2025.06.15 2025.05.29|お知らせ
店舗床材の選び方|用途別に最適な素材と特徴を徹底解説!

目次
商業空間における床材選びは、見た目の印象だけでなく、来訪者の快適さやスタッフの作業効率にも大きく影響します。さらに、エリアの用途や通行量、清掃頻度などに応じて適切な素材を選定しなければ、早期の劣化やトラブルにつながるおそれもあります。この記事では、実際の利用シーンを想定しながら、用途別に最適な店舗床材の選び方と、それぞれの特徴をわかりやすく解説していきます。
店舗床材が与える印象と役割

店舗に足を踏み入れた瞬間、来訪者の目に入る要素のひとつが床材です。壁面や什器と異なり、床は視界の中で常に接し続ける面積の大きな部分であり、無意識に印象へ影響を与えます。床材の色調や素材感によって空間全体の雰囲気は大きく変化し、清潔感・高級感・温かみといった印象操作に直結するため、内装設計における重要な要素といえます。
来店者の第一印象に影響するだけでなく、床材はブランドイメージを伝える手段の一つとしても機能します。たとえば、落ち着いた色味とマットな質感を持つ床材は、洗練された印象を与えやすく、逆に光沢のある素材は視覚的なインパクトを演出できます。さらに、素材の質感や触感を通じて、企業や店舗が重視する世界観や価値観を空間全体に反映させることが可能です。
また、床材は見た目だけでなく、居心地や動線にも密接に関わります。柔らかい素材は足腰への負担を軽減し、長時間の滞在を促進する環境づくりに有効です。一方で、硬めの素材は歩行音が響きやすくなる反面、緊張感やテンポ感を演出する空間に適しています。用途や導線に応じて適切な素材を配置することで、利用者の動きや心理に自然な誘導を行うことができるのです。
さらに、床材の選定は清掃性や維持管理の手間にも直結します。たとえば、細かい繊維が表面に出ている素材は汚れが目立ちにくい一方で、定期的な洗浄が必要になる傾向があります。反対に、表面が滑らかで硬質な素材は清掃が容易であり、汚れや水分をはじく性質を持つため、衛生面に配慮した設計が可能です。このように、機能性と美観の両面から床材の選定は空間全体の質を左右します。
内装にかかわるパーツの中で、床は最も接触が多く、消耗が激しい部分でもあります。だからこそ、デザイン性だけでなく、使用頻度や動線、利用者の快適さなどを総合的に判断したうえで、適切な床材を選ぶ必要があります。見た目の印象にとどまらず、動きやすさ・使いやすさ・清掃のしやすさなど、日常の運用に直結する項目を含めて考えることが求められます。視覚的なデザインにとらわれすぎず、機能性を担保したうえで空間の印象を最適化していく姿勢が重要です。
選定時に考慮すべき基本的な3つの視点
使用エリアの特性と床材の相性
床材を選ぶ際には、まずその場所がどのように使われるかを具体的に想定することが重要です。人が集まりやすいエントランスや通路は、汚れやすさや摩耗の激しさを考慮して、耐久性や清掃性に優れた素材を選ぶ必要があります。反対に、静けさや快適さを重視するエリアでは、踏み心地や音の吸収性といった要素が重要になります。このように、単に見た目の印象ではなく、場所の性質に合わせた機能的な視点が求められます。
さらに、空間ごとの利用目的に沿った選定ができていない場合、日常業務における不便さやメンテナンスコストの増加につながる可能性があります。そのため、単一の素材を全体に敷き詰めるのではなく、用途に応じて素材を使い分けるという発想も有効です。空間の役割を丁寧に切り分けながら床材を決定することで、快適性と機能性の両立が図れます。
人の動きと耐久性・安全性の関係
人の動線が集中するエリアでは、床材が常に摩耗にさらされる環境となるため、耐久性は避けて通れない条件となります。たとえば、複数の動線が交差する場所や商品が頻繁に搬入出されるスペースでは、表面の剥がれやすさ、ひび割れの起こりやすさなどを見極めたうえで素材を選定しなければなりません。摩耗に強い素材であるかどうかは、長期的に見た場合の保守費用にも影響を及ぼすため、事前の確認が不可欠です。
また、店舗では来訪者の年齢層や行動の特性も床材選びに影響します。滑りやすい素材は転倒事故のリスクを高めてしまうおそれがあるため、滑り止め加工の有無や表面の質感も注視すべき要素です。特に雨天時の出入口付近などでは、安全性を確保するための対策が必要になります。歩行感だけでなく、安全面での配慮が床材の評価に直結する場面も少なくありません。
清掃性と維持管理のしやすさ
日々の店舗運営において、清掃やメンテナンスのしやすさは無視できないポイントです。複雑な凹凸がある素材は高いデザイン性を備えている場合が多いものの、埃や汚れが溜まりやすく、掃除に手間がかかる可能性があります。一方で、表面が滑らかで処理の施された素材は清掃が容易で、日常的なメンテナンスにも時間を取られにくいという利点があります。
