2025.10.27  2025.10.18|お知らせ

造作譲渡と居抜き物件の違いとは?店舗物件選びで失敗しないためのポイント

造作譲渡と居抜き物件の違いとは?店舗物件選びで失敗しないためのポイント

造作譲渡と居抜き物件。この2つは似た言葉として扱われがちですが、契約の構造やリスク、費用の考え方には明確な違いがあります。この記事では、誤解されやすい両者の違いを整理しながら、物件選びや交渉の場面で押さえるべき実践的なポイントを解説します。判断ミスを防ぎ、後悔のない選択をするための視点が得られます。

造作譲渡と居抜き物件、それぞれの意味と基本構造を理解する

造作譲渡と居抜き物件、それぞれの意味と基本構造を理解する

造作譲渡とは何か?

造作譲渡とは、前の借主が設置した内装や厨房設備、什器などを、次の借主が有償で引き継ぐ仕組みを指します。店舗を運営するために設置された造作物には、営業に必要な環境がある程度整っているケースが多く、次の借主にとっては初期投資や準備期間を抑えられるメリットがあります。

譲渡の対象となるのは、基本的に建物の構造に影響しない設備や造作です。例えば、カウンターや棚、換気扇、厨房機器などが該当します。ただし、すべてが自由に譲渡できるわけではなく、貸主の承諾が必要になる場合もあります。また、造作譲渡の交渉は、前の借主と新たな借主の間で行われ、譲渡額や引き渡し条件などを取り決めるのが一般的です。

このように、造作譲渡はあくまで「物のやりとり」であり、賃貸借契約とは別個の売買に近い性質を持つことが特徴です。

居抜き物件とは何か?

一方、居抜き物件は、前の借主が使っていた内装や設備をそのまま残した状態で、次の借主が新たに賃貸契約を結ぶ物件のことを指します。多くの場合、店舗運営に必要な基本的な設備がそろっており、内装工事を行わずに営業を始められる点が利点とされます。

ただし、居抜き物件という言葉には明確な法律的定義はなく、実際の現場では「造作譲渡がある居抜き」もあれば、「造作を無償で引き継ぐ居抜き」など、内容に幅があります。重要なのは、設備がそのまま残っていることではなく、それらがどのような契約で引き継がれるか、責任の所在がどこにあるかという点です。

また、貸主が内装や設備の譲渡に関与している場合と、あくまで前の借主と次の借主の間で処理される場合とで、契約の構造や交渉の進め方が異なることもあります。表面的には似て見えるこの2つの仕組みですが、法的な意味合いや手続きの複雑さには違いがあるため、慎重な確認が求められます。

契約面での違いとそれぞれの注意点

造作譲渡は「売買契約」的要素を含む

造作譲渡は、店舗に残された内装や設備を、前の借主から次の借主へ金銭を対価に譲渡するという点で、売買契約に近い性質を持ちます。この場合、譲渡されるのは物件そのものではなく、造作や什器などの資産であり、権利関係も賃貸契約とは別に発生します。

譲渡が行われる際には、契約書の作成が重要です。何を引き渡すのか、設備の状態はどうか、瑕疵があった場合の責任はどちらが負うのかなどを明記しておくことで、トラブルを避けやすくなります。見た目には整っているように見える設備でも、実際には不具合や劣化があることも少なくありません。そのため、実際の状態と譲渡条件を契約にきちんと反映させる必要があります。

また、造作譲渡にあたっては、貸主の同意が必要になるケースが多く、第三者の承認手続きを踏まえて進めることになります。

居抜き契約は「賃貸借契約」の一部として進行

一方、居抜き物件における契約は、主に賃貸借契約の中で完結する場合が多く、造作譲渡のように資産の明確な売買が発生しないこともあります。特に、貸主が前借主の造作をそのまま残すことを認め、新しい借主に現状のままで貸し出すケースでは、引き継ぎに関する交渉は限定的です。

ただし、「居抜き」という言葉だけでは、契約の内容は判断できません。造作の権利がどうなっているか、設備の所有者は誰か、修繕や不具合が発生した場合の責任は誰が負うのかといった点は、事前に確認しておく必要があります。

賃貸借契約書に造作物の取り扱いについての記載がない場合、後々のトラブルにつながりやすくなります。見落とされがちですが、実際にはこの部分にこそ慎重な確認が求められます。

