2025.09.04 2025.08.29|お知らせ
店舗内装材の種類とは?壁・床・天井ごとに見る店舗向けおすすめ素材と比較ポイント

目次
空間の印象を大きく左右する店舗内装。素材選びを誤れば、デザインだけでなく機能性やメンテナンス性にも影響します。本記事では、壁・床・天井ごとに店舗向けの内装材を整理し、特徴や選定時の比較ポイントをわかりやすく解説します。
内装材の選び方が店舗運営に与える影響

内装材が印象に及ぼす心理的効果
店舗に入った瞬間、顧客が最初に感じるのは空間の「印象」です。内装材は、この第一印象に大きな影響を与える要素のひとつです。たとえば、壁材の質感や床の色調は、空間全体のトーンを左右し、店舗の世界観を伝える役割を担います。素材の選定が適切であれば、来店者にとって心地よい雰囲気をつくり出し、長居したくなるような空間設計につながります。
一方で、素材の質感が空間にそぐわない場合、意図しない違和感や居心地の悪さを生み出してしまうこともあります。表面の仕上げや照明との相性も含めて、視覚や触覚への影響を意識することが重要です。特に、サービス業や小売業など、顧客の滞在時間や購買行動に直結する業態では、空間が与える心理的効果を軽視できません。
メンテナンス性や耐久性が店舗の運営効率に直結する理由
内装材は見た目だけでなく、日々の運営効率にも大きく関わります。汚れが付きやすい、傷がつきやすいといった特性を持つ素材を選んでしまうと、清掃やメンテナンスの手間が増し、人件費や維持コストに影響を及ぼします。また、劣化が早い素材を選んでしまうと、短期間での張り替えや補修が必要となり、営業に支障をきたす可能性も考えられます。
とくに床材は、来客やスタッフの動線が集中する場所であるため、耐摩耗性や滑りにくさなど、実用面での耐久性も含めて慎重に選ぶ必要があります。清掃性や耐薬品性も含め、日常的な使用に耐えられる仕様であるかどうかは、店舗経営の安定性に直結するポイントです。
施工コスト・工期とのバランスも考慮すべき要素
どれほど理想的な素材であっても、導入コストや工期とのバランスを無視することはできません。素材によっては施工方法が特殊だったり、職人の技術が必要だったりするケースもあり、想定以上の費用や日数が発生する場合があります。
また、短期間での出店やリニューアルを予定している場合は、選んだ素材によってスケジュール全体が圧迫されるリスクも生まれます。そのため、内装材選びにおいては、見た目や機能だけでなく、工事全体の段取りに与える影響まで考慮したうえで判断することが求められます。
素材によっては、施工性に優れたものや比較的工期が短縮しやすい選択肢も存在します。こうした情報を事前に把握し、必要に応じて施工業者と相談しながら進めることで、コストと品質のバランスを取った内装計画が可能になります。
壁材の種類と選び方のポイント
機能性重視:クロス、塗装、パネルなどの特徴
壁材にはさまざまな種類がありますが、まず押さえておきたいのが「機能性」を軸にした選定です。もっとも一般的に使用されるのがビニールクロスで、施工性が高く、比較的安価で扱いやすい素材として知られています。また、汚れがつきにくく掃除もしやすいため、清潔感が求められる空間に適しています。
一方で、塗装仕上げはマットな質感や色味の調整がしやすく、ナチュラルで落ち着いた印象を与えることができます。店舗全体のトーンを柔らかく整えたい場合や、空間に統一感を持たせたいときに活用しやすい選択肢です。
さらに、店舗の雰囲気にアクセントを加えたい場合には、木目調や金属調のパネルを使用する方法もあります。これらは耐久性に優れており、衝撃や摩耗にも比較的強いため、人の出入りが多い場所に適しています。素材ごとの性質を把握し、空間の使用目的に応じて選択することが求められます。
デザイン性重視:色・質感・空間演出の観点
壁材は単なる背景ではなく、店舗全体の印象を決定づける要素でもあります。たとえば、マットな素材感をもつ塗料仕上げは、落ち着きのある雰囲気を演出するのに向いていますし、光沢のあるクロスは洗練された印象や高級感を与える効果があります。
また、素材の表面に凹凸があるものや、自然素材風の質感を持つ壁材は、空間に奥行きや温かみを加えるのに有効です。壁一面だけ異なる仕上げにするなど、アクセントウォールとして活用することで、視覚的に印象的な空間をつくることもできます。
