本記事で、店舗を開業する流れと…
2019.06.13 2022.04.21|新規開業ノウハウ
飲食店の開業や経営に必要な資格と手続きを解説!調理師免許は不要?
飲食店を経営するためには、開業に必要な手続きを把握しなくてはなりません。特に必須とされる資格を取得しなければ、営業許可を取得できません。集客を増やして売り上げを伸ばすために役立つ資格もたくさんあります。
そこで今回は、飲食店の開業や経営に必要な資格と手続きを紹介します。飲食店開業に調理師免許が必要かも解説していますので、飲食店の開業をご検討中の方はぜひ参考にしてください。
飲食店の開業に必須となる資格
まず飲食店の開業に必須となる資格は、「食品衛生管理者」と「防火管理者」の2種類です。店舗や従業員を確保しても、必須の資格を所持しなくては営業許可が下りません。各資格の目的や取得方法を把握して、計画的に取得しましょう。
食品衛生責任者の資格
食品を取り扱う店舗には、食品衛生責任者を設置しなければなりません。食品衛生責任者の資格証明書は、保健所へ「飲食店の営業許可」を申請する際の必要書類です。調理師や栄養士などの免許を持っていると、食品衛生責任者の資格が免除されます。
食品衛生責任者の資格を取得するためには、各都道府県が実施している講習会を受講する必要があります。受付窓口や受講条件は各都道府県ごとに異なるので、店舗を開業する都道府県の制度を確認しましょう。
例えば東京都の食品衛生責任者講習は、東京都食品衛生協会が主催しています。会場集合型の講習会には郵送で申し込み、郵便の先着順で定員に達し次第募集が締め切られます。受講料は教材費を含めて10,000円程度です。
毎月数回ずつ講習が実施されていますが、時期によっては数カ月先まで満席という状況も想定されます。飲食店の開業を決定したら、早めの申し込みをすることをおすすめします。オンラインでの受講も可能な場合がありますので、受講しやすい講習会へ申し込みましょう。
参考:一般社団法人東京都食品衛生協会「食品衛生責任者会場集合型養成講習会」
防火管理者の資格
従業員と顧客を含めて「30人以上収容」可能な飲食店を開業する場合には、防火管理者を設置する必要があります。防火管理者とは、火事が起こらないように消防計画作成や防火設備管理などの業務を行う責任者です。
防火管理者になるためには、防火管理者講習を受講することが必要です。「市町村の消防職員で管理的又は監督的な職に1年以上あった」場合などには、受講が免除されることもあります。
講習会は日本防火・防災協会や都道府県、消防本部などにより開催され、資格は全国共通で、修了証は永年有効です。防火管理者には「甲種」「乙種」の2種類があり、店舗の規模や危険物貯蔵などの条件により取得する種類が異なります。
例えば東京都では東京消防庁が窓口になり、防火管理者講習を実施しています。開業する店舗に必要となる資格の種類が分からない場合でも、「防火・防災管理新規講習」を受講することで全ての規模の店舗において防火管理者になることが可能です。
店舗を開業するエリアを管轄する消防署で申込を行い、費用は「防火・防災管理新規講習」5,500円、「乙種防火管理講習」1,700円、「甲種防火管理再講習」1,400円です。
飲食店開業に調理師免許は必須ではない?
