2022.02.17  2022.03.10|新規開業ノウハウ

飲食店開業資金の内訳と計算・調達方法!自己資金0円で開業できる?

飲食店開業資金の内訳と計算・調達方法!自己資金0円で開業できる?

「飲食店の開業準備にいくら必要なのか」「開業資金を節約することはできるのか」とお悩みではありませんか?開業資金の内訳を把握して正しく計算しておかなければ、開業準備に必要な経費を支払うことができません。

そこで今回は飲食店開業資金の計算方法や内訳、調達方法などをご紹介します。「自己資金0円で開業すること」が可能かどうかについても触れていますので、飲食店開業資金についてお悩みの方はぜひ参考にしてください。

飲食店開業の流れ

飲食店開業の流れ

飲食店を開業するために必要な資金を計算するために、まず飲食店開業の流れを把握しましょう。飲食店開業までの流れは、次の6ステップに分けられます。

  1. コンセプトの検討
  2. 物件探し・契約・内装工事
  3. 開業資金の調達・補助金などの申請
  4. 開業に必要な資格・スキルの取得
  5. 開業に必要な届出・許可の申請
  6. 集客手段の決定

必要な開業資金を確保できなければ、各ステップにおいて準備を十分に進めることができません。準備不足のまま開業すると、経営が上手くいかずに短期間で廃業へと追い込まれる可能性が高まります。

そのため各ステップにおいて必要な経費を一つずつ計算して、必要な開業資金を割り出しましょう。例えば飲食店を開業する物件の家賃相場は、業態や規模、エリアによって決まっています。

今回はスケルトン物件(10坪、家賃月15万円)を賃貸してカフェを開業する事例を取り上げながら解説していきます。なお飲食店開業の流れについて下の記事に詳しくまとめてありますので、併せてご覧ください。

飲食店の開業に必要な資金はいくら?

飲食店の開業に必要な資金はいくら?

飲食店開業資金は300ー1,500万円程度が必要で、業態や規模に応じて大きく変動します。新規開業された会社の4割が、500万円未満の資金で開業準備を行っています

 参考:日本政策金融公庫「2021年度新規開業実態調査」

それでは賃貸する店舗物件の家賃を基にして、開業資金を計算してみましょう。まず家賃を月間売上の10%ほどに抑えることが適当です。例えば10坪のカフェを開業するために家賃15万円の物件を賃貸するのであれば、月商150万円(年商1,800万円)が必要です。

次に開業資金として予想年商の50%までを支出することが適当です。予想年商に対して開業資金が多すぎると融資を受けることができなかったり、毎月の返済をできなかったりするからです。カフェの予想年商が1,800万円であれば、開業資金として900万円ほどを支出することが適当です。

開業資金の内訳

開業資金の内訳

開業する飲食店に必要な資金の目安を把握したら、細かな内訳(個々の経費)を計算していきましょう。開業資金に含まれる主な経費は、次の通りです。

開業資金の内訳各経費の目安カフェ開業資金
(スケルトン物件10坪)
賃貸物件取得費
(保証金と礼金、賃料)
開業資金の10%程度90万円
(家賃15万円×6カ月分)
内装工事費
(デザイン料・工賃・内装設備費)
開業資金の20%程度
(坪単価20-50万円)
200万円
(坪単価20万円×10坪)
厨房設備費開業資金の20%程度
(坪単価20-50万円)
200万円
(坪単価20万円×10坪)
原材料費開業資金の10%程度50万円
人件費開業資金の10%程度100万円
広告宣伝費開業資金の5%程度40万円
諸経費開業資金の5%程度40万円
運転資金開業資金の10-20%
(家賃の6-12カ月分)
180万円
(家賃15万円×12カ月分)
合計金額900万円

上の表には、費用例として 10坪の「スケルトン物件」(内装の施工されていない建物の躯体だけの状態)にカフェを開業するために必要な資金を入れてあります。それでは上の表に挙げた各経費について、一つずつ詳しくご紹介していきます。