さらに、照明との相性も無視できません。照明の色温度や配置によって、同じ壁材でも見え方が大きく変わるため、設計段階からトータルで検討することが重要です。見た目の好みだけでなく、空間全体との調和を意識することが、デザイン性を高めるポイントとなります。
業種・用途別に適した壁材の選定基準
店舗とひと口に言っても、業種によって求められる内装材の条件は大きく異なります。飲食店では、油や煙が発生しやすいため、汚れにくく拭き取りやすい素材が好まれます。また、食品を扱うスペースでは、抗菌性や防カビ性など衛生面への配慮も必要になります。
アパレルや美容系の店舗であれば、ブランドイメージに合った質感や色合いを重視するケースが多く、デザイン性を優先する傾向にあります。この場合、写真映えや照明との演出効果も視野に入れた素材選定が求められます。
さらに、子ども向けサービスを展開する店舗では、安全性や柔らかさを意識した素材を選ぶこともあります。角がない設計や、万が一の接触でもけがをしにくい素材など、利用者に応じた工夫が必要です。
このように、業種や用途によって最適な壁材は異なるため、単に見た目や価格で決めるのではなく、店舗の機能や目的に応じた素材選定を行うことが大切です。
床材の種類と機能的な選定基準

店舗用途別に見た床材の特徴(フローリング、タイル、長尺シートなど)
床材は、店舗の雰囲気づくりと実用性の両方に影響を与える重要な要素です。とくに人の往来が多く、靴で歩き回る場面が多い店舗空間においては、見た目の印象だけでなく、耐久性やメンテナンス性も重視されます。
木目調のフローリングは、温かみや落ち着きを与えるため、リラックスを誘導したい店舗に適しています。ただし、摩耗や水分への耐性を考慮し、表面仕上げや材質の選定には注意が必要です。
一方で、セラミックタイルは堅牢で清掃がしやすく、シャープな印象を持たせやすいため、スタイリッシュな空間づくりに向いています。ただし、素材の硬さや冷たさが出やすいため、客足の動線や使用目的とのバランスを取ることが求められます。
長尺シートと呼ばれる塩ビ系の床材は、滑りにくさや耐久性、防水性などに優れ、飲食店や医療関連の店舗でも採用されやすい素材です。施工性にも優れており、コストや時間に制限がある場合の候補としても現実的です。
滑りにくさ・防音・掃除のしやすさの観点
床材を選ぶ際に、意外と見落とされやすいのが「滑りにくさ」です。雨の日や飲料がこぼれる可能性のある空間では、床の表面加工が滑りやすさにどの程度影響するかを見極める必要があります。特に入り口周辺や通路部分は、利用者が頻繁に移動するため、安全性を高める工夫が求められます。
また、音の反響や足音への配慮も重要です。特にマンションの一階部分にある店舗や、静かな雰囲気を保ちたい業態では、防音性のある床材や下地材の選定が効果を発揮します。
清掃性の高さも見逃せない観点です。日常的に掃除機やモップを使うことを前提とした床材であれば、メンテナンスにかかる時間や人手を削減することができます。目地の少ないシート材や汚れが浸透しにくいコーティングが施された製品は、そうしたニーズに対応しています。
高頻度で使用されるエリアに求められる耐久性
店舗の床は、家庭よりもはるかに高頻度で使用される場所です。とくに入り口、レジ前、通路などは来客やスタッフの移動が集中するため、床材の耐摩耗性や荷重への耐性を慎重に見極める必要があります。
例えば、椅子の引きずりやカートの走行が日常的に行われるような業態では、傷がつきにくく変形しにくい素材が求められます。表面の仕上げだけでなく、下地や施工方法によっても耐久性に差が出るため、工事前の段階で十分な打ち合わせを行うことが望まれます。
また、紫外線や室内照明による変色、熱源の近くでの収縮や反り返りなど、環境条件による変化にも注意が必要です。これらの条件を想定し、導入後に必要となるメンテナンスや補修のしやすさも含めて検討することで、長期的に安定した店舗運営につながります。
天井材の役割とおすすめ素材
天井材が与える空間演出と高さの印象
天井は空間全体の雰囲気に影響を与える要素のひとつですが、壁や床ほど目立たないため、後回しにされがちです。しかし実際には、天井の仕上げや高さ、素材の選び方によって、空間の開放感や落ち着き具合が大きく変わります。
