本記事で、店舗を開業する流れと…
2022.03.03 2022.03.10|店舗デザイン
居抜きの意味とは?スケルトン物件との違いや内装施工事例も紹介
店舗を開業するために賃貸物件を探していると「居抜き物件」という言葉を目にすることがあります。スケルトン物件(一般的な物件)と何が違うのでしょうか?開業準備には時間や費用がかかるため、少しでもコストを削減したいですよね!
そこで今回は居抜き物件の意味や特徴、スケルトン物件との違い、向いているケースを解説します。居抜き物件に店舗を開業した事例も紹介しますので、店舗の物件探しや内装デザインの参考にしてください。
目次
居抜きの意味や語源とは?
そもそも「居抜き」とは、どのような意味なのでしょうか?不動産用語として使われることの多い言葉ですが、言葉の由来には所説があります。
それでは「居抜き」の語源や意味を確認していきましょう。
居抜きの語源
「居抜き」の語源は、主に2つあります。
一つは、「居を抜く」という表現が名詞化したという説です。「居」という漢字には、「いる」「住む」といった意味がありますので、「人がいる」状態を表します、つまり「居を抜く」とは、「人がいなくなること」を意味します。
もう一つは、関西弁の「煮抜き」が転じて「居抜き」になったという説です。「煮抜き」は「固ゆでのゆで卵」を意味します。だから卵の殻を「建物」に、中身のゆで卵を「内装設備」に例えて、「煮抜き」が「建物に内装が施工された状態」を意味します。
居抜きの意味
物件の賃貸契約において、「居抜き」とは「旧借主によって施工・配置された造作(内装や什器など)が残されたままの状態で新借主へ賃貸される」ことです。新借主が造作譲渡料を支払うことで、旧借主から造作を譲り受けることができます。
一般的に賃貸物件を解約するときには、借主に原状回復(物件を入居前の状態に戻す)義務があります。つまり店舗に施工・配置した造作(設備や什器を含む)を撤去して、入居前の状態に戻してから退去しなくてはなりません。
しかし居抜きで物件を賃貸するときには、造作の全てまたは一部を残したままの状態で退去することができます。居抜きの細かな条件は、賃貸借契約ごとに異なります。
居抜き物件とは?
「居抜き」の語源と意味を押さえたら、居抜き物件が「設備・什器が施工された状態で賃貸借される物件」だと分かりますよね。
しかし居抜き物件の本質を理解していないと開業準備につまずく危険性がありますので、居抜き物件の特徴と種類を確認しておきましょう。
居抜き物件の特徴
居抜き物件の最大の特徴は、旧借主の施工・配置した造作が残っている点です。したがって新借主は内装施工の費用と時間を大幅に節約することができます。ただし造作譲渡料の支払いが条件とされる契約が多い点に注意が必要です。
造作譲渡料の相場は100-500万円ほどになりますが、譲渡される造作の種類や数によって大きく変動します。物件の貸主が了承したうえで、新借主と旧借主が造作譲渡条件を交渉することになります。
居抜き物件の種類
旧借主の解約状況によって、居抜き物件は次の3種類に分けられます。
旧借主の退去日が決まっていない状態では、造作譲渡を契約してから解約通知が出されます。旧借主が退去を急いでいない場合には交渉や契約に時間がかかり、開業日を決めづらくなります。
旧借主の退去日が決定している状態では、退去日までに新旧借主が造作譲渡の条件交渉をします。居抜き物件の契約において、最も一般的な流れになります。開業日を決めやすいですが、条件交渉が決裂するリスクがあります。
旧仮主が既に退去した状態では、旧借主が造作の所有権を放棄する場合があります。無償で造作が譲渡してもらえたら、さらに大幅に内装施工費を削減することができます。ただし旧借主が造作の一部を撤去して売却してしまっていることもあります。
居抜き物件とスケルトン物件の違い
造作が譲渡される居抜き物件に対して、建物の躯体だけの状態であるスケルトン物件。店舗を開業するときにどちらを賃貸した方がよいのでしょうか?居抜き物件とスケルトン物件の違いについて、5つの観点から比較してみましょう。
費用
