2023.11.24  2023.11.07|店舗運営ノウハウ

店舗の断熱・遮熱対策とは?断熱材・遮熱材の種類や製品事例・工事費用

店舗の断熱・遮熱対策とは?断熱材・遮熱材の種類や製品事例・工事費用

本記事で、店舗の断熱・遮熱対策のメリット・デメリットについて解説します。断熱材・遮熱材の種類や製品事例・工事費用もご紹介します。店舗の開業や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。

店舗の断熱・遮熱対策とは?基本情報を紹介

店舗の断熱・遮熱対策とは?基本情報を紹介

店舗の断熱・遮熱対策とは、どういった内容なのでしょうか?店舗の断熱・遮熱対策を計画する前に、基本情報(目的・メリット・デメリット・断熱と遮熱の違い)を確認しましょう。

目的

まず店舗を断熱・遮熱対策する目的は、店舗内の温度を快適に保つことです。季節に反して店舗内が極端に暑かったり、寒かったりすると、顧客や従業員が不快に感じてしまいます。店舗内の不快感は、集客率や業務効率の低下を招きます。

そこで店舗内を快適な温度に保つためには、夏は外気からの熱が入らないように、冬は店舗内の温度を逃がさないように対策しなければなりません。店舗の内装をデザインする際には、断熱・遮熱対策を考慮しましょう。

メリット

次に店舗を断熱・遮熱対策するメリットとして、光熱水費の削減や結露・カビ・ダニの防止などが挙げられます。外気の影響を受けずに店舗内の温度が一定に保たれることで、必要以上に空調や暖房器具などの温度を上げ下げする必要がなくなります。

また店舗の断熱・遮熱対策により結露を防止できると、ダニやカビの発生も抑制されます。顧客や従業員をアレルゲンから守り、店内を衛生的に保つことができます。店舗内の温度管理だけではなく、衛生状態の快適性が高まります。

店舗の空調設備をデザインするポイントをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

デメリット

一方で店舗を断熱・遮熱対策するデメリットとして、コストの高さ(初期費用やメンテナンス費用)が挙げられます。店舗内に断熱材・遮熱材を施工する量が増えるほど、営業開始前の初期費用が必要だからです。

それから断熱材・遮熱材の耐用年数は種類に応じて10~15年程度であるため、定期的なメンテナンスが必要です。つまり施工後には、定期的にメンテナンス費用がかかります。予算を立てたうえで、断熱材・遮熱材の種類や施工量を検討しましょう。

店舗内装工事の耐用年数についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

断熱材と遮熱材の違い

そして店舗に施工される断熱材と遮熱材の違いは、店舗内の温度を保つ仕組みと施行箇所です。断熱材には、外気からの熱を入りにくくしながら、店舗内の熱も逃がさない仕組みがあり、屋根裏や壁の内側などに施工されます。

一方の遮熱材には、太陽光の熱を反射して、店舗内の温度上昇を防止する仕組みがあり、屋根や外壁、床下などに施工されます。太陽光の熱を遮断しますが、外気の侵入を防止できません。

内装材の種類や特徴をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

店舗に施工できる断熱材・遮熱材の種類と価格

店舗に施工できる断熱材・遮熱材の種類と価格

基本情報だけではなく、店舗に施工できる断熱材・遮熱材の種類と価格も確認しましょう。本記事では4種類(無機繊維・自然・石油素材と塗料)を取り上げて、各種類の価格をご紹介します。

無機繊維素材の断熱材

まず無機繊維素材の断熱材を、店舗に施工できます。無機繊維素材の断熱材の素材名と主な原料、価格(材料費と工賃)について、下表にまとめました。

素材名主な原料価格(材料費と工賃)
グラスウールガラス1㎡あたり500~2,000円程度
ロックウール鉱物
(玄武岩・スラグなど)
1㎡あたり500~2,000円程度

グラスウールとロックウールの断熱材は、建築基準法の定める不燃材料であり、断熱性だけではなく防火性の高さも特徴です。他の素材と比べると安価であるため、店舗以外にも住宅やオフィスなどに施工されています。

参照元:国土交通省「不燃材料を定める件」

また原料がガラスや鉱物であるため、シロアリなどの害虫対策にも適しています。そして吸音性もあるため、防音対策にも適しています。ただし吸湿性はないため、施工時には湿気対策が必要です。

自然素材の断熱材

次に自然素材の断熱材も、店舗に施工できます。自然素材の断熱材の素材名と主な原料、価格(材料費と工賃)について、下表にまとめました。

素材名主な原料価格(材料費と工賃)
ウールブレス羊毛1㎡あたり3,000〜5,000円程度
炭化コルクコルク樫1㎡あたり5,000〜8,000円程度
セルロースファイバー古紙
(新聞紙・
ダンボールなど)
1㎡あたり6,000~9,000円程度
インシュレーションボード廃木材1㎡あたり7,000〜10,000円程度