「食品衛生管理者」と「防火管理者」とは異なり、調理師免許を持っていなくても飲食店を開業可能です。飲食店の資格というと調理師免許をイメージしますが、飲食店を「開業する」ためには必須ではありません。
しかし調理師免許を取得することで、調理に関する基本的な知識やスキルを持っていることを証明することができます。「顧客からの信頼を得たい」「確かな知識とスキルに基づいて料理を提供したい」場合には、調理師免許の資格を取得したほうがいいでしょう。
飲食店の経営に役立つ資格やスキル
調理師免許と同様に、飲食店の経営に役立つ資格やスキルが他にもあります。業態や業種、提供するメニューに応じて、求められる資格やスキルは異なります。多くの飲食店に役立つ資格とスキルを確認していきましょう。
調理に関する資格やスキル
調理に関する資格やスキルは、調理師免許以外にもたくさんあります。
「管理栄養士」「栄養士」の資格を取得することで、次のメリットを得られます。
- 栄養バランスのよいメニューを提供できる
- 栄養士監修メニューと付加価値をつけて競合飲食店からの差別化を図れる
- 他の従業員と知識やスキルを共有してスキルやモチベーションをアップできる
「野菜ソムリエ」の資格を取得することで、野菜・果物の種類や栄養、保存方法などの知識が身に付きます。
- ヘルシー志向の顧客へ向けて野菜・果物をふんだんに使ったメニューを開発できる
- 野菜・果物ごとの食材管理を工夫してフードロスを減らせる
「和食マイスター」も日本野菜ソムリエ協会が主催する資格。コンセプトやメニューに和の要素がある店舗の開業を目指す際に役立ちます。
- 和食の作法やマナーを理解できる
- 野菜や魚の仕込み方や料理法を取得できる
- 和の汁ものや米・雑穀などの「和食」の知識が幅広く身に付く
「フードコーディネーター」の資格なら、主観的な思いに偏らないように、飲食店経営に関する基礎知識が身につきます。
- 飲食店のプロデュースからメニュー開発の流れを理解できる
- プロデュースする側の客観的な目線を持てる
参考:日本フードコーディネーター協会「フードコーディネーターとは」
お酒の提供に関する資格やスキル
開業する飲食店でお酒を提供する場合には、次に挙げる資格の取得を検討しましょう。
「ソムリエ」はワインだけではなく、ビール・スピリッツ&リキュール・焼酎・ウィスキー・日本酒など、お酒全般の知識が養われるオールラウンダーな資格です。日本ソムリエ協会による認定資格を目指したいのですが、「酒類業界に3年以上従事していること」が受験条件となっており、難易度が高めです。一方で全日本ソムリエ連盟の認定資格は、満20歳以上であれば経験・職歴不問で認定講座を受講できます。
「ジャパンビアソムリエ」は、世界中のビールのサービスとおもてなしができる人材育成を目的としている資格。ビールの提供に力を入れたい飲食店にぴったりです。
参考:ジャパンビアソムリエ協会「ジャパンビアソムリエ認定講座とは」
「びあけん」と呼ばれる日本ビール検定。よりビールを楽しめるように、ビールにまつわる知識が身につく検定です。満20歳であれば誰でも受験可能です。ユニークなのが、100点満点を取ると、びあけん選定のビールが1年分が貰える「満点賞」。お客さんとの会話のきっかけにもなります。
「ビアアドバイザー」は料理やシチュエーションに合わせて酒器などビールのコーディネートやアドバイスができる資格。料理に合うビールを組み合わせて提供する飲食店に役立ちます。
「ビアテイスター」は、テイスティングによってビールの出来の良し悪しを客観的に鑑定して、論理的に説明できる力を身につけられる資格。ビール製造などについてより探求したい人向けです。
参考:クラフトビア・アソシエーション「ビアテイスターセミナー」
「唎酒師」と「日本酒検定」は、日本酒の資格。「唎酒師」(ききさけし、日本酒のソムリエ)は、日本酒だけでなくお酒全般の知識やテイスティング力、酒器などを提案する力が身に付く、プロ向けの資格です。しかし誰でも受験可能で、一般の日本酒愛好家も受験しています。「日本酒検定」は、「唎酒師」に比べてライトな資格です。
「焼酎唎酒師」は、焼酎をメインとしながらお酒全般の知識が学べる資格。焼酎のテイスティングの技術や料理との組み合わせ、季節ごとの楽しみ方の提案力が身につきます。
「カクテル検定」は、誰でもカクテルについて学べる手軽な資格。カクテルといえば「バーテンダー」を思い浮かべますが、バーテンダー資格を取得するためには職歴が必要です。
