気代を節約・削減する際の注意点です。店舗物件の断熱・遮熱性が高いと、外気温の影響を受けにくく、エアコンの電気代削減につながります。
ただし断熱材や遮熱材にはさまざまな種類がありますので、店舗物件に適した断熱材や遮熱材を選びましょう。店舗の断熱・遮熱対策についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
コスト
続いてコストも、店舗の電気代を節約・削減する際の注意点です。例えば電気料金プランの契約中に別の電力会社に乗り換えると、違約金が発生する場合があります。契約条件を事前に確認しましょう。
また省エネ設備(LED照明や断熱窓など)を導入するためには、本体料金と工事費用がかかります。国や自治体の補助金・助成金などを活用しながら、計画的に導入を進めましょう。
参照元:東京都地球温暖化防止活動推進センター「ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業」
従業員への周知
なお従業員への周知も、店舗の電気代を節約・削減する際の注意点です。施策の周知を徹底して、従業員の節電に対する意識が高まれば、電気代の節約・削減につながります。従業員へ周知する方法として、注意喚起の張り紙や定期的な研修などがあります。
電気代の節約・削減に関する研修会を開催する場合には、参加しやすい環境を整えて、開催後に効果測定を行いましょう。店舗経営における研修の注意点をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
店舗の電気代を節約・削減した事例
注意点に気をつけながら店舗の電気代を節約・削減できるように、参考となる事例を調査しましょう。本記事では5事例を取り上げて、各事例の特徴(LED照明と電子ブレーカー、空調設備、空気拡散用ファン、断熱性能)をご紹介します。
LED照明を導入した飲食店
まず「すかいらいくホールディングス」は、飲食店を経営している会社です。新規出店する店舗にLED照明が導入されて、電気代が節約・削減されています。客席と厨房にLED照明を導入した店舗の電力使用料は、従来の店舗の8分の1に抑えられています。
今後は新規店舗だけではなく、既存店舗にもLED照明を導入していく方針です。なおLED照明の導入は脱炭素社会の実現へ向けた施策であり、燃料電池やフリーザーシステム、エコ箸、大豆ミートなども導入されています。
参照元:すかいらーくホールディングス「脱炭素 | 環境 | サステナビリティ」
電子ブレーカーを導入した美容室
次に「フォルムアージュ」は、電子ブレーカーを導入した美容室です。店舗の電気代高騰をきっかけに電子ブレーカーを導入して、年間15万円程度の電気代を削減。電子ブレーカー選びの際には、アフターフォローや実績を重視して比較検討を重ねました。
美容室ではドライヤーやヘアアイロンなどが多くの電力を消費しますが、無理な節電をせずに電気代を削減できるため、従業員の負担が少なく済んでいます。さらにLED照明の導入も検討中です。
省エネ性の高い空調設備を導入した小売店
それから「しまむらグループ」は、省エネ性の高い空調設備を導入した小売店です。新規店舗を出店する際や改装工事の際に、従来の空調設備から省エネ性の高い空調設備へ切り替え、電気代の削減につながっています。
省エネ性の高い空調設備の導入は、気候変動への取組み(温室効果ガスの削減)として推進。具体的な目標が策定されており、スピード感をもって課題解決へ向けて取り組みが展開されています。
空気拡散用ファンを施工した学習塾
そして「株式会社湘南ゼミナール」は、空気拡散用ファンを施工した学習塾です。ファンが空気を拡散することで、塾内の温度を一定に保ちやすくなり、空調性能の向上が期待されます。
また窓に断熱フィルムが貼付されているため、断熱性能を高めて外気温の影響を受けにくくする効果も期待されます。そしてLED照明の導入を推進して、電気代の節約・削減を進めている学習塾です。
参照元:大塚商会「LED照明導入事例-株式会社湘南ゼミナール様」
断熱性能を高めた老人ホーム
なお「特別養護老人ホーム瀬戸の里」は、断熱性能を高めた老人ホームです。改修工事の際に外断熱が採用され、断熱性能の高い窓が施工されて、電気代の節約・削減につながっています。
365日24時間、快適な温度を保たなくてはならない老人ホームにおいては、消費電力が多いです。そこで太陽熱利用システムやヒートポンプ給湯器も導入されています。省エネだけではなく、再エネにも取り組む老人ホームです。
店舗の電気代を節約・削減しよう!
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監修者
-
IDEAL編集部
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