2022.05.29  2022.05.25|新規開業ノウハウ

防火管理者資格の種類と取り方!配置基準や講習の難易度・受講方法も

防火管理者資格の種類と取り方!配置基準や講習の難易度・受講方法も

「入居する店舗物件に防火管理者は必要なの?」「どのように資格を取得したらいいの?」とお困りではありませんか?初めて開業する場合でも、防火管理者制度を理解して法令を遵守しなくてはなりません。

そこで今回は防火管理者と資格の種類・取り方を解説します。配置基準や講習の難易度・受講方法もご紹介しますので、店舗の経営者や担当者の方はぜひご覧ください。講習会の日時は限られていますので、早めに準備を始めましょう。

防火管理者とは?

防火管理者とは?

防火管理者とは、建物火災の予防と対応に必要な業務を統括する役職です。具体的には消防計画の作成や避難訓練の実施、消防機器の管理やメンテナンスなどを行います。

一定規模の防火対象物に対して、資格を所持する人を防火管理者として選任しなければならないと消防法に定められています。具体的な選任条件は、以下の2点です。

  • 入居する会社や団体において管理的・監督的立場にあること
  • 防火管理に必要な知識や技能があること

参考:e-GOV法令検索「消防法」第8条

防火管理者講習を受講することで、防火管理者の資格を取得できます。講習内容について、後ほど解説します。

参考:日本防火・防災協会「防火管理講習」

防火管理者の配置と種類

防火管理者の配置と種類

配置する防火管理者の種類は、防火対象物の用途や面積、収容人数などによって異なります。早めに資格取得の準備を始めるために、開業する店舗に防火管理者を配置する必要があるかどうかを確認しましょう。

配置基準

防火管理者の配置基準は消防法と関連法令によって定められており、防火建築物の用途と面積、収容人数によって異なります。防火対象物の用途には、次のとおり特定用途と非特定用途があります。

防火対象物の用途特定用途(不特定多数の人が出入りする建築物)非特定用途(特定の人が出入りする建築物)
防火対象物の例集会場飲食店宿泊施設福祉施設オフィスビル集合住宅学校・図書館神社・お寺工場
防火管理者の配置基準非特定用途の建築物よりも厳しい特定用途の建築物よりも厳しくない
参考:岡崎市消防本部「防火管理者フロー」

不特定用途の建築物においては、出入りする特定の人が建築物の構造や消火設備、避難経路を把握していますので、定期的に避難や消火の訓練ができます。したがって特定用途の建築物より厳しくない配置基準が設定されています。

しかし特定用途の建築物においては、出入りする不特定多数の人が消火設備や避難経路などを把握していませんので、被害拡大の恐れがあります。したがってより厳しい基準によって、防火管理者が配置されます。

配置される防火対象物

同じ用途の防火対象物でも、収容人数の基準を超えたら防火管理者を配置する必要があります。店舗経営に関係する防火対象物について、次のように収容人数が定められています。

  • 収容人員50人以上の非特定用途の建築物(集合住宅・学校・図書館・倉庫・事務所など)
  • 収容人員30人以上の特定用途の建築物(カフェや飲食店、スーパーマーケット、クリニックなど)
  • 収容人数10人以上の小規模社会福祉施設(養護老人ホームや障害福祉施設など)

参考:e-GOV法令検索「消防法施行令」別表第1

参考:東京都消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」

店舗物件を取得した段階で管轄する消防署に相談して、防火管理者の配置準備を開始してください。例えばテナントビルに入居したりビル全体を所有したりする場合には、店舗の防火管理者やビルの統括防火管理者を配置する必要があります。

また同じカフェを経営するとしても、収容人数10人の独立した建築物なら防火管理者を配置する必要がありませんが、30人以上なら必要です。防火対象物の延べ面積も関係しますので、次にご紹介します。

種類による違い

防火対象物の種類(「甲種」「乙種」)に対応して、防火管理者資格も甲種と乙種に分けられており、取得するための講習内容が異なります

防火対象物の用途/種類甲種防火対象物乙種防火対象物
非特定用途
(収容人員50人以上の集合住宅・学校・図書館・倉庫・事務所など)
延べ面積500㎡以上の建築物延べ面積500㎡未満の建築物
特定用途
(収容人員30人以上のカフェや飲食店、スーパーマーケット、クリニックなど)
延べ面積300㎡以上の建築物延べ面積300㎡未満の建築物
社会福祉施設
(収容人数10人以上の養護老人ホームや障害福祉施設など)
延べ面積300㎡以上の建築物延べ面積300㎡未満の建築物
参考:e-GOV法令検索「消防法施行令」別表第1

