本記事で、店舗を開業する流れと…
2023.04.10 2023.04.03|新規開業ノウハウ
用途地域の種類を解説!目的や調べ方、店舗開業の注意点も紹介
本記事で、用途地域の種類を解説します。用途地域の目的や調べ方、店舗開業の注意点もご紹介します。店舗の開業や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。
目次
用途地域とは?
用途地域とは、「建築を許可される建築物の用途」が定められた地域です。都市計画法に詳しく定められています。
それでは用途地域が定められる主な目的や建築物に対する制限、用途地域の調べ方を確認しましょう。
主な目的
用途地域が定められる主な目的は、地域内の環境保護や利便性のために建築物の用途を制限することです。用途地域は3種類(住居系と商業系、工業系)に分類され、各地域内に建築が許可される建築物の用途が異なります。
したがって店舗開業のために土地を購入するときに、用途地域によって定められた制限を理解していないと、立地選びに失敗する恐れがあります。例えば「エステサロン開業のために土地を購入してから、パチンコ店が開業して騒がしくなり、集客できなくなった」といった失敗です。
また住宅系の用途地域には、店舗などの商業施設の建築が許可されない場合もあります。理由は、住宅系の用途地域に住む住民の快適な暮らしを守るためです。用途地域が定められる目的として、健全で秩序のある都市の発展も掲げられています。
建築物に対する制限
用途地域による建築物に対する制限として、建ぺい率や容積率などが挙げられます。
建ぺい率は、土地面積に対する建築物面積の割合です。用途地域ごとに建ぺい率の上限が定められており、上限内の建築が求められます。ただし土地によって緩和条件が設けられていると、用途地域で定められた建ぺい率より引き上げられます。
また容積率は、土地面積に対する建築物の延べ床面積の割合です。容積率にも上限が定められており、土地面積から延べ床面積を算出できます。例えば土地面積が200㎡で、容積率の上限が60%であれば、建築物の延べ床面積の上限は120㎡(200㎡×0.6)です。
以上のように建ぺい率や容積率が定められることで、合理的に街づくりを計画し、将来的に建築されていく建築物を制限できます。
参考:国土交通省「建物はどんなルールに従って建てられているのですか?」
用途地域の調べ方
用途地域の調べ方として、国土交通省が運営している「国土数値情報ダウンロードサイト」があります。都道府県別に用途地域データをダウンロードできます。資料として収集し活用することが可能です。
また各自治体の公式サイトも、用途地域の調べ方です。各自治体により掲載方法が異なるため、開業を検討している自治体の公式サイトを確認しましょう。例えば東京都港区の公式サイトには、用途地域別に色分けされたマップが公開されています。
自治体の公式サイトに用途地域が公開されていないときは、役場に連絡を取って確認してください。あらかじめ用途地域が分かれば、出店エリアを絞ることが可能です。
用途地域の種類
用途地域の種類は、大まかに住居系と商業系、工業系に分類されます。都市計画法では、13種類(住居系8地域と商業系2地域、工業系3地域)に細かく分類されています。
それでは各用途地域の特徴や建築を許可される建築物などをご紹介します。また用途が指定されない地域の特徴も併せてご確認ください。
住居系
住居系の用途地域では、店舗の建築が細かく制限されています。下表に、住居系の用途地域8種類の特徴や建築を許可される店舗をまとめました。
種類 | 特徴 | 建築を許可される店舗の例 | 建築を許可されない店舗の例 |
田園住居地域 | 農業の利便性を図り 低層住宅の環境を保護する地域 | 小規模店舗 店舗兼住宅 事務所兼住宅 日用品販売店 喫茶店 理髪店 建具店 ※2階以下の建築物※床面積が150㎡以下 農産物直売所農家レストラン ※床面積500㎡以下 ※2階以下 | 物販店 飲食店 損害代理店 銀行の支店 |
第一種低層住居専用地域 | 閑静な住宅街の 良好な環境を守る地域 | 小規模店舗 店舗兼住宅 事務所兼住宅 ※建築物の高さが10-12m以下 | 日用品販売店 喫茶店 理髪店 飲食店 ※限定的に建築可 |