賃貸物件取得費

飲食店を開業する場合に、自らの土地を所有していることは多くありません。そこで飲食店を開業する「物件」を借りるために、賃貸物件取得費が必要です。

賃貸物件取得費には、次の費用が含まれています。10坪のスケルトン物件を賃貸するための費用を計算してみました。

費用の内訳費用の相場カフェ開業資金
(スケルトン物件10坪)
保証金家賃3‐10ヶ月分45万円(家賃3カ月分)
礼金家賃1-3ヶ月分15万円(家賃1カ月分)
仲介手数料家賃1-3カ月分15万円(家賃1カ月分)
前払い家賃家賃1-3ヶ月分+日割り分15万円(家賃1カ月分)
合計90万円(家賃6カ月分)

保証金は退去時の修繕費用に充てられるもので、入居時に物件の貸主へ預けます。借主の責任と見られる破損などがなければ返金されたり、解約前の家賃に充てられたりします。

礼金は契約時に貸主へ「物件を貸してもらうことに対するお礼」として支払うお金です。また仲介手数料は、不動産会社(借主と貸主の間に入り契約手続き等を行う業者)へ支払うお金です。

以上を踏まえて計算すると、10坪のカフェを開業するための物件を家賃15万円で借りるなら、物件取得費が90~150万円程度が必要ということがわかります。

内装工事費

開業する飲食店の内装(壁や照明など)をデザインして施工するために、内装工事費が必要です。「10坪のスケルトン物件」に対するカフェの内装工事費用の試算をつけて、内装工事費の内訳を表にまとめました。

内装工事費の内訳坪単価カフェ開業資金
(スケルトン物件10坪)
デザイン・管理費20-50万円程度30万円
軽鉄工事費5-30万円程度10万円
ボード工事費5-30万円程度10万円
壁紙工事費10-30万円程度10万円
塗装工事費10-30万円程度10万円
左官工事費10-30万円程度10万円
床仕上げ工事費10-30万円程度10万円
建具工事費10-30万円程度10万円
家具工事費10-30万円程度10万円
他の内装工事費
(電気・ガス・水道・トイレなど)
30-100万円程度80万円
合計200万円

なお内装工事について下の記事に詳しくまとめてありますので、併せてご覧ください。

店舗として貸し出される物件には、2種類(「スケルトン物件」と「居ぬき物件」)あります。スケルトン物件は建物の躯体だけの状態ですから、賃貸後に内装設備を施工する費用が必要です。

一方で居ぬき物件には前借主が施工した内装設備が残っているため、内装工事費用を大幅に節約することができます。ただし内装設備や備品などを譲り受けるために、造作譲渡料を支払う必要があります。

参考として飲食店の種類ごとの内装工事費用(坪単価)について、居ぬき物件とスケルトン物件を比較しながら表にまとめました。もちろん開業する飲食店の業態や規模によって内装工事費は大きく変動しますので、注意が必要です。

飲食店の種類スケルトン物件の内装工事費用居抜き物件の内装工事費用
カフェ坪単価30~50万円坪単価10~30万円
レストラン坪単価50~70万円坪単価20~40万円
和食店坪単価60~100万円坪単価30~50万円
焼肉店坪単価70~150万円坪単価20~70万円

なお居抜き物件については下の記事にまとめてありますので、併せてご覧ください。

厨房設備費

飲食店でメニューを調理するために不可欠な厨房設備費。主な内訳について、下の表にまとめました。

設備費用の相場カフェ(10坪)にかかる費用例
ガスレンジ1台50-100万円程度50万円
シンク1台5-10万円程度20万円
冷蔵庫・冷凍庫1台30-50万円程度30万円
製氷機1台10-20万円程度10万円
調理台1台1-5万円程度20万円
食器棚1台5-10万円程度10万円
食洗器1台30-50万円程度30万円
換気扇1台5-10万円程度10万円
開業する飲食店特有の設備
(例:カフェのエスプレッソマシン)
1台5-100万円程度20万円
合計200万円

飲食店の業態や規模に応じて、必要な設備の台数や値段が異なります。また飲食店の営業許可を受けるためには、食品衛生法に基づいて手洗い場やシンクなどの要件が定められています。

参考:福井県「施設基準(食品衛生法)」

したがって開業資金の予算内に収まるように、必要な厨房設備の数と費用を計算しましょう。

原材料費

原材料費

開業する飲食店で提供する食材を購入するための原材料費。月間売上の30%以内に収めることが必要です。

今回事例として取り上げている10坪のカフェにおいては、月間50万円の原材料費を計上しました。カフェメニューに必要な食品(コーヒー豆やパン、砂糖など)を一つずつメモしながら、費用を計算しておきましょう。

