2024.10.29  2024.09.18|内装工事

店舗のバリアフリー化に活用できる補助金・助成金とは?注意点・事例・費用も紹介

店舗のバリアフリー化に活用できる補助金・助成金とは?注意点・事例・費用も紹介

本記事で、店舗のバリアフリー化に活用できる補助金・助成金を解説します。また店舗をバリアフリー化する際の注意点や事例、費用もご紹介します。店舗の開業や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。

店舗のバリアフリー化とは?基本情報を紹介

店舗のバリアフリー化とは?基本情報を紹介

店舗のバリアフリー化を計画する前に、基本情報を確認しましょう。基本情報を確認することで、計画を進めやすくなるからです。それでは店舗バリアフリー化の定義と目的、バリアの種類、方法、ユニバーサルデザインとの違いをご紹介します。

定義と目的

まず店舗のバリアフリー化の定義は、顧客の来店・購買体験や従業員の業務における障壁(バリア)を取り除いた店舗に変化させることです。店舗をバリアフリー化する目的は、多様な人のニーズに応えるためです。

例えば高齢者がエントランスの階段を上れなかったり、車椅子利用者が一般的なトイレを利用できなかったりすると、店舗内にバリアが存在しています。店舗をバリアフリー化する際の注意点については、後ほどご紹介します。

参照元:政府広報オンライン「知っていますか?街の中のバリアフリーと『心のバリアフリー』」

バリアの種類

次に店舗におけるバリアは、4種類(物理的・制度的・文化的・意識的なバリア)に分けられます。

  • 物理的なバリアの例:段差や狭い通路など
  • 制度的なバリアの例:盲導犬の入店拒否や販売の制限など
  • 文化的なバリアの例:視覚情報または音声情報だけの案内など
  • 意識的なバリアの例:展示案内に対する妨害行為など

バリアフリー化を検討する際には、自店舗に存在するバリアの種類を分析したうえで、適した方法を選びましょう。

参照元:政府広報オンライン「知っていますか?街の中のバリアフリーと『心のバリアフリー』」

方法

それから店舗をバリアフリー化する方法もご紹介します。

  • エレベーターやスロープ、手すり
  • 自動ドア
  • センサー式照明
  • バリアフリートイレ
  • 点字ブロックや音声案内、ピクトグラム
  • 車椅子利用者用の駐車スペースやテーブル、施術台
  • 幅の広い出入口や通路
  • 従業員に対する研修会

参照元:国土交通省「小規模店舗のバリアフリー化について」(16-32ページ)

以上の中から、自店舗の業種・業態や商品・サービスなどに合う方法を選びましょう。店舗経営における研修の注意点をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

ユニバーサルデザインとの違い

そして店舗のバリアフリー化とユニバーサルデザインとの違いは、対象者です。バリアフリーの対象者は主に障害者や高齢者で、物理的・精度的・文化的・意識的なバリアを取り除きます。

一方でユニバーサルデザイン(全ての人が利用しやすい設計)の対象者は、全ての人です。したがってバリアフリーは、ユニバーサルデザインに含まれています。店舗のユニバーサルデザインについてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

店舗をバリアフリー化する際の注意点

店舗をバリアフリー化する際の注意点

基本情報だけではなく、店舗をバリアフリー化する際の注意点も確認しましょう。8点(法令遵守と動線の設計、接客・販売の方法、駐車場・エントランス、通路、座席・施術台などの配置、トイレ、設備・機器・什器)をご紹介します。

法令遵守

まず法令遵守が、店舗をバリアフリー化する際の注意点として挙げられます。バリアフリー法に基づいて、障害者・高齢者が利用する大規模な建築物(病院や百貨店、老人ホームなど)は、物移動等円滑化基準に適合しなくてはなりません。

参照元:国土交通省「建築物におけるバリアフリーについて」

ただしバリアフリー法だけではなく、消防法都建築基準法によっても、店舗の内装デザインは制限されています。消防法と建築基準法の内装制限についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

動線の設計

次に動線の設計も、店舗をバリアフリー化する際の注意点です。店舗の駐車場からエントランス、メインフロア(小売店の商品陳列スペースや飲食店のダイニングスペースなど)、会計カウンターまでの動線を設計しましょう。

バリアフリー化だけではなく、動線の設計は、顧客の満足度や従業員の業務効率などを左右するため、店舗の集客と売上に影響します。店舗の動線を設計する際の注意点をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

