2025.10.26  2025.10.18|お知らせ

造作譲渡で失敗しないための3つのチェックリストと物件取得までの流れ

造作譲渡で失敗しないための3つのチェックリストと物件取得までの流れ

内装や設備をそのまま引き継げる「造作譲渡」は、費用や工期を抑えながら物件を取得できる有効な手段です。しかし、契約内容や設備の状態を見極めずに進めてしまうと、想定外のリスクを抱える可能性もあります。本記事では、造作譲渡で失敗しないために押さえるべきチェックリストと、物件取得までの実務的な流れをわかりやすく解説します。

造作譲渡とは何か?基本的な仕組みと背景を理解する

造作譲渡とは何か?基本的な仕組みと背景を理解する

居抜き物件との違いを整理する

店舗を取得する際、「居抜き物件」という言葉を目にすることは多いですが、その中でも「造作譲渡」という仕組みは、より具体的で実務的な内容を含んでいます。居抜き物件とは、前の借主が使用していた内装や設備が残されたままの状態で引き渡される物件を指しますが、その設備などを正式に買い取る行為が「造作譲渡」です。

造作譲渡は、ただ単に内装が残っているというだけでなく、契約によって造作物の所有権を譲り受けるという明確な取引行為が伴います。この違いを理解することが、物件取得後のトラブルを避けるための出発点となります。

譲渡対象となる「造作」とは何か

造作譲渡で対象となる「造作」とは、前の借主が店舗運営のために取り付けた設備や内装のことを指します。例えば、壁・床・天井の仕上げ、カウンター、厨房機器、照明器具、空調設備、収納棚などが含まれます。ただし、建物の構造部分や、貸主が設置した設備は通常、譲渡の対象外とされます。

これらの造作物は一見そのまま使えるように思えますが、劣化や故障のリスクがあるため、譲渡時にしっかりと状態を確認し、契約書にも明記しておく必要があります。また、対象範囲については、事前に貸主の承諾を得ておくことが望まれます。

どんなときに造作譲渡が行われるのか

造作譲渡が行われるのは、前借主が閉店するタイミングや、営業形態の変更などで物件を手放す場合が一般的です。まだ使える設備や内装を撤去せず、次の借主に引き継ぐことで、双方にとってのコスト削減と時間短縮が可能になります。

一方で、新しく借りる側にとっても、初期投資を抑えつつ、すぐに営業開始できるというメリットがあります。ただし、その反面、不要な設備まで引き継いでしまうと、かえって改装コストが膨らむケースもあるため、譲渡にあたってはしっかりと目的と条件を見極める必要があります。

造作譲渡は、単なる「物の引き渡し」ではなく、契約行為と実務判断が密接に関わるプロセスです。その意味を正しく理解し、実際の契約に臨むことが、後のトラブルを防ぎ、スムーズな開業や閉業につながると言えるでしょう。

造作譲渡のメリットとリスクを整理する

初期費用の抑制とスピーディーな開業

造作譲渡の最大のメリットは、すでに設置された内装や設備をそのまま活用できるため、開業にかかる初期費用を大幅に抑えられる点にあります。ゼロから内装を設計・施工する場合と比較して、工期の短縮にもつながり、すぐに営業を開始できる点は大きな魅力です。特に時間との勝負になる新規出店や業態転換では、このスピード感が競争力を左右する要素となります。

また、造作がすでに出来上がっていることで、イメージしやすい状態から出発できるのも利点です。必要に応じて部分的な改修で済む場合も多く、設計やデザインの手間を軽減できることも見逃せません。

譲渡物件の状態に左右されるリスク

一方で、造作譲渡にはリスクも伴います。設備や内装がすでに使用されているという性質上、老朽化や故障のリスクを引き継ぐことになります。表面的にはきれいに見えても、内部に不具合が潜んでいるケースは少なくありません。

また、譲渡の際に詳細な引き渡し条件が曖昧なままだと、「これは誰の責任か」といったトラブルに発展する可能性もあります。とくに貸主・前借主・新借主の三者が関わる場合、それぞれの役割と責任範囲をあらかじめ明確にしておかないと、引き渡し後の修繕や原状回復に関する問題が起こりやすくなります。