また、汚れやすい素材である場合、見た目の劣化が早期に現れるため、店舗の印象を損なう原因になりかねません。素材の持つ防汚性や耐薬品性などは、業種や利用頻度に応じて慎重に判断する必要があります。維持管理の観点から素材を選ぶことは、見えないコストを抑える意味でも非常に効果的な手段といえるでしょう。
素材別に見る店舗床材の特徴と適性

ビニル床材:コストとデザイン性のバランス
ビニル系の床材は、デザインの自由度と施工のしやすさが特徴です。木目調・石目調・抽象柄など多様な表現が可能で、空間のテーマに合わせた演出がしやすい素材です。また、クッション性を備えたタイプもあり、歩行時の負担を軽減したい店舗にも適しています。表面に加工が施された製品が多く、汚れが付きにくく、日常の清掃や保守が比較的容易である点も実用的です。
一方で、尖った物や重量物によって表面が傷つきやすい傾向もあるため、荷物の頻繁な移動がある環境では注意が必要です。ビニル素材は下地の状況に影響されやすいため、施工前に床面の状態を丁寧に整えておくことが求められます。
カーペットタイル:音環境と居心地を両立
カーペットタイルは、吸音性に優れている点が最大の特徴です。音の反響を抑えたい接客エリアや静かな環境を求められる空間では、落ち着いた雰囲気をつくるのに効果的です。また、タイル形式であるため、部分的な交換が容易で、汚れや損傷が生じた際のメンテナンス性にも優れています。
肌ざわりの良さや柔らかい踏み心地は、長時間の滞在を想定する場所でも利用しやすく、リラックスした空間づくりに貢献します。ただし、素材の性質上、飲食を伴う場面では汚れが染み込みやすく、こまめなメンテナンスが必要になります。用途を見極めたうえで、適切な使用エリアを選ぶことが重要です。
セラミックタイル:高級感と耐久性の両立
セラミックタイルは、硬度が高く耐久性に優れているため、来店者の多いエリアや土足での利用が前提となる場所でよく採用されます。摩耗や傷に強く、長期間にわたって美観を維持しやすい点も魅力です。加えて、表面の光沢や色味のバリエーションによって、高級感のある空間を演出しやすくなります。
一方で、素材が硬いために転倒時の衝撃が大きく、足元への負担も少なくありません。そのため、安全性を確保したいエリアや高齢者が多く訪れる場所では慎重な運用が求められます。また、床面が濡れた際には滑りやすくなる可能性があるため、防滑処理の有無や滑りにくい仕上げを選ぶことが望まれます。
このように、素材ごとの特徴と適性を把握したうえで、店舗の機能や目的に合致するものを選ぶことが、効果的な床材選定の第一歩となります。
店舗の業種別に最適な床材を考える
飲食店に求められる耐水性・防滑性
飲食店では、床に食材や水分がこぼれることを想定した床材の選定が不可欠です。水や油を含む汚れが日常的に発生しやすいため、耐水性や防汚性が高い素材が求められます。また、清掃頻度が高くなることから、摩耗や変色に強い仕様が望まれます。
さらに、来店者やスタッフが歩行する場面で滑りにくい素材であることも大きな選定基準の一つです。特に厨房と客席の間や出入口付近など、足元が濡れやすい場所では、滑り止め加工や表面の質感が事故防止に直結します。衛生面と安全面の両立が必要となるため、機能性に優れた床材を選ぶことが重要です。
アパレル・物販店舗で重視される印象づくり
アパレルや雑貨を扱う物販店舗では、床材が空間全体の雰囲気づくりに大きく関与します。商品そのものが視覚的な主役となるため、床材はそれを引き立てる役割を担うことになります。光の反射や色の明暗、質感などを調整することで、ブランドイメージを体現した空間演出が可能です。
また、顧客が長く滞在することを想定する場合には、踏み心地や音環境への配慮も必要になります。足音が響きすぎないように吸音性のある素材を選ぶことで、落ち着いた買い物体験を提供しやすくなります。商品搬入の頻度や什器の移動も加味しながら、柔軟性と耐久性を兼ね備えた素材を選定する姿勢が求められます。
サービス業店舗で必要な静音性・柔らかさ
理美容室やリラクゼーションサロンなど、サービス業に該当する店舗では、静かな環境やリラックスできる雰囲気が重視されます。そのため、足音や椅子の移動音などを抑える吸音性の高い床材が適しています。音によるストレスを軽減する工夫が、利用者の満足度向上につながります。
また、長時間の施術や接客を行うスタッフの足元への負担も考慮する必要があります。柔らかい素材は疲労の軽減につながり、業務の快適性を支える要素になります。水まわりを備えた店舗では防水性も必要となるため、複数の機能を併せ持つ床材の導入が有効です。空間の用途とサービスの内容に応じたバランスの良い選定が求められます。
ゾーニングによる床材の使い分け術
エントランス・待合スペースの演出
