2023.01.30  2023.02.03|新規開業ノウハウ

介護施設を開業する流れ!メリット・デメリット、必要な資格や費用まで

介護施設を開業する流れ!メリット・デメリット、必要な資格や費用まで

本記事で、介護施設を開業する流れを解説します。介護施設開業のメリット・デメリット、必要な資格や費用もご紹介します。店舗の開業や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。

介護施設とは?

介護施設とは?

介護施設とは、高齢者に介護サービスを提供する施設全般です。施設内で入居者に入浴や排泄、食事などの介護サービスを提供したり、自宅で生活する利用者に介護サービスを提供したりします。

それでは介護施設の開業を検討するために、主なサービス形態や開業するメリット・デメリットをご紹介します。本記事では、主に入居型の介護施設について取り上げます。

主なサービスの形態

介護施設の主なサービスの形態は訪問型と通所型、入居型の3種類です。各形態のサービスについて以下の表にまとめました。

サービスの形態サービスの内容サービスの特徴
訪問型訪問看護・訪問介護・訪問入浴・訪問リハビリ看護師や介護員が要介護者の自宅に出向き、生活の援助や介助を行う
通所型デイケア・デイサービス・ショートステイ利用者が施設に通い、レクリエーションを受けたり自立生活の相談をしたりする
入居型老人ホームと介護老人保健施設、グループホーム、ケアハウス介護が必要な高齢者が施設に入居して、生活の介助やサービスを受ける

ただし介護施設の目的や利用者の介護認定の度合いなどによって、サービスの内容が異なる点にご注意ください。各サービスの特徴を解説していますので、次の記事も併せてご覧ください。

開業するメリット

介護施設を開業するメリットは、介護サービスのニーズがあり社会に貢献できる点と安定した収入を得やすい点です。高齢化社会の日本では、今後も介護が必要である人数は増え続けることが予想されているため、将来的にも介護業界の成長率は高いと想定されます。

日本の65歳以上の高齢者は、約3600万人です(2022年時点※①)。高齢者のなかで介護が必要である人と生活の支援が必要である人は、約700万人(2022年9月時点※②)です。

※①参考:総務省統計局「1.高齢者の人口」

※②参考:厚生労働省「介護保険事業状況報告の概要」

また介護サービスには介護保険が適用され、保険料として8〜9割が国や自治体から給付されます。利用者が支払う介護料金は残りの1〜2割であるため、介護料金を回収できないリスクは低いです。

開業するデメリット

一方で介護施設を開業するデメリットもあります。例えば社会情勢(コロナ禍や物価上昇)や形態(定員や稼働率)、人材確保などに業績が影響される点です。2022年には「老人福祉・介護事業」の倒産は100件と、過去最多を記録しました。

参考:東京商工リサーチ「「介護事業者」の倒産が過去最多 価格転嫁が難しく、大規模な連鎖倒産も発生」

また介護施設の収益である介護報酬は、請求して数か月後にしか受給できない点もデメリットです。開業して当面の間は、運転資金も必要です。国によって介護報酬額が設定されているため、価格競争が起こりにくいです。

対策としてサービスの質を上げて、利用者や入居者を確保することが重要です。感染症対策を徹底して、入居者や家族が安心して過ごせる環境を整えてください。そして良質な人材確保のために給与を上げたり、IT化で業務効率化を図ったりして、労働条件を改善しましょう。

なお正確な資金計画を立てる必要もありますので、開業資金について後ほど解説します。

介護施設を開業する流れ

介護施設を開業する流れ

介護施設の概要を把握したうえで、開業する流れを把握しましょう。スムーズに開業するために、ゆとりをもって準備する必要があります。

サービスの形態とコンセプトを決める

介護施設を開業するために、まずサービスの形態とコンセプトを決めましょう。訪問型・通所型・入居型からサービスの形態を選択してください。形態によって提供するサービスが異なるため、特徴を理解して決定する必要があります。

また介護施設のコンセプトを設計するうえでは、収益を伸ばすためにターゲットを絞り、他介護事業者との差別化を図ることが重要です。独自のサービスを展開して利用者や入居者を集められないと、閉業する恐れがあります。

法人を設立する

次に法人を設立してください。「老人福祉法」により、介護施設は国や各地方自治体が定めた基準をクリアする必要があります。有料老人ホームなら、株式会社や合同会社も参入可能です。

参考:e-Gov法令検索「老人福祉法」第15条

したがって個人事業主は、介護施設を開業できません。また特別養護老人ホーム(要介護度の高い高齢者のみが入居)は公的施設ですから、社会福祉法人や地方公共団体でなければ開業できない点にご注意ください。

物件を決める

法人設立の手続きを進めながら、介護施設の物件を決めてください。介護施設を開業するためには、国が定めた設備基準を満たす必要があります。形態によって設備基準が異なる点にご注意ください。

