2023.06.23  2023.08.14|店舗運営ノウハウ

店舗の耐震基準と耐震診断とは?耐震改修工事の流れ・費用・注意点も紹介

店舗の耐震基準と耐震診断とは?耐震改修工事の流れ・費用・注意点も紹介

本記事で、店舗の耐震基準と耐震診断を解説します。耐震改修工事の流れや費用、注意点もご紹介します。店舗の開業や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。

店舗に耐震性が必要な理由

店舗に耐震性が必要な理由

日本国内で店舗を開業する場合には、震災のリスクに備えなくてはなりません。そこで店舗に耐震性が必要な理由を正確に押さえたうえで、店舗の耐震診断や耐震改修工事を計画しましょう。

地震による被害を軽減する

まず地震による被害を軽減するために、店舗に耐震性が必要です。耐震性が低い店舗物件内では、地震によって商品がダメージを受け、顧客や従業員の安全が確保されません。経済的にも人的にも店舗の被害を抑えることが必要です。

そこで大規模な地震(阪神淡路大震災や東日本大震災など)を想定して、店舗物件の耐震性を高めて、地震による被害を軽減しましょう。今後も大規模な地震の発生(南海トラフ地震など)が予測されています。

参考:大阪府「なぜ耐震化が必要なのか」

店舗営業に対する信頼感を与える

次に信頼感を与えるためにも、店舗に耐震性が必要です。店舗物件の耐震性を高めて、顧客や従業員の安全を保障することで、店舗営業に対する信頼感を高めましょう。

地震予測の精度は高くないため、耐震性の低い店舗では顧客や従業員に不安感を与える恐れがあります。したがって商品陳列の安全性や避難経路の確保などを徹底することが求められます。

関係法令を遵守する

また関係法令を遵守するためにも、店舗に耐震性が必要です。「建築物の耐震改修の促進に関する法律」によって、店舗物件を含む建築物には、耐震診断や耐震診断に基づく改修が求められています。

参照元:e-GOV法令検索「建築物の耐震改修の促進に関する法律」第1条

また耐震基準は、阪神淡路大震災以降に見直され、定期的に改正されています。

参照元:一般財団法人日本耐震診断協会「耐震診断義務付け対象となる「大型店舗等」とは?」

そして地方自治体の判断で、大規模な建築物や防災拠点となる建築物に対して、耐震診断の義務付けが可能です。耐震診断の結果次第では、耐震改修工事が求められます。

参考:神奈川県「耐震診断が義務付けられた建築物」

なお店舗内装工事の種類や費用もまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

店舗の耐震基準と耐震診断

店舗の耐震基準と耐震診断

店舗の耐震性を担保するために、店舗の耐震基準や耐震診断について解説します。耐震診断については、法的義務のある店舗の条件や依頼できる業者、診断の項目と費用をご確認ください。

店舗に求められる耐震基準

店舗に求められる耐震基準は、「新耐震基準」です。1981年に建築基準法が改正され、震度7以上の大地震でも倒壊や崩壊を防げる建築物(店舗物件)の設計が求められています。つまり大規模地震でも倒壊しない建築物です。

参照元:国土交通省「参考資料集」(P1ー2)

旧耐震基準では、震度5の地震でも損傷しない建築物の構造が求められていました。建築基準法改正のきっかけは、伊豆大島近海地震などの大規模地震発生でした。

耐震診断の法的義務のある店舗の条件

「建築物の耐震改修の促進に関する法律」により、建築基準法改正(1981年5月31日)以前に建てられた店舗物件を含む建築物(特定建築物)には、耐震診断や必要に応じた改修が努力義務とされています。

参照元:一般財団法人 日本耐震診断協会「耐震診断義務付けとなる「大型店舗等」とは?」

また2013年からは不特定多数の人々が利用する大規模建築物(大型店舗等)に対しても、耐震診断の実施と結果報告が義務付けられました。「1981年以前に立てられ、3階建て以上かつ床面積5,000㎡以上の大型店舗等」「防災拠点となる大型店舗」「避難路沿道の大型店舗等」が対象です。

参照元:一般財団法人 日本耐震診断協会「耐震診断義務付けとなる「大型店舗等」とは?」

なお地方自治体独自の判断で、「不特定多数・避難弱者が利用する大規模建築物等」「広域防災拠点となる建築物」「避難路沿道の建築物」に対して、耐震診断を義務付けることも可能です。

参照元:神奈川県「耐震改修促進法について」

耐震診断を依頼できる業者

店舗の耐震診断を依頼できる業者は、関係機関で必要な講習を受講した有資格者です。法令に基づいて、特定建築物や大型店舗等の耐震診断と必要に応じた改修は、有資格者が行わなければなりません。

参照元:一般社団法人「大阪府建築士事務所協会」

したがって耐震診断業者の選び方が重要です。耐震診断や必要に応じた改修を無理に勧める業者だと、店舗側が不利益を被る恐れがあります。詐欺や悪徳な勧誘に注意しましょう。