コーヒー製造に関する資格やスキル
カフェを経営してコーヒーとカフェメニューに力を入れたい場合は、次の資格取得を検討しましょう。
「コーヒーソムリエ」は、コーヒー豆の産地や種類、美味しい生豆の見分け方、焙煎についてなどのコーヒーを楽しむための知識が問われる試験。コーヒーの淹れ方と味の関係、焙煎、ラテアート、コーヒーカップの種類についての知識も身につきます。
「コーヒースペシャリスト」は豆による香りの違いや焙煎方法、ラテアート、コーヒーに合うスイーツ・フードなどのカフェ経営に必要なノウハウを学べます。資格取得講座を受講して取得できますが、試験に落ちても再受験可能です。
「コーヒー&紅茶 カフェマスター」は、日本能力開発推進協会の主催する「カーサバリスタ」と「ティースペシャリスト」の取得を目指す講座です。監修講師がついてコーヒー豆の選び方・焙煎方法・開業ノウハウを学べます。高度な知識・技術の習得が可能です。
税務や財務に関する資格やスキル
店舗の規模に関わらず簿記の資格が役立ちます。店舗の財政状況を把握し、経営成績を知るためにも正確な経理業務は必須です。もちろん便利な会計ソフトを使うことも可能ですが、Itツールを使いこなすうえでも簿記の知識を活かせます。
また税のスペシャリストである税理士の資格は、飲食店経営の大きな力になります。確定申告作業をスムーズに作成できることはもちろん、節税のノウハウを活かして経営状態を改善できます。ただし非常に難易度の高い資格ですので、経営者や従業員が資格を取得する代わりに税理士に業務を依頼することが一般的です。
社会保険や労務管理に関する資格やスキル
労働基準法のスペシャリストである社会保険労務士の資格は、店舗の労務管理や社会保険加入に必要な手続きに役立ち、従業員の雇用トラブルにも対応可能です。社会保険労務士の資格は、税理士と同様に難易度が高い資格なので、専門家に依頼することが一般的です。
ただし「ビジネス・キャリア検定」や「ビジネス実務法務検定試験」などの資格なら、店舗経営と並行して受験可能です。専門家に依頼する場合でも、飲食店経営者として社会保険や労務管理に関する基本的な知識を把握しておきましょう。
飲食店の開業に必要な手続き
資格・スキルと同様に、飲食店の開業に必要な手続きも把握しておきましょう。書類を作成するだけではなく、資格がないと申請できない手続きがあります。開業する飲食店の業態や業種を踏まえて、手続きの準備を始めましょう。
個人事業開業または法人設立
個人事業主として飲食店を開業する場合には、開業から1か月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出する必要があります。
法人として開業するなら管轄する法務局で会社登記の手続きを行い、「法人設立届出書」を提出します。2か月以内に税務署へ、1か月以内に都道府県税事務所と市町村の役所へ書類を提出しましょう。
個人事業主か法人かによって、税務や財務、労務に関する手続きがが大きく異なります。事業の規模や社会的な信頼、節税対策などを事前によく検討してから、開業方法を選択しましょう。
税務書類の提出
所得税の特別控除を受ける場合には、開業から2か月以内に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出しなくてはなりません。個人事業主でも法人でも、帳簿を揃える手間以上のメリットを受けられます。
また従業員を雇用したら1か月以内に「給与支払い事務所などの開設届出書」を税務署へ提出する必要があり、従業員から預かった所得税を期限までに納付しなければなりません。
しかし従業員が10人未満の場合には、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、従業員の所得税を年に2回、まとめて納付できます。
防火管理者選任届
開業する飲食店の規模に応じて、上記「防火管理者」の資格を取得したうえで所管の消防署へ届出を行う必要があります。申請条件に当てはまるか不明な場合には、事前に相談しましょう。
参考:東京消防庁「②防火管理者・消防計画・訓練通知書・自動通報」
防火対象設備使用開始届