甲種防火管理者は乙種と甲種の防火対象物を管理できますが、乙種防火管理者は乙種防火対象物だけを管理できます。防火対象物を所有者だけが管理するなら、防火管理者1名を選任します。

参考:東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」

店舗への配置条件

防火対象物に特定用途の店舗が入居する場合には、防火対象物の種類と店舗の収容人数に応じて、配置する防火管理者の種類が異なります。東京都の例をご紹介します。

店舗の区分甲種防火対象物内
(収容人数30人以上の店舗)
甲種防火対象物内
(収容人数30人未満の店舗)
乙種防火対象物内
(全ての店舗)
甲種と乙種に該当しない建築物内
(全ての店舗)
防火管理者の資格甲種防火管理者甲種または乙種防火管理者甲種または乙種防火管理者不要
参考:東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」

店舗物件を探すときに防火対象物の区分や店舗の収容人数を把握して、配置する防火管理者の確認が必要です。物件の所有者に確認したり、管轄する消防署に問い合わせたりしてください。

防火管理者資格の取り方

防火管理者資格の取り方

開業する店舗に防火管理者の配置が必要と分かったら、資格の取り方を確認しましょう。2種類ありますが、基本的に防火管理講習を受けることになります。講習の種類や受講方法をご紹介します。

防火管理講習

防火管理講習は基本的に日本防火・防災協会によって主催されていますが、都道府県や市町村によって主催される場合もあります。しかし修了して与えられる資格(修了証)は、全ての講習において共通です。

また防火管理講習の種類には、下記の3つがあります。

防火管理講習の種類講習の目的
甲種防火管理新規講習甲種防火管理者資格の取得
乙種防火管理講習乙種防火管理者資格の取得
甲種防火管理再講習収容人員300人以上」の特定用途の防火対象物で甲種防火管理者として選任される資格の更新
参考:日本防火・防災協会「防火管理講習」

なお講習で交付される修了証には、期限がありません。しかし収容人員300人以上の特定用途の防火対象物で甲種防火管理者として選任されるためには、一定期間ごとに上記の甲種防火管理再講習の受講が必要になります。

学識経験者の講習免除

防火管理を行うために必要な知識・技能があると認められるため、学識経験者は防火管理講習を免除されます。講習免除の条件は、日本防火・防災協会のWebサイトに示されています。

参考:日本防火・防災協会「防火管理講習」

講習免除を認められるかを確認するためには、最寄りにある防火管理講習の主催者や所轄の消防署などに問い合わせてください。

防火管理講習の概要

防火管理講習の概要

防火管理者資格を取得するために講習を受講することになったら、予め受講資格や講習内容、難易度を確認しておきましょう。経営する店舗の防火管理は、顧客と従業員の安全を守るために重要です。

受講資格

防火管理講習の受講資格は、「中学校卒業程度以上で日本語が理解できる」ことです。防火管理を管理・監督する立場が防火管理者の選任要件ですが、講習の受講資格には含まれていません。

参考:日本防火・防災協会「防火管理講習」

講習内容

防火管理講習の内容は、種別により異なります。日本防火・防災協会主催の防火管理者講習の内容は次のとおりです。

講習種別受講料講習時間講習内容
甲種新規講習8,000円約10時間(2日間)防火管理の意義及び制度火気管理施設・設備の維持・管理防火管理にかかる訓練・教育防火管理にかかる消防計画
乙種講習7,000円約5時間上記講習の基礎的知識と技能
甲種再講習7,000円約2時間最新の法改正火災の事例研究
参考:日本防火・防災協会「防火管理講習」

講習会場によって、消火器操作などの実技訓練も行われます。また次の資格がある場合には、甲種新規講習の一部科目(防火管理の意義及び制度)が免除されます。

  • 消防設備点検の有資格者(特種・一種・二種)
  • 自衛消防業務講習の修了者

自治体主催の講習を受講する場合には、種別が異なる場合があります。例として東京消防庁が主催する防火・防災管理者講習の種別をご紹介します。

講習種別受講対象者受講料
防火・防災管理新規講習防災管理講習の未受講者乙種防災管理講習の修了者5,500 円
乙種防火管理者防災管理講習の未受講者1,700円
甲種再講習甲種防火管理再講習の受講義務があり、防災管理者として選任されていない人1,400円
防火・防災管理再講習甲種防火管理再講習の受講義務があり、防災管理者としても選任されている人1,400円
参考:東京消防庁「防火・防災管理者講習」