ウールブレス・炭化コルク・セルロースファイバーの断熱材の特徴は、高い断熱性と調湿性(湿気を吸湿する性質)です。また防虫加工の施された製品もあります。

インシュレーションボードの断熱材は防音性と吸音性にも優れており、廃木材を使用しているため環境に優しいです。ただし吸湿性はないため、湿気対策には向いていません。店舗に施工する際には、耐水や湿気の対策を検討しましょう。

石油素材の断熱材

また石油素材の断熱材も、店舗に施工できます。石油素材の断熱材の素材名と主な原料、価格(材料費と工賃)について、下表にまとめました。

素材名主な原料価格(材料費と工賃)
ポリスチレンフォームポリスチレン1㎡あたり1,000~3,000円
硬質ウレタンフォームウレタン1㎡あたり3,000~5,000円程度
フェノールフォームフェノール樹脂1㎡あたり4,000~6,000円程度

ポリスチレンフォーム・硬質ウレタンフォームの断熱材の特徴は、断熱性と耐水性です。ただし他の断熱材と比べると火に強くありませんので、難燃加工が施されます。

フェノールフォームの断熱材には、熱で硬化する特性があり、耐火性に優れています。熱の伝導率が低く、耐水性もあります。ただし害虫(シロアリなど)の被害を受けやすいため、施工時に害虫対策が必要です。

塗料の遮熱材

そして塗料の遮熱材も、店舗に施工できます。下表に塗料の断熱材の素材名と主な原料、価格(材料費と工賃)についてまとめました。

素材名主な原料価格(材料費と工賃)
アクリルアクリル樹脂1㎡あたり2,000~3,000円程度
ウレタンウレタン樹脂1㎡あたり3,000~4,000円程度
シリコンシリコン樹脂1㎡あたり4,000~5,000円程度
フッ素フッ素と合成樹脂1㎡あたり5,000~6,000円程度

塗料の遮熱材は、太陽光を反射することで、店舗物件に施工された外装材を保護します。屋根や外壁に塗装するだけで施工できるため、メンテナンスが簡単です。耐久性が高いほど(アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素の順で)、価格も高くなります。

シート・フィルムの遮熱材

そしてシート・フィルムの遮熱材も、店舗に施工できます。シート・フィルムの断熱材の素材名と主な原料、価格(材料費と工賃)について、下表にまとめました。

素材名主な原料価格(材料費と工賃)
アルミ
(遮熱シート)
アルミ1㎡あたり1,000〜3,000円程度
塩化ビニル
(遮熱フィルム)
塩化ビニル1㎡あたり8,000〜10,000円程度

アルミの遮熱シートの特徴は、店舗の外観(屋根や外壁)だけではなく、内装(屋根裏など)にも施工できる点です。店舗の内装に施工することで、輻射熱を反射できるため、店舗内の温度上昇を防止できます。

塩化ビニルの遮熱フィルムは、主に窓ガラスに施工することで、窓から侵入する日差しを軽減できます。遮熱以外にも、多機能(ガラス飛散防止や紫外線カットなど)です。

店舗に施工できる断熱材・遮熱材の製品事例

店舗に施工できる断熱材・遮熱材の種類と価格を踏まえて、製品事例を調査しましょう。本記事では、5製品(無機繊維・天然・石油素材の断熱材と塗料・シート・フィルムの遮熱材)を取り上げて、各製品の特徴をご紹介します。

無機繊維素材の断熱材

無機繊維素材の断熱材

アクリアGPACマットは、旭ファイバーグラス株式会社が製造している無機繊維素材の断熱材です。熱伝導率は0.034W(m・K)で、主な施工箇所は壁や天井などです。店舗ビルや体育館、工場などの間仕切り壁の充填や天井敷きなどに利用されています。

なおアクリアGPACマットは、吸音性を高めるために旧製品より細繊維化されて、ポリエチレンフィルムで高性能グラスウールが包み込まれています。

参照元:旭ファイバーグラス「アクリアGPACマット」

天然素材の断熱材

天然素材の断熱材

デコスファイバーは、株式会社デコスが製造している天然素材の断熱材です。熱伝導率は0.040W(m・K)で、主な施工箇所は天井や屋根・壁・床などです。店舗や住宅、工場、病院、保育園などのさまざまな施設に施工されています。