居抜き物件の内装工事費用(設備費と工事期間の賃料を含む)は、造作が譲渡される分だけスケルトン物件よりも節約されます。浮いた費用を他の開業準備に充てることで、利益率を上げることができます。
しかし居抜き物件の内装工事費用が、スケルトン物件よりも割高になる場合もあります。例えば「開業する店舗に不要な造作の撤去費がかかる場合」や「譲渡された造作が古くて開業後に修理費がかかる場合」です。
したがって居抜き物件を契約する前には、譲渡される造作の種類や状態、数などを正確に確認しておきましょう。
工期
居抜き物件の造作を利用することで、スケルトン物件よりも内装工事の時間をかけずに開業できます。特に旧借主と同じ業種や業態の店舗を開業するなら、利用できる造作が増えます。もちろん内装の細かな部分を改修することが必要ですが、スケルトン状態の物件を内装工事するよりも工期を大幅に短縮できます。
スケルトン物件の内装工事には、一般的に1〜2ヶ月かかります。工事前の相談や打ち合わせにも時間がかかりますので、余裕を持って開業計画を立てることが必要です。
汎用性
居抜き物件はスケルトン物件よりも汎用性が低いです。旧借主と違う業種・業態の店舗を開業するときには、造作の撤去や内装の改修が必要です。もちろん同じ業種・業態なら、相性は良いです。
スケルトン物件は内装が何もない建物内部を自由にデザインすることができます。貸主が許可をすれば、前借主と異なる業種・業態の店舗を開業することが可能です。同じ物件に出店希望者が複数いる場合でも不利になることが少なく、旧借主の経営していた店舗のイメージを引き継ぐことも少ないです。
管理のしやすさ
居抜き物件においては譲渡された造作の管理に手間がかかる場合があります。例えば旧式の内装設備が故障したときに、図面がないと原因究明が困難になります。特に配管系の問題が起きたときには、図面があるとないとで修理のしやすさに大きな差が出ます。
スケルトン物件においては新借主が依頼して新たに設備・備品を施工するため、図面や保証書が手に入りますので、管理がしやすいです。開業後に設備・備品が故障しても、保証期間内ならすぐに対応してもらうことができます。
したがって譲渡される設備や備品の状態と併せて、保証書や図面が残っているかも確認しましょう。
認知度
居抜き物件に入居していた前店舗の認知度が高いときには、新店舗の内装に初めから親しみを感じる顧客を引き寄せられる可能性があります。
ただし居抜き物件には前店舗の悪いイメージがついてくることもあるので、注意しましょう。「前の店舗と代わり映えしないな」と顧客に思われないように、独自の商品・サービスを提供しながらブランディングすることが重要です。
反対にスケルトン物件に店舗を開業するときには、一から内装をデザインして集客をする必要があります。「既に知名度のある店舗を増やす場合」や「前店舗のイメージに引きずられたくない場合」にはスケルトン物件が適しています。
なお居抜き物件のメリット・デメリットや立地選びなどについて下の記事にまとめてありますので、併せてご覧ください。
居抜き物件が向いているケース
居抜き物件とスケルトン物件の違いを理解できたら、居抜き物件とスケルトン物件のどちらを賃貸するかを決めましょう。店舗を開業するときに居抜き物件が向いている代表的なケースを確認していきましょう。
開業費用を抑えたいケース
居抜き物件に店舗を開業する最大のメリットは、初期費用が抑えられることです。スケルトン物件の内装工事費用が坪単価30万〜50万に対して、居抜き物件では坪単価15万〜30万になります。
あくまで立地や譲渡される造作などによって変動しますが、居抜き物件の内装工事費用はスケルトン物件の半分程度に抑えることも可能です。例えば飲食店の大きな厨房設備を譲渡してもらえば、大幅に設備費用を抑えられます。
ただし居抜き物件の賃貸契約においても、退去する際の原状回復義務が条件とされている場合が多いです。契約内容をよく確認して、退去費用も計算しておきましょう。なお内装工事種類や費用について下の記事に詳しくまとめてありますので、併せてご覧ください。
早く店舗を開業したいケース