難易度

講習終了後に効果測定として試験が実施され、合格することで修了証が交付されます。難易度が高いわけではなく、講習内容を理解していれば答えられる問題が出題されます。

なお試験だけではなく、講習中の姿勢や態度が重視されています。例えば遅刻や早退、居眠りや携帯電話の使用などをすると、修了証を交付されない危険性がありますので、ご注意ください。

防火管理者講習の受講方法

防火管理者講習の受講方法

防火管理者講習を受講する心構えができたら、受講方法を確認してください。日本防火・防災協会主催の講習と自治体の消防本部主催の講習に分けて解説しますので、開業に間に合うように早めに申し込みましょう。

防火管理者講習の公式サイトを確認する

各地域の講習が「日本防火・防災協会」によって定期的に開催されています。申込期間が一週間程度と短いので、公式サイトで日程を確認してください。インターネットあるいはFAXでの申し込みが可能です

参考:日本防火・防災協会「防火管理講習

ただし次の地域では自治体により講習が開催されていますので、自治体の公式サイトや消防署に問い合わせてください。

  • 東京都
  • 鳥取県
  • 岐阜県
  • 千葉市
  • 横浜市
  • 大阪市

公式サイトから講習受講を申し込む

日本防火・防災協会の公式サイトから講習の検索ページへアクセスしてください。希望する講習時期や種別、都道府県を検索して、講習を申し込みます。氏名や住所等の基本的な情報を入力して、決済方法(クレジットカードやコンビニ支払い)を選択します。

参考:日本防火・防災協会「防火管理講習

自治体の例として東京都の講習を受講する場合には、消防署で直接申し込みを行います。郵送での申し込みには、事前に消防署へ確認する必要があります。

参考:東京消防庁「防火・防災管理者講習」

講習の持ち物を揃える。

日本防火・防災協会主催の講習の持ち物は、下記のとおりです。

  • 顔写真つき本人確認書類
  • 筆記用具
  • テキスト(A4サイズ)を入れるもの

参考:日本防火・防災協会「よくあるご質問」

なお会場によって持ち物が異なる可能性がありますので、公式サイトでご確認ください。例えば消火器操作などの実技の訓練が行われる場合には、軽装・動きやすい靴で受講しましょう

また東京都主催の講習の持ち物は、下記のとおりです。

  • 受講票
  • 筆記具 ( 鉛筆又はシャープペンシル、消しゴム )
  • 身分証明書(運転免許証等)

参考:東京消防庁「防火・防災管理者講習」

講習を受講して効果測定を受ける

どの防火管理講習を受講しても、最後に効果測定という形で試験が行われます。講習内容に沿った問題が出されて、合格することで修了証が交付されます

参考:日本防火・防災協会「防火管理者の要件」

講習当日に遅刻や早退をしないように、健康や時間に十分注意しましょう。公共交通機関の遅れで遅刻する場合には、遅延証明が必要になります。また講義開始から一定時間を過ぎると、遅延証明があっても受講できない場合があります。

参考:東京消防庁「講習の時間割について」

防火・防災管理者選任(解任)届出書を提出する

防火管理講習修了証を受領したら、防火対象物の防火管理者として選任されるために、所轄の消防署に「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を提出します。

東京都の場合には東京消防庁の公式サイトで申請用紙をダウンロードでき、「消防署保管用」と「事業所控え」の2枚が必要になります。提出の際には、選任される人の講習修了証原本が必要です。コピーは認められませんので、原本を必ず持参しましょう。

参考:東京消防庁「防火・防災管理者選任(解任)届出について」

法令を遵守して早めに防火管理者の資格を取得しよう

法令を遵守して早めに防火管理者の資格を取得しよう

法令を遵守して店舗を開業するために、防火管理者の配置が必要な場合には早めに講習の受講を申し込みましょう。講習の種別を特定できない場合には、開業エリアを管轄する役所か消防署に相談することが必要です。

IDEALはサロンや飲食店を始めとする店舗全般のコンセプト設計から内装のデザイン・工事、資金調達、Web集客までをワンストップソリューションとしてご提供しています。

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