駐車場・エントランス

それから駐車場・エントランスも、店舗をバリアフリー化する際の注意点です。車椅子利用者用の駐車スペースを配置したり、高齢者のアクセスしやすいエレベーターや自動ドアを施工したりしましょう。

ただし店舗のドアには、採光やセキュリティ、第一印象などの役割もあります。店舗のコンセプトに合うエントランスをデザインしなければなりません。店舗に施工できるドアの種類と工事費用をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

通路

また通路も、店舗をバリアフリー化する際の注意点です。店舗内の動線設計に基づいて、車椅子の通行できる通路の幅や高齢者の歩行しやすいスロープなどをデザインします。転倒や衝突などの事故を防ぐために、床や壁の素材にもご注意ください。

安全性や快適性はもちろん、店舗の通路は、顧客の回転率や販売率、プライバシー、従業員の業務効率などにも影響を与えます。店舗の通路をデザインするポイントをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

座席・施術台などの配置

さらに座席の配置も、店舗をバリアフリー化する際の注意点です。飲食店やサロンなどにおいては、車椅子利用者用のテーブルや高齢者用の施術台などを配置します。座席・施術台などのサイズや間隔などを計算しましょう。

しかし飲食店においては座席数が少なくなるほど、1回転当たりの顧客数も減少してしまいます。飲食店における席数の目安と計算方法をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

トイレ

そしてトイレも、店舗をバリアフリー化する際の注意点です。幅広い顧客層(車椅子利用者や乳幼児、高齢者など)が利用しやすいように、店舗内外にバリアフリートイレをデザインしましょう。

バリアフリー化だけではなく、店舗のトイレをデザインする際には、デザイン性やメンテナンス性も重要です。店舗に施工できるトイレの種類をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

設備・機器・什器

続いて設備・機器・什器も、店舗をバリアフリー化する際の注意点です。自店舗の業種・業態や商品・サービスなどに応じて、幅広い顧客層が利用しやすい設備・機器・什器を選定してください。

例えばバリアフリー対応の什器には、高さを変えられる椅子や車椅子の高さに合わせて陳列棚などがあります。店舗で利用される什器の分類や入手方法をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

接客・販売の方法

なお接客・販売の方法も、店舗をバリアフリー化する際の注意点です。障害者差別解消法の改正により、2024年4月から合理的配慮の提供が義務化されています。店舗のバリアフリー化に向けて、顧客との建設的対話が必要です。

参照元:内閣府「リーフレット『令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました』」

例えばバリアフリーに対応した接客・販売の方法として、予約時のヒアリングや来店前の説明(メールや電話など)、来店中のサポート、セルフオーダーシステムの導入などがあります。

参照元:国土交通省「小規模店舗のバリアフリー化について」(65-68ページ)

バリアフリー化した店舗の事例

注意点に気をつけて店舗をバリアフリー化できるように、参考となる事例を調査しましょう。事例5点を取り上げて、各事例の特徴(シャアスロープと認定、小規模事業者持続化補助金、車椅子利用者、バリアフリー設計)をご紹介します。

シェアスロープを導入した飲食店

シェアスロープを導入した飲食店

まず「串カツ田中」は、シェアスロープを導入した飲食店です。車椅子やベビーカーを利用する顧客のバリアを解消するために、NPO法人(ココロのバリアフリー計画)と提携してシェアスロープを活用しています。

ココロのバリアフリー計画の運営するWebサイト(HEART BARRIER FREE PROJECT)には、串カツ田中を含むバリアフリー対応(エレベーターやトイレなど)の店舗が掲載されています。

参照元:

PR TIMES「認定NPO法人ココロのバリアフリー計画×串カツ田中 シェアスロープ導入店舗を10店舗へ拡大し、車いす利用者やベビーカー利用者の自由の拡大へ|串カツ田中ホールディングス」

ココロのバリアフリー計画「必要なときに、誰でも自由に使えるシェアスロープはじめました。」

認定を取得しているスーパーマーケット

認定を取得しているスーパーマーケット

次に「AEON」は、バリアフリー新法の認定を取得しているスーパーマーケットです。立体駐車場の大型誘導サインやバリアフリートイレ、優先ベンチ、誘導手すり付きエスカレーターなどがデザインされています。