曖昧な言葉の使い分けに注意すべき背景

現場では「居抜き」「造作譲渡」という言葉が混同されて使われることが少なくありません。しかし、契約の形式や責任の所在は大きく異なります。特に、前の借主が設備を所有しているのか、それとも貸主が設備を保有したまま新借主に賃貸しているのかによって、契約書に盛り込むべき条項が変わります。

また、譲渡があるかどうかによって、取得時のコストの考え方も異なります。したがって、物件選定や契約交渉の場面では、用語ではなく「どのような契約構造か」に注目する姿勢が求められます。

初期費用とコスト感の違いを把握する

初期費用とコスト感の違いを把握する

造作譲渡金の考え方と交渉の幅

造作譲渡が関わる物件では、「造作譲渡金」という費用が発生します。これは、前の借主が店舗に残した内装や設備の使用権を、次の借主が買い取る対価として支払う金額です。この金額は、設備の状態や市場の評価、交渉状況によって変動するため、一律の相場があるわけではありません。

造作譲渡金は原則として自由価格ですが、査定や業者のアドバイスを通じて参考値が提示されることもあります。重要なのは、単に安く抑えることよりも、費用に見合う価値があるかを見極める視点です。たとえば、設備のメンテナンス履歴や動作確認の有無、残存耐用年数なども、価格の妥当性を判断する上で有効な材料になります。

また、譲渡金は前借主との直接交渉によって決定されるため、状況によっては減額や譲渡条件の変更も可能です。契約前に十分な情報収集と比較検討を行い、設備の状態や導入目的に合致しているかを見極めることが求められます。

居抜き物件の初期コストの特性

一方で、居抜き物件は、設備がそのまま使える状態で貸し出される点が特徴です。そのため、内装工事費や設備購入費を大幅に抑えられる可能性があります。しかし、居抜き物件だからといって必ずしも初期費用が少なく済むわけではありません。

たとえば、貸主が設備を所有したまま貸し出している場合、造作譲渡金が発生しない代わりに、賃料に含まれる形でコストが上乗せされていることもあります。あるいは、設備の老朽化が進んでいた場合、開業後すぐに修繕や交換が必要になるリスクも考慮する必要があります。

また、現状の設備が自分の業態や運営スタイルに適しているかどうかも重要な判断材料です。不要な設備を撤去する費用や、間取り変更にかかるコストが発生するケースもあるため、全体のバランスを見ながら総合的に判断する必要があります。

設備が無償で利用できるかのように見えても、その実、契約内容や将来的な負担によってコスト構造は複雑化することがあります。見た目の費用だけにとらわれず、設備の活用度や継続性を見越したコスト評価が重要です。

トラブルが発生しやすいポイントとその回避策

譲渡後の設備不具合と責任の所在

造作譲渡では、譲り受けた設備が想定通りに稼働しないケースがあります。原因として多いのが、使用年数や管理状態による劣化です。引き渡し後にトラブルが発覚しても、契約時に「現状有姿」として明記されていた場合、原則として買い手が修理費などを負担することになります。

そのため、契約前には現地での詳細な設備確認を怠らないことが重要です。単なる目視だけでなく、可能であれば簡易的な動作チェックや専門業者のアドバイスを受けるなどして、譲渡対象の状態を正確に把握しておく必要があります。

契約書には、故障が判明した際の対応や補償の範囲を明文化することで、後々のトラブル回避につながります。口頭の確認だけで進めず、書面での証跡を残すことが基本です。

設備・内装の状態と想定業態のギャップ

見た目は整っていても、自身の業態に合わない設備が残っているケースもあります。たとえば、飲食店から美容室への転用など、業種が異なる場合、換気・排水・照明などのインフラが機能的に合わないことがあります。

このようなギャップは、開業後の追加工事や改修費用に直結するため、事前にどこまで再利用可能かを具体的に確認することが欠かせません。さらに、自治体の用途制限や保健所の基準などにも影響することがあるため、法令面の調査も同時に進めておくことが望ましいです。

物件の魅力だけに目を奪われず、自分の事業に最適化できるかという視点で冷静に判断する必要があります。

貸主・不動産会社との認識ズレへの対処

造作譲渡が発生する物件では、前借主と次の借主が直接やりとりを行うケースが多い一方で、貸主の意向が十分に共有されていないことがあります。たとえば、貸主が造作譲渡を認めていなかったり、譲渡に制限をかけている場合などです。

また、不動産会社が仲介に入る場合でも、契約内容や責任の範囲を十分に理解せずに進行してしまうと、最終的な契約段階でトラブルになる可能性があります。造作譲渡はあくまで第三者間の取引であるため、貸主が必ずしも関与しているとは限らない点にも注意が必要です。

