本記事で、店舗を開業する流れと…
2017.10.13 2022.06.20|新規開業ノウハウ
レストランやカフェのテラス席とは?メリットや設置条件、届出、規制緩和、デザイン、施工事例
「テラス席を設置するメリットはある?」「デザインするときの注意点を知りたい!」とお困りではありませんか?コロナ禍により注目を集めるテラス席ですが、設置条件をクリアできなければ、導入することはできません。
そこで今回はテラス席のメリットや設置条件、届出方法、規制緩和を解説していきます。デザインするときの注意点や施工事例もご紹介しますので、レストランやカフェのテラス席を検討するための参考にしてください。
目次
テラス席とは?
そもそもテラス席とは、レストランやカフェに隣接する敷地にテーブルと椅子を並べ食事ができるようにした屋外座席で、オープンカフェとも呼ばれます。開放感にあふれており、特に天気の良い日には素晴らしい雰囲気を作り出してくれる特徴があります。
テラス席の歴史はフランスやイタリアなどのヨーロッパで始まったと考えられており、「アルフレスコ」とも呼ばれます。中世に狩猟で取った肉を屋外でバーベキューしながら食べたことに由来するとされています。
歴史が進むと屋外で食事するアイデアがアメリカに伝わり、屋上や歩道などを利用してレストランやカフェを設置するようになりました。日本でもビアガーデンやジンギスカン料理の会場として屋外が使われてきました。
テラス席のメリット
テラス席の定義を把握したところで、レストランやカフェにテラス席を設置するメリットを確認していきましょう。集客と売上を伸ばせる内装をデザインできるように、メリットを理解することが必要だからです。
集客効果がある
まずテラス席には、集客効果があります。店舗の外に設置されているため、通行人に店舗の雰囲気を伝えやすいからです。実際にテラス席で顧客が食事をしていると、通行人に美味しそうな料理もアピールできます。
特に外から店内の様子が見えにくい場合には、テラス席を設置することで新規顧客の興味を引き、入店のハードルを下げることを期待できます。メニュー看板や店舗紹介動画などを組み合わせましょう。
開放感を出せる
次に開放感を出せるメリットもあります。壁に囲まれていないテラス席で飲食すると、顧客が風や気温を肌で感じられるからです。天候や時間帯、季節によって違いが生まれるため、顧客が外で食事をしながら開放的な気分を味わえます。
また季節の変化に合わせてメニューや外装を変更することで、質の高い飲食体験を提供できます。例えば4月に花見の気分を感じてもらうえるように、サクラをコンセプトとするメニューと外装を提供しましょう。
コロナ対策になる
さらなるメリットは、コロナ対策になる点です。屋外では空気が常に流れているため、換気設備を設置する必要がありません。風の流れを計算したうえで、テラス席のレイアウトを検討しましょう。
またテラス席の間隔を適度に空けることで、3密を避けながら安心して食事を楽しんでもらえます。座席を固定しないでおけば、顧客グループの人数に応じて座席を移動できます。利益率の目標を定めたうえで、回転率を計算してください。
顧客ニーズを満たす
最後に顧客ニーズを満たすことも可能です。例えばペットを連れた顧客が、屋外の座席を求める場合があります。リードフックやドッグランなどを設置しておけば、リピーター獲得を期待できます。
また喫煙しながら飲食を楽しみたい顧客は、屋外の座席を好みます。通行人の受動喫煙を防止できれば、喫煙できるテラス席を設けることができます。2020年「健康増進法の一部を改正する法律」が適用されて、原則的に屋内での喫煙が認められないからです。
テラス席を設置できる条件
次にテラス席を設置できる条件を確認していきましょう。メリットを活かせるテラス席をデザインしても、設置条件を満たさなければ営業許可が下りないからです。屋外座席の設置条件は、自治体ごとに出されている点にご注意ください。
レストランかカフェである
全ての店舗にテラス席を設置できるわけではありません。東京都においては食品を調理して飲食スペースを提供するレストランとカフェのみが許可されています。店舗を開業するエリアを管轄する自治体が出している設置基準をご確認ください。
参考:東京都福祉保健局「飲食店営業及び喫茶店営業の屋外客席に関する要綱」
店舗内の客席と隣接している
まず顧客が自由に行き来できるように、基本的にテラス席と店舗内の座席が隣接している必要があります。例えば道路の向こう側に駐車場を所有していても、基本的にはテラス席を設置することができません。道路の占有許可を取得すれば可能ですが、事前に対応窓口(役所や保健所)に相談する必要があります。
参考:東京都福祉保健局「飲食店営業及び喫茶店営業の屋外客席に関する要綱」