第二種低層住居専用地域 | 買い物に便利な住宅街 | 小規模店舗 店舗兼住宅 事務所兼住宅 日用品販売店 喫茶店 理髪店 建具店 ※建築物の高さ10-12m以下 ※2階以下の建築物 ※床面積150㎡以下 | 物販店 飲食店 損害代理店 銀行の支店 |
第一種中高層住居専用地域 | 集合住宅や店舗が 混在した住宅地 | 小規模店舗 店舗兼住宅 事務所兼住宅 日用品販売店 喫茶店 理髪店 建具店 ※2階以下の建築物 ※床面積500㎡以下 | 3階以上の店舗 遊興施設 ※パチンコ店やカラオケボックスなど |
第二種中高層住居専用地域 | 住環境を維持しつつ 利便性が高い地域 | 小規模店舗 店舗兼住宅 事務所兼住宅 日用品販売店 喫茶店 理髪店 建具店 ※2階以下の建築物 ※床面積1,500㎡以下 | 3階以上の店舗 遊興施設 ※パチンコ店やカラオケボックスなど |
第一種住居地域 | 大規模なマンションや 店舗、事務所を建築できる地域 | 店舗全般 旅館スキー場 ※床面積3,000㎡以下 | 遊戯施設 ※パチンコ店やカラオケボックスなど |
第二種住居地域 | 大規模なマンションや 店舗、事務所を建築できる地域 | 店舗全般 旅館 スキー場 遊戯施設 ※パチンコ店やカラオケボックスなど ※床面積10,000㎡以下 | 床面積10,000㎡超の店舗 |
準住居地域 | 道路沿道で 自動車関連施設などの立地と調和した 住居環境を保護する地域 | 店舗全般 自動車整備工場 倉庫 映画館 ※床面積10,000㎡以下 ※住居系の用途地域では最も許容範囲が広い | 床面積10,000㎡超の店舗 |
上表のように低層住居専用地域から中高層住居専用地域、住居地域へ進むほど、建築を許可される店舗の業種・業態の幅が広がります。
工業系
工業系の用途地域では、住居系の用途地域よりも幅広い業種・業態の店舗の建築が許可されます。下表に、工業系の用途地域3地域の特徴や建築を許可される店舗をまとめました。
種類 | 特徴 | 建築を許可される店舗の例 | 建築を許可されない店舗の例 |
準工業地域 | 環境の悪化をもたらす恐れがなく 工業の利便性の増進を図る 工場に隣接する地域 | 店舗全般 | 一部の遊戯施設 ※キャバレーなど |
工業地域 | 工業の利便性の増進を図る 湾岸地域 | 店舗全般 ※床面積10,000㎡以下 | ホテル・旅館 キャバレー ナイトクラブ 映画館 劇場 |
工業専用地域 | 工業の業務の利便性増進を図るため 工業地としての目的を妨げる建築物を 建てられない地域 | 店舗全般 ※床面積10,000㎡以下 | ホテル・旅館 キャバレーナイトクラブ 映画館 劇場 ※床面積10,000㎡超の店舗 |
上表のように、工業系の用途地域にも幅広い業種・業態の店舗を建築できます。ただし周辺環境(工場の排気やトラックの騒音など)に配慮する必要があります。
商業系
商業系の用途地域では、工業系の用途地域よりも幅広い店舗の建築が可能です。下表に、商業系の用途地域2種類の特徴や建築を許可される店舗をまとめました。
種類 | 特徴 | 建築を許可される店舗の例 | 建築を許可されない店舗の例 |
近隣商業地域 | 近隣住民に日用品の供給を行い 日常生活の利便性が高い地域 | 店舗全般 | 一部の遊戯施設 ※キャバレーなど |
商業地域 | 店舗や事務所などの利便性を増進し 高層マンションも建築される地域 | 店舗全般 ※キャバレーなども含む | 制限なし ※工場や倉庫の建設は制限 |
上表のように商業系の用途地域は、工業系の用途地域よりも幅広い店舗の建築が可能です。ただし競合の出店状況を把握する必要があります。
用途が指定されない地域
全ての土地に用途地域が指定されているわけではありませんが、用途が指定されていない土地に、自由に店舗を建築できるわけではありません。例えば自治体から特定用途制限地域に指定されている土地には、店舗の業種や業態によっては店舗の建築が許可されません。
また用途が指定されていない地域は、将来的に市街地化が計画される可能性があります。開業予定エリアの都市計画を確認してから、店舗の建築や出店をご検討ください。
用途地域の種類に関する店舗開業の注意点