人件費

従業員を雇う場合には人件費(求人広告費や給料、社会保険料など)を計上します。開業する飲食店の規模によって必要な従業員数は異なりますが、月間売上30%以内に収めないと利益率が下がります

今回事例として取り上げている10坪のカフェにおいては、月間100万円の人件費を計上しました。正規雇用と非正規雇用によって支払う給料や社会保険料が変動しますので、採用数をよく検討しましょう。

広告宣伝費

飲食店への集客に必要な広告宣伝費には、Webサイト制作費やグルメサイト登録料などを計上します。月間売上10%程度を支出して、開業前から知名度を高めましょう

今回事例として取り上げている10坪のカフェにおいては、月間40万円の広告宣伝費を計上しました。Web集客をマーケティング会社へ依頼することができますが、従業員に担当させることで費用を節約することも可能です。

諸経費

上記の経費に含まれない支出として、消耗品費や設備修繕費などを計上します。今回事例として取り上げている10坪のカフェにおいては、月間40万円の広告宣伝費を計上しました。

紙ナプキンからレシート用紙、調理設備の修理などの費用が必要ですので、何にいくら必要なのかをリストにまとめておきましょう。

運転資金

飲食店を開業してから毎月の固定費として支出される運転資金(人件費や原材料費、水道光熱費、宣伝広告費、ローン返済など)。開業前に家賃12カ月分ほどを蓄えておくと、毎月の赤字を補填して経営し続けることができます

今回事例として取り上げている10坪のカフェにおいては、180万円(家賃15万円×12カ月分)を運転資金として計上しました。開業当初は見込み売り上げを下回り、赤字が続く可能性が高いからです。

開業資金を調達する方法

開業資金を調達する方法

飲食店の開業準備に必要となる経費を全て計算したら、開業資金の調達方法を検討しましょう。今回5点に整理した方法からいくつかを選んで、自己資金だけでは足りない分を調達することになります。

親族や知人からの借入

親族や知人から資金を借入する場合には、融通が利きやすく審査も不要です。しかし開業を考えているときに、タイミングよく借入を認めてくれる親族や知人が必ずいるとは限りません。

また飲食店経営が上手くいかずに返済が滞ってしまうと、信頼関係が悪化してトラブルに発展するリスクがあります。トラブルを回避するためには、利子や返済期限を記した借用書を作成しましょう。

民間金融機関の融資制度

民間金融機関の中には、「開業する事業者向けの保証付き融資制度」を設けている地方銀行や信用金庫があります。信用保証協会に信用保証料を支払うことで、長期的に低利息で融資を受けやすくなっています。

ただし申し込みから融資までに1ヶ月以上の審査期間が必要で、開業準備を進める中で取得する営業許可証の提示が求められることが多いです。したがって開業後に融資が開始されることになり、開業準備時の支払いに充てることを期待できないので注意しましょう。

日本政策金融公庫や地方自治体の制度融資

飲食店開業資金の調達方法として、政府系金融機関である日本政策金融公庫の融資制度も良く活用されています。融資制度の条件を満たして創業計画書が審査に通ると、無担保・無保証で融資を受けたり、税理士の支援を受けたりすることができます。

参考: 日本政策金融公庫「創業の手引+」

また自治体の制度融資は、自治体と金融機関や信用保証協会が連携して融資することで、融資条件が緩和されたり、利子が軽くなったりします。ただし自治体ごとに申請条件や審査期間が異なるので、事前の確認が必要です。

クラウドファンディングの募集

クラウドファンディングは、インターネット上で飲食店の事業計画を発表することで、賛同する人たちから開業資金を集める仕組みです。資金を返済するのではなく、飲食店の商品やサービスにより賛同者に還元することができます。

しかしクラウドファンディングを募る事業者数が増えており、事業に対する強い賛同を得ることが難しいため、確実に資金調達できるわけではありません。共感を得られるストーリーや魅力的な商品・サービスが必要となります。