こうしたズレを防ぐためには、初期の段階から貸主との意思疎通を図り、譲渡の条件や許可の有無を明確にしておくことが求められます。不動産会社に任せきりにせず、自らも内容を把握しておく姿勢が大切です。

出店までのスケジュール感と段取りの違い

造作譲渡物件の場合の進行プロセス

造作譲渡物件を活用する際には、まず前借主との交渉を通じて、設備や内装の引き継ぎ条件を確認し、譲渡契約を結ぶ段取りが必要です。このプロセスは、物件選定と並行して進むことが多いため、タイミングを誤ると交渉の主導権を失いやすくなります。

加えて、造作譲渡の契約は賃貸借契約とは別に扱われることが一般的なため、交渉・契約書の作成・設備確認といった段階を一つひとつ丁寧に踏まなければなりません。これにより、最終的な賃貸契約に至るまでの期間がやや長くなる傾向があります。

特に、貸主の承諾が必要なケースでは、意思決定までに時間を要する場合もあるため、事前にスケジュールの余裕を見ておくことが肝要です。オープンまでに内装や設備の調整が必要な場合は、工期との兼ね合いも考慮して工程を計画する必要があります。

居抜き物件を利用する際の流れ

一方、居抜き物件では、あらかじめ設備や内装が残っている状態で貸し出されるため、出店準備の工程は比較的スムーズに進むことが多くなります。場合によっては、現状のままで開業できるため、内装工事や設備工事を省略でき、全体のスケジュールを圧縮しやすいのが特徴です。

ただし、契約書上で設備の所有権や管理責任が曖昧な場合、その確認作業に時間がかかることもあります。また、設備をそのまま使うか、一部修正するかといった判断を行うためには、業態との適合性をしっかりと見極めることが必要です。

また、居抜きであっても法令遵守の観点から、行政手続きや保健所の確認などは不可欠です。特に用途変更が発生する場合や、業種の違いによって要件が変わる場面では、早い段階で専門家に相談し、必要な準備を把握しておくことが求められます。

両者で異なる時間感覚を見越した準備が鍵

造作譲渡と居抜きの違いを理解する上で、見逃せないのが「誰と、どのタイミングで、何を決めるか」です。造作譲渡は前借主との合意形成が先行し、その後に貸主との賃貸契約へと進む流れ。一方、居抜き物件は貸主が主導で条件提示を行い、それに借主が乗る形が多く見られます。

この違いが、意思決定のスピードや段取りの複雑さに直結します。限られた準備期間で出店を進める場合は、必要な工程を洗い出し、各ステップの依存関係を明確にしておくことで、スケジュールの乱れを防ぐことが可能です。

店舗運営のスタート時に意識すべきこと

設備・内装の再点検と運用への適合確認

開業に向けて店舗の準備が整ったとしても、実際の営業がスタートすると、設計段階では見えなかった課題が浮かび上がることがあります。とくに造作譲渡や居抜きで引き継いだ設備・内装は、前の業態や運用スタイルに最適化されているため、新たな運営方針に合致するかどうかを再確認する必要があります。

開業直前には、設備の動作確認やメンテナンス履歴のチェックに加えて、オペレーション動線やレイアウトの最終調整を行うことで、営業開始後の不具合や非効率を最小限に抑えることができます。

法令・申請関連の手続きに抜け漏れがないか

居抜きや造作譲渡の物件であっても、保健所や消防署、建築基準法などに関連する各種届出や申請は、新たに行う必要がある場合があります。特に、業態変更や設備変更を行った場合は、条件の再確認と適切な手続きを忘れずに進めることが求められます。

また、設備の引き継ぎ内容が契約上の責任と合致しているかどうかについても、契約後に確認を怠ると、不意のトラブルにつながるリスクがあります。

チーム体制と運営シミュレーションの実施

新店舗の立ち上げでは、従業員の動きやオペレーションの導線が計画通りに機能するかを、開業前に必ずテストしておくことが効果的です。特に居抜きで既存設備を活用する場合、そのままの構成が新しいサービス提供に適しているかは慎重な見極めが必要です。

開業初期の印象が顧客の評価に直結するため、接客・厨房・清掃・バックヤードの流れをチームで共有し、実際の動きを通じて修正点を発見する機会を設けることが望まれます。

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監修者

IDEAL編集部

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