2025.05.12 2025.05.29|お知らせ
店舗立地の選び方とは?トレンドと選定ポイントを徹底解説

目次
商圏分析やマーケティング戦略を練るうえで、立地の選定は事業成否を左右する重要な要素です。近年は、通行量や交通利便性だけでなく、地域のイメージや競合状況といった多角的な視点で立地を判断する動きが強まっています。本記事では、時代の流れを反映した立地選びの考え方と、現場で役立つ具体的な選定ポイントを解説していきます。
立地が店舗経営に与える影響とは

立地が左右する主な経営指標
店舗の売上や集客数は、提供する商品やサービスだけでなく、店舗の立地によっても大きく左右されます。とくに初めて来店する顧客にとって、立地は来店の判断材料の一つとなります。立地条件が整っていれば、通行人がふと足を止める可能性が高まり、店舗の存在自体が集客力を持つことになります。
例えば、交通量が多く視認性の高い場所では、広告を強化せずとも人目に触れる機会が多くなります。反対に、目立たない場所にある店舗は、いくら魅力的なサービスを提供していても、来店されなければ評価される機会そのものが得られません。
さらに、立地が良いとされるエリアでは、集客が安定しやすく、商圏の維持がしやすい傾向があります。立地が不利な場合、キャンペーンや広告による集客が必要となるため、運営コストの増加に直結します。このように、立地は間接的に利益率や営業効率にも影響を及ぼす要因の一つです。
売上以外にも影響する「立地の質」
店舗経営における立地の影響は、単なる売上や集客数の問題にとどまりません。採用やスタッフの定着率にも関係してくるのが、立地の質といえるでしょう。例えば、通勤が困難な場所や人通りが少ない地域では、人材の確保が難航しやすくなります。立地が整っていれば、働きやすさの面でもアドバンテージとなり、労働環境への満足度にもつながっていきます。
また、立地によっては周囲の建物や街並みと調和した外観デザインが求められる場面もあります。視覚的な調和やブランドイメージの一貫性を保つためには、立地に合った設計が必要です。これにより、地域との関係性も良好に保ちやすくなり、長期的な経営に安定感をもたらします。
さらに、地域の文化や生活スタイルに合わせた営業スタイルを取ることも可能です。たとえば、日中に人の動きが活発な地域と、夜間に賑わう地域では、営業時間や接客方法に工夫が求められます。立地がもたらすこうした環境要因は、戦略設計の前提として重要な要素です。
立地の分類とそれぞれの特徴
駅前・商業施設・路面などの都市型立地
都市部でよく見られる立地には、駅前、ショッピングモール内、商店街沿いといった、人の動きが集中しやすい場所が含まれます。こうしたエリアはアクセスの良さと視認性の高さが特徴で、自然と人目に触れやすく、集客につながりやすいとされています。とくに通勤や通学で人の流れが安定している場所では、特別な販促活動を行わずとも一定の来店が期待できます。
また、商業施設内に店舗を構えるケースでは、施設全体の集客力に依存する部分があるため、立地だけでなく施設全体の運営方針も考慮する必要があります。施設内店舗は天候や季節の影響を受けにくい一方で、契約条件や営業時間に制約があることも珍しくありません。路面店の場合、店頭の演出次第で通行人に強く印象を残せる点がメリットです。
ただし、都市型立地は賃料が高めに設定される傾向があるため、事業計画の段階で採算性を細かく確認することが求められます。単に人通りが多いという理由だけで判断すると、コストとのバランスを欠く結果になりかねません。
ロードサイド・住宅街といった郊外型立地
一方で、郊外に展開される立地として代表的なのが、幹線道路沿いや住宅街の中にある店舗です。これらは自動車を主な移動手段とする顧客層を想定して設計されており、駐車場の広さや出入りのしやすさが重視されます。とくに郊外型のロードサイド店舗では、敷地の広さを活かした店舗レイアウトやゆったりとした動線設計が可能です。
住宅街にある店舗は、地域住民との関係性が運営のカギとなります。生活圏に密着したサービスや日常的に利用される商品との相性が良く、長期的な顧客との信頼関係を築くことが重視されます。派手な宣伝ではなく、地域の声に耳を傾けながら運営方針を調整していく柔軟性が求められる場面もあります。
ただし、郊外型立地には注意点も存在します。近隣に同業種の競合が集中している場合、選ばれる理由が明確でないと差別化が難しくなる傾向があります。また、通行量の多さが来店につながるとは限らず、周辺の生活スタイルや道路事情を十分に読み解くことが重要です。
それぞれの立地で重視すべきポイント
立地ごとに求められる戦略は異なりますが、共通して重要なのは、その場所に適した顧客ニーズとの整合性です。都市型では人通りや視認性が優先される一方、郊外型ではアクセス性や生活圏との距離感が重視されます。どの立地を選ぶにしても、単純な条件の良し悪しではなく、業種やコンセプトに合致するかどうかが判断基準になります。
