2018.01.17 2024.08.11|店舗運営ノウハウ
飲食店の分煙はいつから義務化される?法律・罰則・条件・方法・注意点・事例も紹介
本記事で「飲食店の分煙はいつから義務化される?」という疑問にお答えするために、飲食店の分煙対策の法律・罰則・条件・方法・注意点・事例をご紹介します。店舗の開業や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。
目次
飲食店の分煙対策に関する基本情報
飲食店の分煙対策を検討する前に、基本情報を確認しましょう。基本情報を確認することで、分煙対策を検討しやすくなるからです。それでは屋内の禁煙の義務化と法律、罰則、喫煙室を設置できる条件、助成金をご紹介します。
屋内の禁煙はいつから義務化される?
まず屋内の禁煙は、2020年4月から義務化されました。受動喫煙の防止が目的です。
- 2018年7月「健康増進法」の一部が改正
- 2019年1月「喫煙する際の周囲の状況への配慮義務が施行」が施工
- 2019年7月「原則敷地内禁煙」が施工
- 2020年7月「原則屋内禁煙」が施工
参照元:
群馬県「健康増進法の一部が改正され、受動喫煙防止対策が強化されました」
法律と罰則
次に飲食店の分煙対策(受動喫煙の防止)は、法律(健康増進法)に規定されています。喫煙を認める飲食店には、喫煙専用室を設置しなければなりません。ただし小規模の飲食店に対しては、経過措置(喫煙可能室の設置)が認められています。
参照元:
以上の規定に違反した飲食店が、行政からの指導・命令に従わない場合には、罰則(50万円以下の過料)が適用されます。法令を遵守しない飲食店は、取引先や顧客からの信頼・信用を失いかねません。
参照元:
喫煙室を設置できる条件
それから飲食店に喫煙室を設置できる条件を確認しましょう。
- 喫煙専用室 :一般的な飲食店に設置可能
- 加熱式たばこ専用喫煙室:一般的な飲食店に設置可能
- 喫煙目的室 :喫煙目的施設(バーやスナックなど)に限定
- 喫煙可能室 :既存特定飲食提供施設に限定
以下のページを参照して、開業・経営している飲食店に設置できる喫煙室を判定しましょう。
助成金
そして飲食店の分煙対策には、「受動喫煙防止対策助成金」を活用できます。対象者は、労働者災害補償保険適用事業主である中小企業事業主です。喫煙室の設置費用(設備・備品・工事費など)の3分の2(上限100万円)が助成されます。
ただし受動喫煙防止対策助成金を申請する際には、審査(喫煙室設置の妥当性)を受けなければなりません。申請前に、飲食店の開業エリアを管轄する都道府県労働局に相談しましょう。
飲食店の分煙対策方法
基本情報を踏まえたうえで、飲食店の分煙対策方法も確認しましょう。4点(喫煙室と標識の掲示、喫煙エリアへの20歳未満の立ち入り禁止、従業員の受動喫煙防止)をご紹介します。
喫煙室のタイプ
まず喫煙室のタイプが、飲食店の分煙対策方法として挙げられます。
- 喫煙専用室 :喫煙が可能で飲食は不可
- 加熱式たばこ専用喫煙室:加熱式たばこだけの喫煙と飲食が可能
- 喫煙目的室 :喫煙と主食以外の飲食が可能
- 喫煙可能室 :喫煙と飲食が可能
開業・経営している飲食店の規模やターゲット層などに応じて、喫煙室のタイプを検討しましょう。喫煙可能室を設置する場合には、保健所への届出が必要です。
参照元:東京都保健医療局「令和2年1月6日から喫煙可能室の届出を受け付けています」
標識の掲示
次に標識の掲示も、飲食店の分煙対策方法です。健康増進法に基づいて、喫煙室を設置する飲食店には、標識を掲示しなければなりません。
以下のページから、喫煙式の標識をダウンロードできます。喫煙室のタイプに応じて標識が異なりますので、飲食店の入り口と喫煙室に適切な標識を掲示しましょう。
喫煙エリアへの20歳未満の立ち入り禁止
それから喫煙エリアへの20歳未満の立ち入り禁止も、飲食店の分煙対策方法です。喫煙を目的としない場合でも、20歳未満の顧客や従業員が喫煙エリアに立ち入ることができません。
喫煙室に20歳未満の顧客や従業員を立ち入らせた場合には、健康増進法に基づいて、飲食店の経営責任者が管轄する都道府県から指導・助言を受けます。