設備・機器・什器だけではなく、サービス介助士や認知症サポーターの従業員が配置されており、買い物客のおもてなしや介助、サポートなどが行われています。

参照元:AEON「人にやさしいお店づくり」

小規模事業者持続化補助金を活用したサロン

小規模事業者持続化補助金を活用したサロン

それから「美容室Tree Three」は、小規模事業者持続化補助金を活用したサロンです。高齢層が来店しやすいように、出入口・トイレのスロープや手すり、店内移動用の車椅子などが導入されました。

コロナ禍にバリアフリー化が計画されたため、感染症対策の検温・消毒機器や空気清浄機なども導入されています。来店だけではなく、訪問サービスも提供しているサロンです。

参照元:PR TIMES「『バリアフリー対策でハートフルな美容室を目指す!』|ビジング Union」

車いす利用者に対応した歯科クリニック

車いす利用者に対応した歯科クリニック

続いて「とみます医科・歯科クリニック」は、車いす利用者に対応した歯科クリニックです。点字ブロックや幅の広い出入口・通路などが施工されています。患者のプライバシーに配慮して、診療室は半個室です。

内装空間だけではなく、身体への負担の少ない施術台が配置されています。外科・内科・リハビリテーション科が併設されているため、患者の幅広い症状に対応しているクリニックです。

参照元:

鳥取マガジン「[オープン]最新の設備とバリアフリー対応「とみます医科・歯科クリニック」老若男女だれでも気軽に通える歯医者さん」

とみます医科・歯科クリニック「歯科造設 改名 について」

バリアフリー設計の介護施設

バリアフリー設計の介護施設

そして「サンライズ小川」は、バリアフリー設計の介護施設です。エレベーターや段差のない床、幅の広い出入口・通路、緊急通報ボタンなどが施工されています。サービス付き高齢者向け住宅です。

内装空間には木材の内装材や什器が施工されており、温かみを感じさせるデザインです。各入居者の居室だけではなく、交流スペースやガーデンなどもレイアウトされています。

参照元:サンライズ小川「バリアフリー設計住宅」

店舗のバリアフリー改修工事費用

店舗のバリアフリー改修工事費用

事例のように店舗をバリアフリー化するためには、予算が必要です。そこで店舗バリアフリー改修工事費用の相場と内訳をご紹介します。予算を確保できるように、店舗バリアフリー改修工事に活用できる補助金・助成金も確認しましょう。

相場

まず店舗バリアフリー改修工事費用の相場は、坪単価10万〜80万円程度です。例えば20坪の店舗物件を貸借するなら、200万〜1,600万円程度の工事費用がかかります。ただし店舗の立地や物件の規模、種類(居抜きかスケルトン)、設備・機器・什器の台数などによって、工事費用は変動します。

内訳

次に店舗バリアフリー改修工事費用の内訳について、下表にまとめました。参考情報として、20坪の店舗物件にかかるバリアフリー改修工事費用を試算してあります。

費用の内訳各費用の目安費用の試算
諸経費
(デザインや施工監理、
仮設、解体など)
全体の20%程度40万~320万円程度
(20坪の店舗物件)
内装工事費
(段差のない床や
幅の広い出入口や通路、
スロープや手すりなど)
全体の20%程度40万~320万円程度
設備・機器・什器工事費
(エレベーターや自動ドア、
センサー式照明、
バリアフリートイレ、
点字ブロックや音声案内、
ピクトグラム、
車椅子利用者用のテーブル
など)
全体の60%程度120万~960万円程度
合計100%
(坪単価10万~80万円程度)
200万~1,600万円程度

上表のように店舗のバリアフリー改修工事費用においては、設備・機器・什器工事費が大半を占めます。したがって設備・機器・什器の種類と台数が増えるほど、工事費用が増加するわけです。

補助金・助成金

そして店舗バリアフリー改修工事に活用できる補助金・助成金も確認しましょう。

  • 小規模事業者持続化補助金
  • 小規模事業者店舗改修助成金
  • 訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金
  • 宿泊施設バリアフリー化支援補助金
  • サービス付き高齢者向け住宅整備事業補助金

参照元:

小規模事業者持続化補助金「小規模事業者持続化補助金(一般型)とは」

横浜市「小規模事業者店舗改修助成事業」

観光庁「宿泊施設への支援制度」

東京都産業労働局「宿泊施設のバリアフリー化支援事業」

国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅を整備する事業者 を支援します!~『令和6年度サービ ス付き高齢者向け住宅整備事業』の募集を開始~」

以上の補助金・助成金ごとに申請条件や用途などが定められていますので、必ず最新情報を確認しましょう。店舗開業・経営に活用できる補助金・助成金をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

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監修者

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