国や地方自治体の補助金・助成金

国や地方自治体の補助金や助成金は、基本的には返済義務がありません。補助金は申請条件を満たしてから審査に合格する必要もありますが、助成金は申請条件を満たすことで受給できます。

飲食店の開業や経営に活用できる補助金や助成金について、下の記事に詳しくまとめてあります。併せてご覧ください。

飲食店開業資金を調達するときに注意すること

飲食店開業資金を調達するときに注意すること

飲食店を開業するまでには多くの準備を必要としますので、開業資金について細かく計算することを疎かにすることがあります。しかし必要な開業資金を確保できなくては、開業してから飲食店経営で利益を上げることはできません。

そこで飲食店開業資金を計算したり調達したりするときに注意することを4点に整理して、ご紹介します。

運転資金が足りないと経営が苦しくなる

開業前の初期投資(内装工事費や物件取得費など)に資金をほとんど使い切ってしまう場合には、注意が必要です。なぜなら運転資金が蓄えられていないことにより、開業後の経営が苦しくなる可能性が高いからです。

開業から数か月間は集客や売上が不安定で、赤字になることが珍しくありません。しかし赤字が続いたとしても、毎月の固定費(家賃や原材料費、水道光熱費など)を支払う必要があります。

早く利益を上げるために自己資金を蓄える前に飲食店を開業しても、短期間で廃業すれば元も子もありません。長い目で見れば、必要な運転資金を蓄えたうえで開業するほうが事業を長く継続させることができるでしょう。

自己資金0円で開業することは難しい

「自己資金0円で飲食店を開業できる」という事例を見かけることがあります。しかし出資者やクラウドファンディングによって開業資金を確保できている場合に限られたケースです。

したがって開業資金を確保できていない場合には、自己資金0円で飲食店を開業することは難しいです。融資や補助金の多くが「自己資金を蓄えていること」を申請条件としており、金融機関や公的機関は申請した事業者の将来性や計画性を審査しています。

日本政策金融公庫の調査によると、飲食店経営者の9割が自己資金と融資により開業資金を調達しています。開業準備を始める前に自己資金を蓄えつつ、資金調達方法もよく検討しましょう。

参考:日本政策金融公庫「2020年度新規開業実態調査」 

内装工事費と厨房設備費を抑える

店舗デザインに必要な経費を節約することで、開業資金を抑えることができます。なぜなら上で開業資金の内訳をご紹介した通り、物件取得費と内装工事費・厨房設備費が50%以上を占めているからです。

店舗デザイン費を節約する方法として、居抜き物件を賃貸して前借主から造作を譲渡してもらう方法が挙げられます。また設備費を抑える方法として、リース契約や中古品購入も検討しましょう。

例えば今回事例として取り上げた「10坪のスケルトン物件」にカフェを開業するための「内装工事費・厨房設備費を400万円」と試算しましたが、「10坪の居抜き物件」を賃貸することで店舗デザイン費(内装工事費・造作譲渡料)を200万円以下に抑えることが可能です。

開業資金の内訳を正しく計算する

特に融資や助成金・補助金により開業資金を調達する場合は、内訳をできるだけ正確に見積りしましょう。事業計画をまとめて、審査を受ける必要があるからです。

また開業資金の見積もりが正しくないと、開業準備中に追加で資金が必要になることがあります。資金が足りないことで準備が止まってしまうと、開業日を遅らせなくてはなりません。

さらに計算が不十分なために自己資金からの支出が増えてくると、経営者の生活費が足りなくなってしまいます。開業後しばらくは利益が上がらないことを想定して、運転資金6カ月分だけではなく生活費6ヶ月分も蓄えておきましょう。

開業資金を細かく計算して計画的に調達しよう!

開業資金を細かく計算して計画的に調達しよう!

飲食店を経営して利益を上げるためには、開業準備に必要な資金の内訳を細かく計算して計画的に調達することが必要です。自己資金を蓄えることはもちろんのこと、融資や助成金などの制度を検討しましょう。

IDEALは開業資金調達を始め、店舗デザインや内装工事、集客などについて、ワンストップソリューションにより飲食店経営者の皆様をご支援しております。

開業準備にかかるコストを大きく削減することができますので、ぜひお問い合わせください。

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監修者

IDEAL編集部

日本全国の美容室・カフェ・スポーツジム等の実績多数!
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