従業員の受動喫煙防止
そして従業員の受動喫煙防止も、飲食店の分煙対策方法です。健康増進法と労働安全衛生法に基づいて、喫煙室を設置した飲食店の経営者には、従業員の受動喫煙を防止する努力義務があります。
参照元:
厚生労働省により、「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」が示されています。ガイドラインに従って、飲食店における従業員の受動喫煙防止対策を講じましょう。
参照元:
飲食店の分煙対策に関する注意点
飲食店の分煙対策方法だけではなく、注意点もご紹介します。7点(店舗物件の立地・間取り・種類と工事費用の見積もり、法令の遵守、換気・排気設備、内装デザインの統一感、メンテナンス、特別償却または税額控除の選択)を確認しましょう。
店舗物件の立地・間取り・種類
まず店舗物件の立地・間取り・種類が、飲食店の分煙対策に関する注意点として挙げられます。飲食店に喫煙室を設置する場合には、法令に基づいて技術的な基準を満たさなければなりません。喫煙室を設置できる店舗物件の立地・間取りを選びましょう。
参照元:厚生労働省「職場における受動喫煙防止のために」(9ページ)
店舗物件の種類には、居抜き物件とスケルトン物件があります。技術的な基準を満たす喫煙室が設置されている居抜き物件なら、設置工事費用がかかりません。居抜き物件とスケルトン物件の違いをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
工事費用の見積もり
次に工事費用の見積もりも、飲食店の分煙対策に関する注意点です。飲食店に喫煙室を設置するためには、内装(建具・壁など)や設備・機器(電気・空調・換気・照明など)の工事費用が発生します。
そこで喫煙室設置工事を依頼する際には、複数の業者から見積もりを取って、工事の内容や費用などを比較しましょう。内装工事の見積もりを依頼する流れをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
法令の遵守
それから法令の遵守も、飲食店の分煙対策に関する注意点です。法令に基づいて、屋内原則禁煙や喫煙室の技術的な基準、標識の掲示、20歳未満の立ち入り禁止、立ち入り検査への対応などが、飲食店には求められています。
関係法令に違反すると指導・助言を受けたり、罰則を科されたりしてしまいます。飲食店の評判を落とさないように、分煙対策に関する法令を遵守しましょう。
換気・排気設備
続いて換気・排気設備も、飲食店の分煙対策に関する注意点です。飲食店に喫煙室を設置する場合には、換気・排気に関する技術的な基準を満たさなければなりません。喫煙室の技術的な基準を満たす排気・換気設備を施工しましょう。
参照元:厚生労働省「職場における受動喫煙防止のために」(9ページ)
特に重飲食店においては、店内の快適性を高めるためにも、換気・排気設備が重要です。飲食店にも活用できる換気・排気設備についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
内装デザインの統一感
さらに内装デザインの統一感も、飲食店の分煙対策に関する注意点です。飲食店内に喫煙室を設置する場合には、ターゲットとする顧客層を集客して売上を伸ばすために、統一感のある内装をデザインしましょう。
そこで統一感のある内装をデザインするためには、飲食店のコンセプトに合うテイストを選びましょう。内装デザインのテイスト事例をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
メンテナンス
またメンテナンスも、飲食店の分煙対策に関する注意点です。飲食店に喫煙室を設置してからは、内装の劣化や設備・機器・什器の破損などを定期的にメンテナンスしなければなりません。
喫煙室内だけではなく、飲食店の外観や厨房などにも、定期的なメンテナンスが必要です。飲食店にも活用できる「店舗メンテナンスの重点箇所と方法」をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