開業日ではなく実際に店舗を使用開始する7日前までに、「防火対象物使用開始届」の提出が必要です。また店舗の修繕や間取りの変更等をする場合には、工事を始める7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」の提出も必要になります。
火を使用する設備等の設置届
「火を使用する設備等の設置届」は名称のとおり、火を使って調理を行う建物に対して必要な防火措置が講じてあることを消防署が書類で事前確認する書類です。厨房全体で使用する電力量に応じて届出が必要です。申請条件について、事前に所管の消防署へ相談しましょう。
飲食店営業許可の申請
飲食店を開業するために必ず提出する「飲食店営業許可」。保健所によって、飲食店の設備(シンクや調理場など)が保健所の求める要件に合致しているかを検査されて、合格すると営業許可が下りる仕組みになっています。
そのため依頼する業者と一緒に保健所へ事前相談して、内装や設備をデザインする必要があります。また飲食店営業許可を申請するために上記「食品衛生責任者」の資格が必要ですので、計画的に取得しておきましょう。
飲食店営業許可が下りたら、定期的な更新が必要になります。業種により有効期限が異なり、5~8年となっています。更新手続きせずに営業を続けることは法令違反ですので、期限切れに注意しましょう。
参考:厚生労働省「営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報」
菓子製造業許可の申請
パンやケーキ、お菓子類を製造・販売するときに保健所へ申請する菓子製造業許可。飲食店内で飲食を提供する店舗でも、パンやケーキなどを製造する場合には必要です。
菓子製造許可を取得するために必要な厨房設備には飲食店営業許可よりも厳しい基準が定められているため、設備投資費用が高額になります。開業準備を始める前に、予算と業態・業種をよく検討しましょう。
深夜における酒類提供飲食店営業開始届出
「深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書」は、居酒屋やバーにおいて深夜0時から午前6時までの間に主にお酒を提供する場合に必要です。所管の警察署に開業10日前までに届出ましょう。
ただし深夜0時以降に酒類を提供する場合でも、ファミリーレストランや回転寿司店のように、主に食事を提供する場合には不要です。また下記「風俗営業許可」とは異なり、「接待」を提供することが禁じられています。線引きや取扱いについて不安な場合には、事前に所管の警察署へ相談しましょう。
風俗営業許可の申請
スナックやパブ、キャバクラなどにおいて「接待」を提供する場合には、風俗営業許可を管轄の警察署に申請しなくてはなりません。ただし接待を伴う飲食店を深夜に営業することは禁じられています。
社会保険(健康保険・厚生年金)の加入
個人事業主として開業する場合には、常時5人以上の従業員を雇う場合に社会保険の加入が必要になります。法人として開業する場合は、従業員の有無にかかわらず必須となります。加入対象となる従業員については、会社の規模や定める就業規則によって異なります。
開業から5日以内に、年金事務所で手続きしてください。日数に余裕が無いので、計画的に手続きの準備をしておきましょう。
労働保険(雇用保険・労災保険)の加入
労働保険は、従業員を雇う場合に加入しなければならない保険です。従業員の雇用形態(正社員かパート・アルバイトか)を問わず、開業から10日以内に手続きしましょう。
労災保険に関しては従業員を雇用したら必ず加入しなければならず、労働基準監督署で手続きをします。雇用保険に関しては各従業員の雇用期間や勤務時間の条件によって加入対象となり、公共職業安定所(ハローワーク)で手続きします。
参考:東京労働局「労災保険関係」
なお飲食店開業の流れについて下の記事にまとめてありますので、併せてご覧ください。
開業する飲食店に必要な資格を計画的に取得しよう!
飲食店開業に必須となる資格は少ないですが、手続きはたくさんあります。計画的に準備をして期限までに届出・申請しましょう。また経営に役立つ資格はたくさんありますので、集客や売上を伸ばすために飲食店のコンセプトを踏まえて資格取得を検討しましょう。
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監修者
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