そのため、立地選定では一方的なメリットの多寡にとらわれず、自社にとって何が重要かを見極める視点が求められます。具体的には、どのような層をターゲットに据えているのか、集客方法は何を軸にするのか、地域との関係性をどう築いていくかといった観点から、立地の適性を評価していく必要があります。
選定前に必ず確認したいエリアの特性

地域のブランドイメージと消費者層
立地を選ぶ際、単に地理的な利便性や通行量の多さだけで判断するのは不十分です。候補地が持つブランドイメージや、そこに暮らす人々のライフスタイル、消費傾向を把握することが不可欠です。たとえば、落ち着いた雰囲気の住宅街と、賑やかな繁華街とでは、顧客が求める体験やサービスに大きな違いが出てきます。
地域ごとに形成されている「街の印象」は、出店する店舗の雰囲気やサービス内容と一致していることが重要です。ギャップがある場合、いくら立地条件が良くても定着率が低くなる可能性があります。また、周囲の街並みや店舗構成もイメージ形成に影響します。そのため、地域に溶け込むことができる業態やデザインを前提にした立地選定が必要です。
消費者層の把握も重要な視点です。年齢層、家族構成、生活時間帯、価値観などを把握し、自社の提供する商品やサービスと相性が良いかどうかを判断することが求められます。表面的な条件だけでなく、地域で暮らす人々の「日常感」に目を向けることで、ミスマッチを防ぐことができます。
エリアの成長性と将来的な変化リスク
現在の条件だけでなく、将来的な変化を見越して判断することも大切です。地域の発展性や再開発の計画、人口動態の傾向など、長期的な視点でそのエリアがどう変わっていくかを読み解くことが、安定的な店舗運営につながります。
特に、住宅開発や商業施設の新設が予定されている地域は、今後の集客力が高まる可能性があります。一方で、大型施設の撤退や人口減少が進んでいる地域では、集客力が下がるリスクも視野に入れる必要があります。変化の兆しに気づかず出店してしまうと、初期の予測と実態が乖離してしまう危険性があります。
こうした情報は、自治体の都市計画資料や地域の公的データから確認することが可能です。また、地元の不動産会社や商工会など、地域に根ざした情報を持つ機関からのヒアリングも有効です。現地を訪れて肌感覚で状況をつかむことも大切ですが、それだけに頼らず、複数の情報源を組み合わせて判断することが望まれます。
競合と共存するための立地戦略
競合との距離感と差別化の考え方
競合店舗の存在は、立地を評価するうえで避けては通れない要素です。出店候補地にすでに同業種の店舗が存在している場合、それがリスクであると同時に、商圏の成熟度を示すサインともいえます。重要なのは、競合との物理的な距離だけでなく、業態や提供価値における「違い」を明確にできるかどうかです。
たとえば、同じ業種でも顧客層や価格帯、サービス内容が異なれば、共存できる余地が生まれます。単に近くに競合があるからといって候補地を除外するのではなく、自店の強みをどのように打ち出せるかという観点で判断する必要があります。また、競合の存在が逆に商圏を広げるケースもあり、周辺に集まる人の目的や導線を丁寧に読み取ることが求められます。
視点を変えると、競合が長く営業を続けているエリアは、一定の需要が安定して存在している証拠ともいえます。その場合、競合分析を通じて成功要因や顧客の期待を把握し、自店のコンセプトや導線設計に活かすことができます。競合に対抗するのではなく、補完し合うスタンスで立地を考えることも有効です。
集客の相乗効果を狙うケーススタディ
競合が密集するエリアであっても、集客面での相乗効果が見込める場合があります。いわゆる“業態集積型”と呼ばれる現象では、顧客が「選べる楽しさ」や「比較できる安心感」を求めて、複数の店舗を一度に回遊する傾向が見られます。こうした動きは、ある程度の競合が存在することで生まれるものであり、自店がその流れの中に自然と組み込まれることによって、認知と来店のチャンスを得ることができます。
特に、エリア全体としてジャンルやコンセプトが集約されている場所では、個々の店舗が単体で勝負するのではなく、地域全体としての魅力を高める役割を担うことになります。このとき、自店が独自性を持ちながらもエリアの空気感と調和しているかどうかがポイントになります。
また、競合店舗が打ち出していない角度から価値を提供することで、埋もれることなく存在感を示すことも可能です。例えば、営業時間やサービス形態をずらす、空間づくりに変化を加えるなど、立地の中で“違い”を演出することで自然な差別化が実現できます。
立地選定時に行うべき現地調査の進め方
時間帯別の人の流れを把握する
現地調査を行う際には、時間帯による人の動きに注目することが重要です。朝の通勤時間帯、昼の休憩時間、夕方以降の帰宅時間など、それぞれの時間帯で通行量や通行者の属性が大きく変わるケースがあります。どの時間に、どのような人がどの方向から流れてくるのかを観察することで、店舗が接触できる顧客層の傾向が明確になります。
一度だけの観察では状況を見誤る可能性があるため、平日と休日、天候の異なる日など、複数の条件で確認を行うことが求められます。人の流れは曜日や天候に大きく左右されるため、限定的な視点だけで判断すると正確な分析が困難になります。繰り返し観察することで、より客観的な視点を得ることができます。