さらに、譲渡される内容が現状に合わないケースもあり、不要な設備を撤去したり、レイアウトを大きく変えなければならないこともあるため、結果としてコスト増につながることもあります。

トラブルを防ぐために必要な視点とは

造作譲渡のリスクを最小限に抑えるためには、契約前の確認作業が欠かせません。まず、譲渡対象となる設備や内装の範囲を正確に把握することが重要です。そして、それらの状態を現地で実際に確認し、必要に応じて専門業者にチェックを依頼することが望ましいです。

さらに、契約書には譲渡内容、責任の所在、引き渡し条件などを明文化しておく必要があります。感覚的なやり取りだけで進めてしまうと、後々の交渉や修繕時に揉めごとの原因となることがあります。譲渡価格の妥当性や契約の適正性についても、事前に複数の視点から検証しておくと安心です。

このように、メリットだけに注目するのではなく、造作譲渡のリスクと向き合い、冷静に判断する視点が求められます。

チェックリスト①|譲渡対象の状態・内容を正確に把握する

チェックリスト①|譲渡対象の状態・内容を正確に把握する

造作物の一覧とその状態確認の重要性

造作譲渡の検討を進める際に、最初に確認すべきことは「何が譲渡対象となるのか」という項目です。譲渡対象には、空調設備や給排水設備、照明器具、厨房機器、内装仕上げ、什器類など多岐にわたる項目が含まれる場合があります。しかし、すべてが一律に譲渡されるわけではなく、前借主との合意内容や物件の状況によって差があります。

そのため、譲渡対象物のリストを細かく書き出し、ひとつひとつの状態を現地で確認することが必要です。目視だけでなく、実際に稼働させて確認できるものは動作確認を行い、後からトラブルにならないよう記録を残しておくと安全です。あいまいな確認ではなく、確定情報として譲渡契約書に反映できる内容に落とし込むことがポイントです。

貸主・前テナントとの責任の切り分け

造作譲渡は基本的に、前の借主と新しい借主の間で行われる私的な売買契約に近いものですが、物件の貸主が関与する場面も多く存在します。特に建物の一部とみなされる設備や、共有部分と接する造作については、貸主の承諾が必要となるケースがあります。

このような背景から、誰がどの設備に対して責任を持つのかを明確にする必要があります。譲渡対象物の故障や劣化が見つかった場合、修繕義務を負うのは前借主か、それとも引き継いだ新借主か。もしくは貸主が関与する範囲なのか。責任の所在をあらかじめ整理しておかないと、予期せぬ負担を強いられることになります。

特に、契約書上で譲渡対象が“現状有姿”として記載されるケースでは、受け取った時点で不具合があったとしても、基本的に新借主がそれを受け入れることになります。このようなリスクを避けるためにも、事前の確認と責任範囲の線引きは非常に重要です。

不具合の事前把握がトラブルを防ぐ

譲渡される設備に不具合があった場合、どの時点で気づくかによって対応の選択肢が変わります。契約前に不具合を把握できていれば、その内容を契約条件に反映させたり、価格交渉の材料にしたりすることが可能です。しかし、契約後に発覚した場合は、修理費や撤去費を自費で負担するリスクが生じます。

そのため、現地確認の際は、設備単体の機能だけでなく、配線や給排水の接続状態、天井裏や床下の劣化など、見えにくい部分まで意識して確認する視点が求められます。必要に応じて内装や設備の専門業者に同行してもらい、プロの目線でのチェックを入れることも有効です。

また、不具合の有無だけでなく、今後の運営において不都合となる配置や仕様がないかも事前に見極める必要があります。表面的な使い勝手だけで判断せず、長期的な視点で運用可能かどうかを含めて判断材料とすることが、後のトラブルやコストの増加を回避するポイントです。

チェックリスト②|契約条件・譲渡価格の妥当性を見極める

価格設定の根拠と妥当性の見方

造作譲渡において、価格設定が適正かどうかを見極めることは極めて重要です。譲渡価格は、基本的に前借主と新借主の間で自由に決定されますが、感覚的に決められていることも少なくありません。そのため、提示された価格が市場相場と比べて妥当かどうか、冷静に判断する姿勢が求められます。