特別償却または税額控除の選択
そして特別償却・税額控除の選択も、飲食店の分煙対策に関する注意点です。飲食店の喫煙室設置に対しては、受動喫煙防止対策助成金だけではなく、特別償却または税額控除も活用できます。
耐用年数(所得税法や法人税法に定められた減価償却の配分期間)と減価償却(長期間使用する建物・設備・備品などの経費を一定期間内に分配する税務処理)についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
飲食店の分煙対策事例
注意点に気をつけて飲食店の分煙対策を進められるように、参考となる事例を調査しましょう。事例5点(バーと和食屋、焼肉屋、カフェ、串カツ屋)を取り上げて、各事例の特徴をご紹介します。
完全禁煙のバー
まず「Sakae」は、完全禁煙のバーです。「お家に遊びに来てもらう」をコンセプトにしているため、心地よい空間でお酒と音楽を楽しんでもらうために、完全禁煙が選択されています。
繁華街のすすきに立地していますが、喫煙を好まない顧客層を集客できており、競合バーとの差別化が図られています。完全記念によって、ポップコーンやコーヒーなどの香りで満たされているバーです。
参照元:
なくそう!望まない受動喫煙。「全国の受動喫煙対策事例|北海道 – Sakae – 」
屋内原則禁煙の和食屋
次に「魚勝」は、屋内原則禁煙の和食屋です。顧客や従業員からの要望に沿って、健康増進法改正前から受動喫煙対策を開始し、段階的に屋内原則禁煙を実現させました。屋内原則禁煙の実現後には、喫煙者の顧客から理解を得られています。
分煙対策に限らず、魚勝の経営者は、「伝統を守りながら、時代のニーズに合わせた店づくりをやっていきたい」と考えています。食文化継承と顧客満足度向上を目指す和食屋です。
参照元:
なくそう!望まない受動喫煙。「全国の受動喫煙対策事例|東海・北陸エリア -株式会社 魚勝-」
喫煙専用室の設置された焼肉屋
それから「ぴょんぴょん舎」は、喫煙専用室の設置された焼肉屋です。顧客の要望を受けて、2015年頃から屋内原則禁煙を選択し、喫煙者のために喫煙専用室を設置しました。非喫煙者と喫煙者の顧客のニーズに応えるためです。
喫煙専用室だけに灰皿の回収や掃除が限定されたことで、従業員の業務負担が減りました。喫煙室設置以外にも、幅広い顧客層に好まれるように、店舗の外観や内装をデザインしている焼肉屋です。
参照元:
なくそう!望まない受動喫煙。「全国の受動喫煙対策事例|東北エリア – ぴょんぴょん舎-」
喫煙専用室の設置されたカフェ
続いて「カフェ・ド・クリエ クインテッサホテル東京銀座」は、喫煙専用室の設置されたカフェです。法令の定める技術的な基準を満たすだけではなく、視界を遮るためにグラデーションフィルムが施工されています。
「いっぱいのしあわせ」をコンセプトに飲食店を経営しているため、客席と同じように落ち着いたテイストで、喫煙専用室もデザインされています。首都圏を中心に全国展開しているカフェチェーンです。
参照元:
JT「飲食店の事例 カフェ・ド・クリエ クインテッサホテル東京銀座店東京中央区」
食べログ「カフェ・ド・クリエ クインテッサホテル東京銀座 (CAFE de CRIE)」
加熱式たばこ専用喫煙室の設置された串カツ屋
そして「串かつ でんがな 神田西口店」は、加熱式たばこ専用喫煙席の設置された串カツ屋です。屋内原則禁煙ですが、技術的な基準を満たした喫煙専用室と加熱式たばこ専用喫煙室が設置されています。
技術的な基準を満たすために、加熱式たばこ専用喫煙室と廊下の間に「のれん」が設置されています。大阪食文化の串かつを独自のこだわりやおいしさで再現する串かつ屋です。
参照元:
JT「飲食店の事例 串かつ でんがな 神田西口店東京都千代田区」
飲食店の分煙対策を検討しよう!
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監修者
-
IDEAL編集部
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