例えば特別養護老人ホームの部屋では、入居者1人につき床面積が10.65㎡以上必要です。

参考:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」第3条

また介護サービスのコンセプトやターゲットに合う立地を慎重に検討しましょう。介護施設にも役立つ物件探しのコツをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

介護施設をデザインして工事する

土地または物件を取得できたら、提供するサービスに応じて介護施設をデザインして工事します。設備基準だけではなく、コミュニケーションやおしゃれさも考慮しましょう。介護施設の内装デザインを紹介していますので、次の記事の併せてご覧ください。

開業資金を調達する

そして介護施設の開業資金を調達してください。形態や規模によって差がありますが、入居型の介護施設には数千万~数億円程度が必要です。国や地方自治体によって、介護施設の要件(1人当たりの部屋の面積や食堂・入浴の設備など)が決まっています。

なお介護施設は基本的に大規模になりますので、一般的な店舗よりも開業資金がかかります。開業資金の内訳と調達方法について、後ほど解説します。

従業員を採用・研修する

また介護施設の物件だけではなく、従業員を採用・研修してください。介護業界の離職率は高く、人手不足です。魅力的な職場や雇用条件を提供して、人材を確保しましょう。

参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度 介護労働の現状について」7ページ

また入居者や利用者に満足してもらえるサービスを提供するために、定期的な研修が必要です。高齢者とのコミュニケーションやハラスメント防止、職員同士の連携などの課題を洗い出したうえで、計画的に実施しましょう。

参考:株式会社日本教育クリエイト「テーマ別研修一覧」

なお介護施設は、人員基準を満たさなければなりません。介護施設の形態や規模によって、必要な人員を把握する必要がありますので、後ほど詳しく解説します。

届出・許可を申請する

そして介護施設開業の届出・許可を申請することも忘れないでください。都道府県や市町村に必要書類を提出しなければなりません。

例えば東京都で有料老人ホームを開業する場合には、東京都福祉保健局が窓口になります。ただし届出の前に、予約したうえでの事前相談が必要です。開業エリアの該当窓口で確認してください。

参考:東京都福祉保健局「有料老人ホームの届出について(届出の前に事前相談が必要です。※要予約)」

介護施設開業に必要な申請と資格

介護施設開業に必要な申請と資格

介護施設を開業する流れを把握したうえで、開業に必要な申請と資格をご紹介します。開業許可を得るために、介護施設の形態ごとに定められた人員配置が必要です。資格保有者の採用や経営者による資格取得を検討しましょう。

事業者指定申請

まず介護施設を開業するために、「事業者指定申請」を出してください。介護サービスには介護保険が適用されるため、国から保険事業者として指定される必要があります。申請窓口は、開業エリアを管轄する都道府県や市町村です。

例えば埼玉県で有料老人ホームを開業する場合は、該当する福祉事務所に必要書類を提出します。ただし政令指定都市などの一部市町村では、申請窓口が異なる点に注意してください。

参考:埼玉県「新規指定申請の概要・手引等」

介護福祉士

次に介護施設を開業するために必要な資格として、介護福祉士が必要です。国家資格で、要介護者の生活支援(入居者の食事や入浴など)が主な仕事です。介護職員の中でリーダー的な役割を担い、専門的知識に基づいて入居者に対して具体的な指導や助言も行います。

介護福祉士の配置基準として、例えば「要介護3以上の入居者を受け入れる特別養護老人ホーム」には入居者3人に対して介護職員1人以上が必要です。開業する介護施設に対する配置基準をご確認ください。

参考:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」第2条

介護職員初任者研修

また介護職員初任者研修の資格保有者(旧ホームヘルパー2級相当)も、介護施設の開業に必要です。上位資格である介護福祉士の受験資格であるため、さらに質の高いサービス提供をするためのスタートとなる資格です。

介護職員の配置基準として、例えば特別養護老人ホームなどでは入居者3人に対して介護職員1人が求められます。資格がなくても介護職員になれますが、専門知識を有していなければ入居者の体に直接触れて介護できません。

参考:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」第2条

介護支援専門員

また介護支援専門員も、介護施設の開業に必要です。介護施設のケアマネジャーとして、入居者や家族の相談に応じながら、介護内容や食事支援などをまとめた介護サービス計画(ケアプラン)を作成します。