評価の際には、設備の導入年数や使用頻度、劣化具合、修繕履歴などが重要な指標になります。また、同業種・同規模の類似店舗での造作譲渡事例を参考にすることで、価格の適正さを比較しやすくなります。譲渡価格に含まれる範囲を明確にした上で、過不足のない内容となっているかも見逃してはいけないポイントです。

契約書に明記すべき基本項目

造作譲渡は物件契約とは別の取引となるため、内容を明確にした契約書を交わす必要があります。口頭だけの取り決めや、簡易な書面だけで済ませてしまうと、後々のトラブルを引き起こす原因となりかねません。

契約書には、まず譲渡対象物の明細と状態、譲渡価格、支払方法、引き渡し日を明記します。さらに、譲渡後に問題が発生した場合の責任範囲や、保証の有無についても具体的に記載することが推奨されます。

また、「現状有姿」での引き渡しである旨を明記することが一般的ですが、その場合でも、明らかな故障や欠陥については事前に情報提供を受けることが望まれます。双方の認識のズレをなくすためにも、第三者の立ち会いや写真による記録を契約書に添付しておくと、後の証拠になります。

貸主の承諾や原状回復条項の注意点

造作譲渡を行うには、貸主の承諾が必要な場合があります。賃貸借契約の中には、「造作物の譲渡は不可」や「承諾を得た場合のみ可」といった条項が含まれていることもあるため、事前に契約内容をよく確認しておくことが重要です。

また、造作譲渡によって内装や設備を引き継いだとしても、将来的に退去する際には、原状回復を求められる可能性があります。その場合、元々の状態がどこまでだったのか、新たに設置された造作がどこまでなのかが問題になります。貸主との取り決めに基づいて、どこまで回復義務があるのかを明確にしておく必要があります。

造作譲渡をスムーズに進めるためには、前借主・新借主・貸主の三者が情報を共有し、互いの役割や責任を理解していることが前提です。とくに契約書に盛り込まれる条件が曖昧なまま進んでしまうと、後から想定外のコストや手間を負う結果になりかねません。

こうしたリスクを避けるためには、契約前に必ず各項目について確認し、不明点や曖昧な表現があれば解消しておくことが不可欠です。

チェックリスト③|スケジュールと引き渡し条件の確認

物件取得から開業までのタイムラインを設計する

造作譲渡に関する取引では、譲渡契約と物件の賃貸契約が別で進行するため、スケジュール管理の重要性が高まります。とくに、物件の引き渡し日、改装工事の着工日、開業日など、複数の工程が関わってくるため、それぞれのタイミングが連動するように計画する必要があります。

たとえば、譲渡契約が先に成立していても、貸主からの正式な賃貸契約が遅れれば、工事の着手ができず予定がずれ込む可能性があります。また、前借主の退去が完了していない状況でスケジュールを進めてしまうと、トラブルの原因になります。

そのため、スケジュール設計では、各契約の締結時期、引き渡し日、工事スケジュール、開業準備などを一連の流れとして把握し、余裕を持った日程を設定することが求められます。

引き渡し条件の詳細を確認する

造作譲渡では、「どのような状態で引き渡されるのか」が明確でないと、後になって「思っていた状態と違った」といった認識のズレが発生する可能性があります。とくに注意すべきは、譲渡対象となる設備や内装が、稼働状態で引き渡されるのか、撤去された状態なのかといった点です。

また、引き渡し時点で清掃がされているか、電気や水道が使用可能かなど、細かなコンディションも契約前に確認しておくと安心です。さらに、譲渡対象物に不具合が発覚した場合の取り決めも、事前に明文化されているかをチェックする必要があります。

このような条件を曖昧にしたまま契約に進んでしまうと、余計な費用や時間を要する事態に発展しかねません。交渉時には、引き渡しの方法やそのタイミングについても明確に取り決めておくことが重要です。

工事や設備点検との兼ね合い

引き渡し後に改装工事を予定している場合、工事業者の手配や工程調整も並行して行う必要があります。工事内容が譲渡された造作物に干渉する場合は、どの範囲を残し、どの範囲を変更するかをあらかじめ整理しておかなければなりません。