スケルトン物件に比べて内装工事にかかる期間が短い分だけ、早く居抜き物件に店舗を開業することができます。希望する開業日まで時間がない場合には、居抜き物件を選ぶと良いでしょう。
ただし早く開業する場合でも、集客や売上を見込めるようなコンセプトを設計することから開業準備を始めましょう。一貫したコンセプトに基づいて開業準備を進めれば、居抜き物件に施工されている造作の活かす部分と変える部分を判断しながら、内装工事をスムーズに計画することができます。
また集客を増やすためには、立地を慎重に選ぶ必要があります。ターゲットとする顧客層の生活行動や競合店の経営状態を調査して、候補地を分析しましょう。
初めて店舗を開業するケース
初めて店舗を開業する経営者にとって多角的に店舗をデザインすることは至難の業です。しかし居抜き物件を契約すれば、レイアウトされた店舗空間と必要な設備・備品を手に入れることができます。前店舗の認知度が高い場合に既存顧客を獲得できる可能性まであります。
ただし全店舗が退去する背景を理解しておくことが必要です。例えば「レイアウトが悪く回転率が低い物件」や「立地が悪くて集客に苦労する物件」なら、居抜き物件として契約するメリットがありません。なお開業の流れや準備について下の記事に詳しくまとめてありますので、併せてご覧ください。
居抜き物件に開業した店舗の内装施工事例
居抜き物件を契約して店舗を開業することを決めたら、物件を探し始める前に内装デザインの参考となる事例を調べましょう。今回はIDEALが「居抜き物件に開業した店舗」の内装を施工した事例を5つご紹介します。
和食店を改装したイタリアンレストラン
「LA PANDA エノテカ」様は「明るさ」「シンプルさ」「爽快感」をコンセプトに居抜き物件に施工されました。同じ飲食店でも和食とイタリアンでは雰囲気が違いましたので、元のままに使える部分を活かしながら、コンセプトに合うように一部を改修工事しました。
居抜き物件に店舗を開業しながらも、印象をガラリと変えることに成功した事例です。
造作譲渡によりコストカットを実現した創作料理店
「倭」様は、「和食料理屋の居抜き物件」に開業した創作料理店です。譲渡された什器を改修して再利用することで、コストカットを実現させました。
設備や什器を再利用するときには表面の材質や色を変更することで、前店舗のイメージを刷新させることができます。オーダーメイドすると高価なカウンターでも、居抜き物件で譲渡してもらえると費用を抑えることができます。
座敷席をテーブル席へリニューアルした和食屋
「すし将」様は居抜き物件ではないのですが、座敷席をテーブル席へと改装した和食料理屋です。既存のカウンターや解体した木材を新たな内装に使用することで、歴史をつなぐ工夫が施されています。また既存の内装と調和させるように、リニューアルする内装の色や素材を選びました。
元の内装を活かすデザインは、居抜き物件にも応用可能です。
ムード満点な店舗へと改装した焼肉店
「牛牛 西麻布総本店」様も居抜き物件ではないのですが、個室の建具やオリジナル什器、壁面の張り替えを施工することでムード満点な店舗へと改装されました。
居抜き物件においても不足している設備や什器を新たに施工することで、コンセプトに合う店舗空間をデザインすることができます。
居抜き物件で費用と時間を抑えてスムーズに開業しよう
スケルトン物件に比べて、費用と時間を抑えて開業準備を進めることができる居抜き物件。譲渡される造作の良い部分を活かしながら、内装の一部を工事することで店舗のコンセプトを実現できます。特に初めて店舗を開業する場合には、ぜひ検討しましょう。
IDEALでは、居抜きを含む物件探しから店舗デザイン・施工、開業資金調達、集客までをワンストップソリューションでご支援しております。
店舗の開業や改装の際には、ぜひご相談ください。
監修者
-
IDEAL編集部
日本全国の美容室・カフェ・スポーツジム等の実績多数!
> IDEALの編集者ポリシー
店舗づくりをプロデュースする「IDEAL(イデアル)」が運営。
新規開業、店舗運営のお悩みや知りたい情報をわかりやすくお届けいたします。