用途地域の種類によって店舗開業が制限されるため、物件探しや店舗の建築に注意が必要です。飲食店とクリニック、一般公衆浴場、店舗兼住宅を取り上げて、用途地域の種類に関する店舗開業の注意点をご紹介します。
なお店舗物件の探し方を解説していますので、次の記事も併せてご覧ください。
飲食店
飲食店は、幅広い用途地域に開業可能です。第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域などにおいては、床面積や階数の制限内であれば飲食店を開業できます。第一種住居地域や第二種住居地域、準住居地域などにおいては、制限が緩和されます。
また2種類の用途地域をまたぐ土地の場合は、自己判断ではなく自治体に正確な情報を確認してください。業種・業態によっては、学校や病院などの保全施設の近くに開業できない場合もあるからです。
そして近隣商業地域や商業地域などでスナックやバーを開業する場合には、風俗営業の届出・許可を申請する必要があります。風俗営業の種類や届出・許可の申請についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
クリニック
クリニックの開業は、次の用途地域で制限を受けます。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 田園住居地域
- 工業地域
- 工業専用地域
また有床クリニックには、上記以外にも開業の条件があります。建築基準により「特殊建築物」とされ、立地条件や防火設備、建築物構造などが制限されているからです。不特定多数の人々に利用されることから、一般的な建築物よりも火災や事故などのリスクを考慮して厳しい条件が定められています。
なお用途地域以外にもクリニックの開業条件がありますので、次の記事も併せてご確認ください。
公衆浴場
公衆浴場は2種類(一般公衆浴場とその他の公衆浴場)に分類され、種類によって用途地域の制限を受けます。
まず一般公衆浴場(いわゆる銭湯)は、毎日の衛生管理に必要ですから、用途地域の制限を受けません。
一方でその他の公衆浴場(サウナや個室付き公衆浴場、健康ランド型の温泉や銭湯、保養や休養を目的とするヘルスセンターなど)は、次の用途地域において制限を受けます。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 田園住居地域
なおサウナや泥風呂などは、公衆浴場法や消防法などによる基準を満たす必要もあります。
店舗兼住宅
工業専用地域以外において、用途制限を満たすことで店舗兼住宅を開業可能です。例えば第一種低層住居専用地域であっても、非住宅部分(店舗部分)の床面積が50㎡以下かつ建築物の延べ床面積2分の1以下であれば開業できます。
ただし50㎡(15坪や畳30枚程度)以下となると、手狭な店舗になります。店舗の業種・業態によっては、設備や商品在庫のスペースが足らず、客席の数を確保しにくいです。固定費や売上目標から、中長期的な経営方針の検討が必要になります。
一方で第二種低層住宅なら、制限が緩和(店舗部分の床面積150㎡以下など)されます。したがって店舗兼住宅で開業する場合は、必要な店舗部分の床面積を算出して、適切な用途地域を選んでください。
なお店舗兼住宅を建てる方法や流れをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
「用途地域以外に店舗を開業する」際の制限
「用途地域以外に店舗を開業する際」も、制限を受けます。用途地域の指定を受けていない土地として、市街化調整区域や都市計画区域外・用途地域無指定地区などが挙げられます。
市街化調整区域に開業できる店舗は小規模で、日常生活に関連する業種や業態に限定されます。自治体ごとに制限が設けられているため、開業前に確認が必要です。
都市計画区域外と用途地域無指定地区においても同様で、店舗を開業できる条件を見極める必要があります。特に用途地域以外の地域ではライフラインが未整備の場合があるため、注意が必要です。
用途地域の種類を踏まえて店舗を開業しよう!
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監修者
-
IDEAL編集部
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