また、周辺に学校やオフィスがある場合は、それらの施設の利用者が人の流れに大きく影響を及ぼします。施設の利用時間と連動した人の動きにも着目し、店舗の営業時間やピークタイムを想定する材料にすることが有効です。
通行人の属性と行動傾向を読み取る
人の流れだけでなく、通行している人の性別、年齢層、持ち物、服装、移動手段などを観察することで、より具体的なターゲット像が見えてきます。これらの要素を把握することで、自社の商品やサービスとマッチするかどうかを判断する参考になります。
例えば、ベビーカーを押した保護者が多いエリアでは、子ども連れの来店に配慮したレイアウトやサービスが求められます。一方で、スーツ姿のビジネスパーソンが多いエリアでは、短時間での利用を前提とした商品設計や動線の工夫が必要になります。このように、観察から得られる情報を実際の店舗運営に結びつけていく視点が重要です。
ただし、見た目だけで判断するのではなく、実際にその場に立って感じられる空気感や人の滞在時間、移動のスピードなども含めて総合的に把握するようにしましょう。こうした「現場でしか得られない情報」が、データだけでは見落としがちな微細なニーズの発見につながります。
競合・空き物件・交通状況の記録方法
現地調査では、競合店舗の存在や営業形態も確認しておく必要があります。外観や看板、導線、客入りの状況から、多くのヒントが得られます。どのような客層に向けて何を打ち出しているかを観察し、同じエリア内でどう差別化を図るかを考える手がかりにしましょう。
あわせて、空き物件の状況やその履歴も確認しておくと、エリア全体の流動性や経済状況の傾向が見えてきます。短期間で入れ替わる店舗が多いエリアでは、長期的な営業の安定性にリスクがある可能性もあります。逆に、継続して営業している店舗が多い地域は、地元に根づいた需要があることを示す材料となります。
交通の流れも重要な観察ポイントです。歩行者だけでなく、自転車や車の通行量、信号の配置、横断歩道の位置などが来店導線に与える影響も無視できません。たとえば、片側通行の道路に面している場合、店舗の視認性や入りやすさに差が生まれる可能性があります。現地での観察記録は、写真や簡単なスケッチを用いると、後からの分析や社内での共有に役立ちます。
見落とされがちな法的・制度的な注意点
用途地域と営業可能業種の確認
立地選定において見落とされやすいのが、営業に関する法的制限です。特に重要なのが「用途地域」の確認です。これは都市計画法に基づいて定められており、エリアごとに可能な建築物や業種が明確に分類されています。たとえば、第一種低層住居専用地域では、大規模な商業施設や飲食店の営業が制限されることがあります。
この用途地域に合致していない業態で出店を計画すると、契約後や準備段階で営業許可が下りないといったトラブルにつながる恐れがあります。たとえ物件の立地が魅力的であっても、事前に地域の制限を把握していなければ、運営開始そのものが困難になるリスクがあるため、早期の段階で確認を行うことが不可欠です。
用途地域の確認は、自治体の都市計画課や地域の窓口で提供されている資料から取得可能です。最近では、インターネット上で用途地域を閲覧できるサービスも提供されています。事業計画と照らし合わせて、営業可能かどうかを慎重にチェックする必要があります。
地価・賃料と長期的な採算性への影響
法的な制限と同時に注視すべきなのが、地価や賃料に関する条件です。契約時の家賃だけに目を向けるのではなく、将来的な地価の動向や周辺開発の影響まで含めて判断しなければ、予期しないコスト増に直面する可能性があります。とくに、人気エリアでは地価が継続的に上昇していることがあり、契約更新時の賃料改定や固定資産税の増加などが収益に影響を与えることがあります。
また、店舗運営を長期視点でとらえる場合には、初期投資に対する回収期間や家賃比率などの数値バランスも検討材料になります。収支計画上で家賃が過度に負担となっていると、一定の売上があっても収益が伸び悩む要因になりかねません。開業直後の条件だけでなく、数年先の経営状況もシミュレーションしながら、立地のコストとリターンを慎重に見極める姿勢が求められます。
また、物件によっては契約形態や更新条件に違いがあるため、契約書の内容や特約事項についても事前に確認が必要です。信頼できる不動産会社を介することで、法的リスクの回避や不明点の明確化につながります。専門家のサポートを受けながら、制度面の把握とリスク管理を並行して行うことが、安定した店舗経営の第一歩となります。
まとめ
立地の選定には明確な正解があるわけではなく、業種や提供価値に応じた判断と、それを支える現地調査や制度理解が不可欠です。だからこそ、目先の条件だけにとらわれず、長期的視点と独自の戦略を持った出店計画が求められます。
監修者
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IDEAL編集部
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