たとえば、光を反射しやすい明るめの素材を使うことで、空間が広く感じられるようになり、開放的な印象を演出できます。一方で、マットな質感や落ち着いた色味の素材を使用することで、落ち着いた雰囲気を演出したい空間に適した効果が得られます。
また、天井の高さが低く見えるような設計は、来店者との距離感を縮めたり、包まれるような安心感を与える効果も期待できます。こうした視覚的な効果を意識して素材や施工方法を選ぶことで、空間全体のバランスが整い、店舗コンセプトとの一体感が生まれます。
吸音・防火性能を備えた素材選定の重要性
天井材を選ぶ際には、見た目だけでなく、機能性にも目を向けることが重要です。特に、店舗内での音の反響を抑えるためには、吸音性のある素材の選定が有効です。吸音材を活用することで、騒がしさを軽減し、落ち着いた空間をつくることができます。
これは、飲食店や美容室など、会話やBGMが店内の雰囲気づくりに直結する業種にとって特に重要な要素です。反響音が強すぎると話し声が聞き取りにくくなり、来店者の快適性が損なわれる可能性があるため、空間の特性に応じた対応が必要です。
加えて、防火性も見逃せない観点です。店舗では火気や照明機器を使用することが多いため、火に強い素材を使用することで安全性を高めることができます。内装制限に該当する物件や業態では、建築基準に準拠した材料を選ぶ必要があるため、素材ごとの性能を把握したうえで設計を進めることが求められます。
照明・配線との相性も考慮した設計のヒント
天井材を選定する際には、照明計画や配線との兼ね合いもあらかじめ検討しておくことが望まれます。天井にダウンライトやスポットライトを埋め込む場合、素材の厚みや加工性によっては取り付けに制限が生じることがあります。また、照明が熱を持つ場合には、素材の耐熱性や通気性も考慮しなければなりません。
さらに、天井裏に空調ダクトや電気配線が通る場合、点検口の設置やメンテナンスのしやすさも設計段階から考慮しておく必要があります。見た目を優先しすぎてメンテナンス性が損なわれると、営業開始後のトラブルや対応コストが増える可能性があります。
素材そのものだけでなく、照明・設備との調和を含めた設計視点を持つことで、見た目・機能・保守性すべてを両立した天井づくりが実現しやすくなります。空間の質を高めるためには、こうした細部への配慮が効果的です。
各内装材の比較ポイントと選定フロー
素材別に見たコストと施工性の違い
内装材を選定するうえで、もっとも現実的な比較ポイントとなるのがコストと施工性です。同じ面積を施工する場合でも、素材によって必要な作業工程や人員数が異なるため、工事全体のコストに影響します。
たとえば、一般的なビニールクロスは施工が簡便で作業時間も短縮しやすいため、コスト面でも比較的抑えやすい傾向があります。対して、タイルや木材のように下地処理や専門技術が求められる素材は、単価だけでなく施工時間や人件費も考慮に入れる必要があります。
また、施工のしやすさも素材によって異なります。たとえば、重量のあるパネル材や大型の床材は、搬入・仮置きの手間もかかるため、作業環境によっては制限が出ることもあります。素材の選定段階で、現場の状況と施工条件を照らし合わせておくことが、トラブル防止につながります。
意匠性・機能性・施工条件を整理するフレームワーク
内装材を選ぶ際には、見た目の美しさや空間との調和といった「意匠性」だけでなく、日常的な利用に耐えうる「機能性」、そして現場に適した「施工条件」という3つの視点を軸に整理することが有効です。
意匠性においては、空間のコンセプトやブランドイメージと整合性のある色味や質感を選ぶことが基本です。無機質な空間に木目調を加える、明るい配色で開放感を出すといった視覚的効果が、来店者の印象に直結します。
機能性については、用途に応じた耐久性・防水性・清掃性などの基本性能を見極める必要があります。とくに飲食や美容系の業態では、水や薬剤の使用頻度が高いため、表面の耐性を確認しておくことが重要です。
そして施工条件では、搬入経路、施工面の形状、作業時間の制限など、現場特有の制約をクリアできる素材かどうかを判断します。これらの観点を事前に整理しておくことで、複数の選択肢から最適な素材を効率的に絞り込むことが可能になります。
外注時に確認すべき内装業者とのコミュニケーション項目
内装材の選定においては、設計者や施工業者との綿密なコミュニケーションが欠かせません。とくに外注で工事を依頼する場合は、施工条件や素材の扱いに関する確認を事前に済ませておく必要があります。