ケアマネジャーの配置基準は、入居者100人に対して1人以上です。配置基準を満たしたうえで他の業務に支障が出ない場合は、介護職員などを兼務できます。

参考:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」第2条

生活相談員

生活相談員

また生活相談員も、介護施設の開業に必要です。主な仕事内容は、入居者が介護サービスを受けられるように、ケアマネジャーや福祉施設と連絡調整を行うことです。

配置基準として、例えば特別養護老人ホームでは入居者100人に対して常勤の生活相談員1人が必要です。生活相談員は資格ではなく、支援を行う職種を指します。

参考:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」第2条

ただし生活相談員になるためには、国家資格(社会福祉士や精神保健福祉士など)を取らなければなりません。資格がなくても実務経験のみで認められる自治体もあります。

社会福祉士

そして介護施設の開業には、社会福祉士の資格保有者も必要です。国家資格で、主な仕事内容は福祉の専門家として家族の相談に乗ったり、入居者に助言や指導を行ったりすることです。

上記のとおり、生活相談員に対する配置基準が定められています。障害者支援施設や老人ホームなどの施設長になるためにも、社会福祉士の資格は必要です。

参考:厚生労働省「03 資料1 社会福祉士について」(8ページ)

精神保健福祉士

加えて介護施設のサービス内容によって、精神保健福祉士の資格保有者も必要です。国家資格であり、介護施設に必要な生活相談員になることができます。

特に精神障害者福祉施設では、「精神保健福祉相談員」の配置義務が求められています。老人ホームなどにおいて、認知症の高齢者に対するケアが可能です。

参考:e-Gov法令検索「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」第48条

サービス提供責任者

なおサービス提供責任者は、入居型の介護施設においては設置義務はありません。ただし入居型の介護施設だけではなく、訪問介護も提供するならサービス提供責任者が必要です。

参考:e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」第5条

主な仕事内容は、利用者がケアプランに沿って適切な介護を受けられるように、ケアマネジャーや訪問介護員と連絡調整を行うことです。通称「サ責」とも呼ばれます。

介護施設の開業費用

介護施設の開業費用

必要な申請と資格だけではなく、介護施設の開業費用も確認しておきましょう。形態によって違いはありますが、安定した経営を続けるために開業前から綿密な資金計画が必要です。

開業資金の相場

まず介護施設の開業資金は、介護施設の形態や定員数によって異なります。例えば入居型介護施設の開業資金の相場は、数千万~数億円程度です。

開業資金の内訳

次に介護施設の開業資金の内訳を下表にまとめました。100坪程度の土地を購入して有料老人ホームを建築する費用を試算してあります。

開業資金の内訳費用の割合有料老人ホーム
(100坪程度の土地)
土地購入費全体の30%程度
(坪単価30万円程度)
3,000万円程度
施設建築費全体の60%程度
(坪単価60万円程度)
6,000万円程度
設備・備品費全体の10%程度1,000万円程度
営業費全体の1%程度100万円程度
採用活動費全体の1%程度100万円程度
運転資金全体の1%程度100万円程度
合計100%1億円程度

上表のとおり、開業資金全体の90%を土地購入費と施設建築費が占めます。居抜き物件を賃借しても、施設の設備基準を満たすために大規模な改装工事が必要になる場合がある点にご注意ください。

開業資金の節約方法

また開業資金の節約方法として、居抜き物件を活用したり、福祉施設の施工実績がある業者に依頼したりしましょう。居抜き物件の探し方についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

他の節約方法として土地だけを借りたり、食堂やお風呂を共有スペースにして床面積を有効活用したりする方法もあります。ただし必ず設備基準を満たすように、ご注意ください。

開業資金の調達方法

なお開業資金の調達方法もご紹介します。開業資金全額を自己資金から調達できない場合には、国や地方自治体の補助金・助成金や銀行の融資などを活用します。例えばサービス付き高齢者住宅の開業には、国からの補助金を活用できます。

参考:スマートウェルネス推進事業サービス付き高齢者向け住宅整備事業「サービス付き高齢者向け住宅整備事業について」

一方で銀行からの融資を申請する場合には、一定額の自己資金が必要です。返済できる保証がなければ、審査の通過が難しくなります。各銀行によって融資額や審査基準は異なるので、事前に確認しましょう。

なお介護施設にも活用できる開業資金の調達方法について詳しくまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

利用者に満足される介護施設を開業しよう!

IDEALは店舗や施設のコンセプト設計から資金調達、物件探し、内外装のデザイン・工事、集客までのワンストップソリューションをご提供しております。

下のキーワードをクリックして、店舗デザインや開業準備などの関連記事もぜひご覧ください。また店舗の開業や移転、リニューアルなどをご検討の際は、ぜひご相談ください。

キーワード :

店舗工事のご相談・お問い合わせはこちら

監修者

IDEAL編集部

日本全国の美容室・カフェ・スポーツジム等の実績多数!
店舗づくりをプロデュースする「IDEAL(イデアル)」が運営。
新規開業、店舗運営のお悩みや知りたい情報をわかりやすくお届けいたします。

> IDEALの編集者ポリシー

店舗工事のご相談・お問い合わせはこちら

店舗作り、集客の
無料見積もり・相談をする