デコスファイバーの原料は80%が新聞紙であり、セルロースファイバーに分類されます。断熱性と吸音性に加えて、調湿性がある点も特徴です。

参照元:株式会社デコス「デコスファイバーとは」

石油素材の断熱材

石油素材の断熱材

アクアフォーム®・アクアフォーム®NEOは、株式会社日本アクアが製造している石油素材の断熱材です。熱伝導率は0.036W(m・K)・0.026W(m・K)で、主な施工箇所は天井や壁、床などです。木造住宅やRC造(鉄筋コンクリート)の建築物・倉庫などに施工されています。

アクアフォーム®は、硬質ウレタンフォームから製造されています。超微細気泡の中に多量の空気を含んでいるため、断熱性の高さが特徴です。

参照元:日本アクア「アクアフォーム®・アクアフォーム®NEO」

塗料の遮熱材

塗料の遮熱材

ミラクールは、株式会社ミラクール様が製造している塗料の遮熱材です。施工箇所は、建築物の外装全般(屋根や外壁など)です。ショッピングセンターなどの店舗や工場、オフィスビル、公共施設、住宅などに使用されています。

ミラクールの特徴は、短期間で塗装できる点や施工箇所や素材を選ばない点です。また外装材の交換よりも、コストを削減できます。

参照元:株式会社 ミラクール「ミラクールとは」

シート・フィルムの遮熱材

シート・フィルムの遮熱材

ガラス用遮熱シートは、株式会社アサヒペン様が製造しているシートの遮熱材です。施工箇所は、透明ガラスや曇りガラス、型板ガラスなどの平面です。ただし網入りガラスや特殊ガラス、自動車の窓ガラスなどには使用できません。

ガラス用遮熱シートの特徴は、簡単に何度でも付け外しができる点です。紫外線の約99%と陽射しの約40%をカットして、店舗内の温度上昇を抑えます。

参照元:アサヒペン「ガラス用遮熱シート」

店舗の断熱・遮熱工事費用

店舗の断熱・遮熱工事費用

店舗の断熱・遮熱対策を行うためには、工事費用が必要です。そこで店舗の断熱・遮熱工事費用の相場・内訳を確認しましょう。また無駄な経費を省けるように、工事費用の節約法もご紹介します。

相場

まず店舗の断熱・遮熱工事費用の相場は、1㎡あたり1万〜3万円程度です。30坪の店舗物件(外装の表面積50㎡)なら、50万〜150万円程度かかります。ただし物件の規模や断熱材・遮熱材の種類、施工範囲などによって、工事費用は変動します。

店舗内装デザイン・工事の流れをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

内訳

次に店舗の断熱・遮熱工事費用の内訳について、下表にまとめました。参考情報として、30坪(外装の表面積50㎡)のオフィス物件にかかる工事費用を試算してあります。

費用の内訳費用の相場費用の試算
30坪の店舗物件
(外装の表面積50㎡)
諸経費
(出張費・交通費など)
合計の10%程度10万〜20万円程度
(50㎡分)
足場代・養生代・
高圧洗浄代など
1㎡あたり5千〜1万5千円程度25万〜75万円程度
(50㎡分)
無機繊維素材の断熱材1㎡あたり500~2,000円程度5千~2万円程度
(10㎡分)
自然素材の断熱材1㎡あたり3,000〜10,000円程度3万〜10万円程度
(10㎡分)
石油素材の断熱材1㎡あたり1,000~6,000円程度1万~6万円程度
(10㎡分)
塗料の遮熱材1㎡あたり2,000~6,000円程度10万〜30万円程度
(50㎡分)
シート・フィルムの
遮熱材
1㎡あたり1,000〜3,000円程度1万〜3万円程度
(10㎡分)
合計100%
1㎡あたり1万〜3万円程度
50万〜150万円程度

上表のとおり、断熱材・遮熱材の施工面積が増えるほど、工事費用がかかります。店舗の業種や業態を踏まえて、断熱・遮熱対策の必要な箇所(屋根や外壁、窓など)を厳選しましょう。

節約法

そして店舗の断熱・遮熱工事費用の節約法として、相見積もりや補助金・助成金があります。複数の業者から見積もりを取ること(相見積もり)で、各業者の提案する工事の内容や期間、費用などを比較・検討できます。

また補助金・助成金を申請することで、基本的に返済義務のない資金を獲得できます。例えば建築物の省エネ改修や窓の断熱改修などの補助金・助成金が募集されています。

参照元:

国土交通省「令和5年度 既存建築物省エネ化推進事業」

先進的窓リノベ事業「対象要件の詳細」

補助金・助成金ごとに申請条件や募集期間が異なるため、最新情報を確認しましょう。店舗開業・経営に活用できる補助金・助成金についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

店舗の遮熱・断熱対策を計画しよう!

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監修者

IDEAL編集部

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