まず確認すべきは、使用予定の素材がその業者の得意分野に含まれているかどうかです。経験のある業者であれば、素材ごとの注意点やトラブル回避のノウハウを持っており、仕上がりの品質にも大きな差が出ます。
また、現場調査の際には、下地の状況や照明・空調設備との干渉がないかを合わせて確認してもらいましょう。素材によっては厚みや重さにより、既存の設計とのズレが生じる可能性があります。こうした点を早めに共有することで、設計変更や再施工のリスクを軽減できます。
さらに、工期の調整や、サンプル確認の有無、施工後のメンテナンス方法なども打ち合わせの段階で明確にしておくことが重要です。トラブルを未然に防ぐためにも、コミュニケーションの精度を高めていくことが、スムーズな内装計画の鍵を握ります。
内装材選びで失敗しないためのチェックリスト
事前に整理すべき導線・用途・空間イメージ
内装材を選ぶ際には、素材そのものを見る前に、空間の使い方や導線を明確にしておくことが重要です。どのような動線で人が移動するのか、どのスペースにどのような用途があるのかを把握しておくことで、求められる耐久性や機能性が見えてきます。
さらに、空間全体のイメージや店舗のコンセプトも合わせて整理しておくと、素材選定に一貫性が生まれます。たとえば、明るく開放的な雰囲気を目指すのか、それとも落ち着いた高級感を演出したいのかによって、素材の質感や色味の方向性も変わります。
内装材ショールームやサンプル活用のすすめ
図面やカタログだけで素材を決定するのは避けたいところです。実際に素材に触れてみることで、質感や光の反射具合、表面の滑りやすさなど、カタログではわからない情報を確認できます。
可能であれば、メーカーや建材商社が運営するショールームに足を運び、候補となる素材を比較検討するのが理想です。また、サンプルを取り寄せて、実際の設置場所で照明や他の素材と合わせて確認しておくことで、導入後のミスマッチを防ぐことができます。
施工後のメンテナンス・張り替えを見据えた計画
内装材は一度設置すれば終わりではなく、日々の使用や経年によって劣化が進むものです。そのため、選定の段階からメンテナンス性や将来的な張り替えのしやすさを考慮しておくことが大切です。
素材によっては、部分的な補修ができるものや、同じ製品の後継モデルが長期的に流通しているものもあります。そうした選択肢を選ぶことで、将来のトラブル時に対応しやすくなります。
また、定期清掃やメンテナンスが必要な素材については、誰が・どのような頻度で行うかも明確にしておくと、導入後の運用がスムーズになります。
店舗内装材は「使い方」まで見据えて選ぶ
壁・床・天井それぞれに適した素材選定の視点
内装材は単に空間の外観を整えるためのものではなく、店舗としての機能性や運用のしやすさにまで深く関わる要素です。壁・床・天井のそれぞれに求められる性能は異なり、たとえば壁材であれば印象や衛生性、床材であれば耐久性や防滑性、天井材であれば音環境や設備との調和など、それぞれの役割を踏まえた素材選びが不可欠です。
店舗全体の統一感を出すためには、単一の基準で素材を選ぶのではなく、空間ごとの特性に応じて柔軟に対応していく必要があります。視覚的なバランスだけでなく、触感、光の反射、反響音といった要素まで含めて、総合的に検討することが求められます。
素材選びの最終判断は「機能・見た目・運用」の総合判断で
内装材の選定においては、見た目の印象だけでなく、日常的な運用やメンテナンス、将来的な変更への対応力といった観点もあわせて考慮することが重要です。たとえば、ある素材がデザイン的に魅力的であっても、清掃に手間がかかったり、補修対応が難しい場合、長期的にはマイナスに働くことがあります。
そのため、内装材を選ぶ際には「機能性」「意匠性」「運用性」という三つの視点をもとに、自店舗に最も適したバランスを見極めていくことがポイントになります。これらを踏まえて判断することで、見た目の良さだけでなく、日々の業務や顧客体験にも配慮された、実用性の高い空間づくりが実現しやすくなります。
監修者
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IDEAL編集部
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