また、設備の点検や再設置が必要になる場合には、工事と並行して進めるスケジューリングが求められます。とくに業務用設備などは、安全性や法的基準への適合が問われることもあるため、事前のチェックや調整作業が発生することを想定しておくと、計画がスムーズに進みやすくなります。

造作譲渡は「引き渡されたら終わり」ではなく、その後の工程が円滑に進むよう、全体のスケジュールと引き渡し条件の整合性を保つ視点が不可欠です。

譲渡交渉を円滑に進めるためのポイント

交渉前の準備が成否を分ける

造作譲渡の交渉は、前借主との信頼関係と情報の共有が基盤になります。交渉を始める前には、まず自分たちが希望する譲渡条件や受け入れ可能なラインを明確にしておくことが必要です。譲渡価格の上限、譲渡対象の希望範囲、引き渡しスケジュールなど、具体的な条件をあらかじめ整理しておくことで、話し合いがスムーズに進みやすくなります。

また、物件の現地確認を済ませたうえで、必要な修繕や改修の可能性も見込んでおくと、現実的な交渉材料を持つことができます。曖昧な状態で交渉に入ってしまうと、相手のペースに巻き込まれやすく、納得のいかない条件での締結になってしまうリスクが高まります。

譲渡側との信頼構築を意識する

譲渡交渉は単なる価格のやりとりではなく、互いの意向や背景を理解しながら信頼を築くプロセスです。前借主も自身が築いた店舗に対して思い入れがある場合が多く、一方的な値下げ交渉や強気な態度は、交渉を不利に進めてしまう原因になります。

そのため、まずは相手の事情や希望を丁寧に聞き取る姿勢を持つことが重要です。たとえば、退去の理由や譲渡に対するスタンス、店舗に残したい設備や備品の意図など、交渉の前提となる情報を把握しておくと、互いに納得感のある条件を引き出しやすくなります。

信頼関係が築ければ、譲渡価格の調整だけでなく、設備の追加提供やスケジュールの柔軟な対応といった、交渉範囲を広げることにもつながります。

交渉は冷静に、第三者の視点も取り入れる

交渉の過程では、お互いに譲れない部分や条件の擦り合わせが発生します。その際、感情的な対応を避けるためにも、論点を明確にしながら冷静に対話を進めることが求められます。

必要であれば、内装や不動産に詳しい第三者を交えて、専門的な視点からアドバイスをもらうのも効果的です。とくに初めて造作譲渡を行う場合は、契約条件や譲渡対象の評価など、判断が難しい項目も多いため、客観的な意見が交渉の軸となることがあります。

また、第三者の立ち会いがあることで、後々の言った・言わないといったトラブルを未然に防ぐ効果も期待できます。可能であれば書面の取り交わしとあわせて、記録を残すことも視野に入れておくと安全です。

交渉は一度きりではなく、数回に分けて進められることもあります。だからこそ、一貫した方針と丁寧な対応が、最終的な合意形成を支える要素になります。

物件取得までの流れと注意点

一連のステップを正確に把握する

造作譲渡を伴う物件取得には、通常の賃貸契約とは異なる流れがあります。まず、気になる物件の内見と情報収集を行い、譲渡対象となる造作物の範囲や状態を確認します。その後、譲渡希望者との条件交渉を経て、譲渡契約を締結します。

次に、物件の貸主との賃貸借契約を別途進める必要があります。ここでは、造作譲渡を前提とした使用目的や契約内容が問題なく成立するかの確認が重要です。すべての契約が整った後、引き渡しと開業準備へと進む流れになります。

見落としがちな注意点を意識する

この一連の流れの中で特に注意すべきなのは、契約が並行して進行する点です。譲渡契約と賃貸契約は法的に別物であるため、片方がまとまっても、もう片方に問題があれば全体が成立しないケースもあります。

また、譲渡契約の締結を急ぎすぎると、貸主からの承諾が得られなかった場合にリスクを抱えることになります。したがって、両契約をバランス良く進め、情報の透明性と合意形成を丁寧に行う姿勢が不可欠です。

開業を急ぐ気持ちがあっても、手順を省略せず、書面や確認事項をきちんと残すことで、後のトラブルを未然に防ぐことが可能になります。

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監修者

IDEAL編集部

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