また歩行者のために通行できるスペースを確保しなくてはなりません。例えば東京都豊島区は「歩道上において、交通量が多い場所は3.5m以上、その他の場所は2m以上の歩行空間の確保が必要」と定めています。
引用:東京都豊島区「区道におけるテラス営業などのための道路占用許可基準の緩和について」
店舗内の席数と面積を超えない
次にテラス席の座席数は、店舗内の席数と面積を超えてはいけません。面積が大きくなればなるほど衛生管理が行き届かなくなるばかりか、のちほど解説するように近隣住民とのトラブルにつながりかねないからです。
また急な悪天候で顧客がテラス席から移動してきた場合に、店舗内の席数が足りなくなっては困ります。したがって店舗内よりもテラス席の規模を大きくすることは原則的にできません。
参考:東京都福祉保健局「飲食店営業及び喫茶店営業の屋外客席に関する要綱」
明確に区画して衛生的に管理する
さらにテラス席を明確に区画して、衛生的に管理する必要もあります。デッキを設置したり、ポール付きのロープなどで区切ったりして、定期的に清掃しなければなりません。清潔さがなければ、集客にも悪影響です。
なおデッキやロールだけではなく、観葉植物や植木などでテラス席を囲むこともできます。先ほど解説したように人目につきやすい場所ですから、設置条件を満たしたうえでおしゃれにデザインしましょう。
参考:東京都福祉保健局「飲食店営業及び喫茶店営業の屋外客席に関する要綱」
原則として調理設備を設置しない
最後に外で飲食する座席だからといって、衛生管理上の問題からテラス席に調理設備を設置できません。サラダバーやフリードリンクコーナー、バイキングコーナーなどが調理設備に含まれます。
参考:東京都福祉保健局「飲食店営業及び喫茶店営業の屋外客席に関する要綱」
テラス席は店舗内の調理場から離れていることが多いため、従業員の行き来が増えることが予想されます。テラス席限定メニューなどによって、オペレーションの効率化を図りましょう。
テラス席設置に必要な届出
テラス席を設置するためには、開業する店舗を管轄する自治体への届出が必要です。店舗の開業準備を始めたら、店舗工事前に管轄する自治体の窓口(役所や保健所など)に相談へ行きます。道路との境界がわかる店舗の設計図を持参しましょう。
東京都ではテラス席設置基準を満たしていると判断されたら、「屋外客席用の営業設備の大要」を記入して提出します。また公有地を使用する場合には、「屋外客席設置届」を提出します。さらに営業中の店舗にテラス席を新たに設置する場合は、「変更届」も必要になります。
参考:東京都福祉保健局「飲食店営業及び喫茶店営業の屋外客席に関する要綱」
なおレストランやカフェの開業手続き全般について下の記事に詳しくまとめてありますので、併せてご覧ください。
コロナ禍によるテラス営業の規制緩和
道路を占有してテラス席を設置する場合に、従来なら「道路占有許可」を得たうえで使用料を支払う必要がありました。しかし2020年からのコロナ禍により、店内飲食による感染リスクを防止するためにテラス営業が規制緩和されています。
参考:国土交通省「「新型コロナウイルス感染症の影響に対応するための沿道飲食店等の路上利用に伴う道路占用の取扱いについて」の一部改正等について ~占用期間を令和4年9月30日まで再延長しました~ 」
例えば東京都では「道路占有許可基準」が緩和されており、周辺道路の美化に努めることを条件として占有料が免除されました。また設置に関わる什器の経費を10万円を限度に援助しています。
ただし永続的なものではなく、令和4年9月30日までとなっています。また注意したいのは店舗単位で申請するのではなく、エリアごとに商店街などが自治体へ一括申請しなければいけない点です。
参考:東京都建設局「都道及び臨港道路におけるテラス営業などのための道路占用許可基準の緩和について」
参考:東京都中小企業振興公社「テラス営業への取り組みを支援いたします!」
テラス席をデザインするときの注意点
設置条件をクリアしたうえで、メリットを活かせるテラス席をデザインしましょう。デザインするときの注意点をいくつかご紹介します。
温度の調整
まず真夏や真冬には、屋外座席において温度の調節が難しくなる点にご注意ください。屋内座席のようにヒーターやエアコンを取り付けたり、窓やドアを開閉したりできないからです。
そこで屋外用パラソルヒーター(ガスや電気で駆動)を検討してください。遠赤外線を利用して周囲を温めるため、風が吹いてもあまり影響を受けません。またヒーター部分が赤くなるため、見た目からも暖かさを感じることができます。
排気ガス
次にテラス席が車道に面していたり、すぐ近くにあったりする場合には、排ガス対策が必要になります。どのような対策をすれば排気ガスからテラス席を守ることができるでしょうか?