店舗の第一印象を決定づけるエントランスや待合スペースでは、床材の持つデザイン性が空間全体の印象を左右します。たとえば、落ち着きのある色調や自然素材風の床材を取り入れることで、安心感や温かみを感じさせる空間を演出できます。加えて、表面の質感が柔らかいものを選ぶと、視覚と感触の両面でやわらかさを表現できます。
人の出入りが集中する場所でもあるため、耐摩耗性と清掃のしやすさも求められます。砂や水分を持ち込むことを想定し、滑りにくい加工がされた床材や、汚れが目立ちにくい色柄を選ぶと、日々のメンテナンスがしやすくなります。デザインと実用性の両方を意識した選定が必要です。
接客エリアとバックヤードの分離設計
接客エリアとバックヤードでは、床材に求められる要素が異なります。接客エリアでは来店者の快適性や印象が重視されるため、見た目の美しさや踏み心地のよさが選定基準となります。特に、接客が中心となる空間では、足音が響きにくい素材や、空間全体の雰囲気に調和する色調が好まれます。
一方で、バックヤードは機能性と効率性が重視されます。荷物の移動やスタッフの出入りが頻繁なため、耐久性や清掃性を重視することが基本です。滑りにくく、衝撃にも強い床材を選ぶことで、日々の業務に支障をきたしにくい環境を整えられます。用途の違いを明確に意識した上で、素材選びを進めることが重要です。
導線計画と床材の視覚的区分け
店舗内のスムーズな導線を設計するために、床材の使い分けは視覚的な案内手段としても機能します。色や柄、素材の違いによって、無言のうちに来店者の動きを誘導することが可能です。たとえば、メイン通路には少し濃い色の床材を用い、周囲のスペースとのコントラストを強調することで、自然な流れを作る手法もあります。
視覚的な区分けを明確にすることで、来店者にとって分かりやすい空間となり、目的の場所へ迷わず到達しやすくなります。また、スタッフにとっても動線が明確化されることで業務効率が向上しやすくなります。空間全体の動きを意識した床材選定は、店舗運営における大きなアドバンテージとなります。
失敗しない床材選びのためのチェックリスト
導入前の確認ポイント
床材選びで後悔しないためには、導入前の段階で明確な判断基準を持つことが重要です。まず、店舗の業種と業務内容を整理し、床材に求める機能や特性をリストアップします。滑りにくさ、耐久性、清掃のしやすさ、デザイン性など、優先順位を決めたうえで素材の候補を絞り込むと、選定がスムーズになります。
次に、設置場所の条件を正確に把握することが求められます。屋内外の区別はもちろん、通行量や水濡れの可能性、什器の有無など、環境に影響する要素をすべて考慮する必要があります。これにより、選定した床材が実際の運用に適しているかどうかを事前に確認できます。
実物サンプルと現場環境の照合
カタログやウェブ上の情報だけでは、床材の質感や滑り具合、色味の印象を正確に把握するのは難しい場合があります。そのため、候補となる床材はできる限り実物サンプルを取り寄せ、設置予定場所の照明や周辺環境と照合することが推奨されます。
実際に足を乗せたときの感触や、什器との組み合わせによるバランスを確認することは、長期的な満足度にも関わります。目視や触感で違和感がある場合は、将来的なトラブルにつながる可能性もあるため、慎重な判断が求められます。
導入後の運用・メンテナンス想定
床材は設置して終わりではなく、日常の運用と維持管理まで含めて評価する必要があります。定期的な清掃の手間や費用、交換が必要になった際の対応のしやすさも重要な検討材料です。
素材によっては専用の清掃道具や洗剤が必要になる場合もあり、導入前に運用コストまで想定しておくことで、無理のない管理体制を整えることが可能になります。また、経年による変色や劣化の程度を事前に確認しておくことで、リニューアル時期の目安や資金計画にも反映させやすくなります。
印象と機能を両立させる床材選定を
店舗づくりにおいて床材の選定は、見た目の美しさだけではなく、使いやすさや安全性といった実務面にも大きな影響を与えます。空間の印象を演出する要素としての視覚的役割に加え、清掃や維持管理のしやすさ、スタッフや来訪者の動線への影響も無視できません。
また、業種や利用シーンによって必要とされる性能が異なるため、床材に求められる要件も自然と多岐にわたります。耐久性や防滑性、吸音性などの要素を整理したうえで、ゾーニングや導線計画に合わせて素材を適切に組み合わせることが、理想的な空間設計につながります。
空間の魅力を高めながら、運用の負担を抑えるためには、床材そのものの質だけでなく、導入プロセス全体を俯瞰して考える視点が必要です。限られた予算や施工条件の中でも、印象と機能の両立を目指した選定が、結果として長期的な価値を生むことにつながります。
監修者
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IDEAL編集部
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