テラス席を排気ガスの影響から完全に遮断したいなら、室内エリアと同等の「壁」を施工しなくてはいけなくなります。ところがテラス席を囲むかたちで「壁」を築いてしまうと、テラス席のメリットである開放感を味わってもらえなくなってしまいます。
解決策は、透明なビニールカバーを施工することです。軒の雨どいの下からぶら下げて、風が吹いてもなびかないように柱や地面に固定します。排気ガスの影響を受けずに、同時に屋外にいる雰囲気を楽しんでもらえます。
雨や雪の対策
また天気の良い日だけテラス席を提供して、軒を作らずに日よけのパラソルをテーブルに立てるだけのレストランやカフェがあります。しかし採算が取れない場合には、集客を増やすために天気の悪い日にもテラス席を提供する必要があります。
雨や雪の日でも提供するためには、テラス席の上に軒をデザインする必要があります。軒に適した材料には、金属や防水加工されたテント地などがあります。降水量が比較的多い地域では金属が適切で、あまり多くない地域ではテント地でも対応できます。
床の滑りにくさ
さらにテラス席が通路の一部である場合には、石畳などの床の表面がぼこぼこになりやすいです。情緒があって良いのですが、石畳は濡れると滑りやすくなります。そこで滑りにくい床材に取り替えると良いです。
滑りにくい床材としてコンクリートがあり、特にデザインが織り込まれたデザインコンクリートが適しています。滑りにくくするためにパターンを入れたり、色を付けたりすると、テラス席にふさわしい安全で魅力的な床材になります。
近隣とのトラブル
加えてテラス席で注意したい点として、近隣とのトラブルがあります。店舗から臭いや煙、騒音、排水などが発生すると、近隣の住民や店舗へ迷惑をかけてクレームを入れられてしまいます。
クレームを減らして店舗の評判を上げないと、売上を減らしてしまいかねません。顧客の話し声は想像しているより響きますので、特に民家からテラス席をできるだけ離したり、提供する時間を制限したりしましょう。
掃除や手入れ
最後にテラス席の掃除や手入れに注意して、衛生管理を徹底させましょう。外で食事をする際に心配なのが虫の混入です。床掃除や置いてある観葉植物などの手入れをこまめに行うことで、ボウフラやハエなどの発生を予防してください。
また店舗のイメージを良くするためには、自店舗のスペースだけでなく、周辺道路の美化に努めることも必要です。テラス席が道路に面している場合は、通行人が気持ちよく過ごせるように配慮しましょう。
なおテラス席をデザインするポイントと費用について、下の記事に詳しくまとめてありますので、併せてご覧ください。
テラス席の施工事例
テラス席をデザインするときの注意点を確認できたので、最後に施工事例をご紹介します。IDEALが施工したテラス席の事例において、今回解説してきたポイントがどのように活かされているかを解説してきます。
立ち飲みできるカジュアルなテラス席
「Bistro&Bar Quinque」様のテラス席は、ウッドデッキにテーブルのみを設置したカジュアルなデザインです。気軽に飲食を楽しめるように、小さな立ち飲みスペースを提供しています。
また店舗内の雰囲気と調和させるために、テーブルに木樽を利用しました。開放的な空間を演出できるように、店舗内とテラス席はガラス扉で仕切られています。
開放感とプライバシーを両立させたテラス席
「Affidamento Cafe」様のテラス席には、植物をネットに絡ませたグリーンカーテンが設置されています。店舗内からテラス席への視線を気にすることなく食事を楽しめるように、テラス席に面する窓にはブラインドが施工されています。
またウッドデッキと木目の什器は、店舗内の落ち着いた雰囲気とマッチしています。店舗全体のコンセプトが統一されています。
集客を伸ばせるテラス席をデザインしよう
テラス席を設置するためには、まず条件を満たして届出を出してください。屋外座席である点に注意しながら、メリットを生かして集客と売上を伸ばせるテラス席をデザインしましょう。
IDEALはテラス席を始めとした店舗内装のデザイン・工事やコンセプト設計、物件探し、資金調達支援、集客支援までをワンストップソリューションとしてご提供しています。
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監修者
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IDEAL編集部
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