なお地方自治体によっては、トラブル防止のために耐震診断を実施できる業者の登録制度が設けられています。店舗開業エリア内の登録システムを確認したうえで、耐震診断を業者に依頼してください。

ただし自治体のシステムに登録されていないからといって、信頼できない業者だとは限りません。取引のある設計事務所や内装工事業者などに相談することもできます。また耐震支援ポータルサイトを活用することも可能です。

参照元:一般財団法人 日本建築防災協会「耐震支援ポータルサイト」

耐震診断の項目

店舗の耐震診断の項目は、大まかに3点に整理されます。

  • 予備調査
  • 現地調査
  • 詳細診断(第一次~第三次)

まず予備調査では、建築物の概要や増改築、経年劣化などが確認されます。次に現地調査では、建築物の目視調査と設計図書の確認が行われ、詳細診断の内容が提案されます。

そして詳細診断では、建築物の耐震性が詳しく診断されます。建築構造によって、第一次~第三次まで実施されます。第一次から第三次へと計算方法が難しくなり、詳細な診断が可能です。

例えば壁の多い店舗物件には第一次診断が実施され、柱や壁の断面積から耐震性が診断されます。そして詳細診断の結果に応じて、業者から工事の内容と費用などが提案されます。

耐震診断の費用

店舗の耐震診断の費用は、建築物の構造や面積などによって異なります。下表に、耐震診断の費用相場をまとめました。

建築構造延べ床面積費用の目安
鉄筋コンクリート造(RC造)1,000〜3,000㎡
1,000㎡以下
1,000〜2,500円/㎡程度
2,000円/㎡以上
鉄骨造(S造)1,000〜3,000㎡
1,000㎡以下
1,000〜3,000円/㎡程度
2,500円/㎡以上

参照元:一般財団法人 日本耐震診断協会「耐震診断の料金(費用)」

上表の金額はあくまで参考情報ですので、耐震診断を依頼する業者から見積りを取ってください。構造図がない店舗の耐震診断には、図面の復元が必要になり、余分に費用がかかります。

なお店舗内装デザイン・工事の流れもまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

店舗耐震改修工事の基本情報

店舗耐震改修工事の基本情報

耐震診断で改修が必要と判断された店舗には、耐震改修工事の努力義務があります。店舗の被害軽減と信頼獲得を実現するために、耐震改修工事を検討しましょう。それでは耐震改修工事の目的や流れ、種類、注意点をご紹介します。

耐震改修工事の目的

まず店舗耐震改修工事の目的は、躯体の強度と内装の安全性を向上させることです。

躯体には基礎や柱、梁、壁などが含まれ、建築物にかかる力を支える役割があります。躯体の強度を向上させることで、店舗物件が地震の揺れに耐えて、破損や倒壊を防ぎます。特に壁の強度は建築物の耐震性に影響するため、耐震壁を施工して補強する方法もあります。

強度の高い躯体に内装材を施工することで、内装の安全性を高めることが可能です。内装には天井材や内壁材、床材だけではなく、設備や機器、什器、装飾なども含まれます。内装の安全性も向上させることで、地震発生時に店内にいる従業員や顧客を守ることが可能です。

耐震改修工事の流れ

次に耐震改修工事の流れを、下記のリストにまとめました。

  • 耐震改修工事の計画
  • 基礎の打ち増し
  • 柱や梁などの固定
  • 壁の増強
  • 工事後の検査

耐震改修工事の計画では、必要な工事の費用と期間に基づいて、店舗の営業予定を検討してください。必要に応じて、店舗営業の時間短縮や休業が必要です。

基礎の打ち増しは、鉄筋が入っていない店舗に必要な工程です。柱や梁などの固定には、耐震金物が使用されます。筋交が接合部分から取れないようにするためです。そして壁の増強には、耐震壁が施工されます。

工事後の検査で、耐震材の施工具合が確認されます。ただし耐震診断の結果によって、耐震改修に必要な工事内容は異なりますので、耐震診断業者からの提案内容を確認してください。

耐震改修工事の種類

そして耐震改修工事の種類は、下記の3点です。

  • 耐震補強工事
  • 制震補強工事
  • 免震補強工事

耐震補強工事は、耐震壁を増強したり、外付けフレームを新設したりして、建築物の耐震性を補強します。店舗を営業しながら、工事が可能です。

制震補強工事は、店舗物件が地震による揺れを吸収できるように、制震性を補強します。制震装置(ダンパーなど)が設置されることで、大規模地震や繰り返しの地震に対応可能です。

免震補強工事は、店舗物件に地震の揺れを直接伝えないように、免震性を補強します。店舗を地盤から切り離すために、店舗物件と基礎の間に免震装置が設置。地震による揺れを大幅に軽減できますが、大掛かりな工事になる分だけ費用が増します。

耐震改修工事の注意点

なお耐震改修工事の注意点もご確認ください。

  • 工事内容によっては休業や移転をしなくてはならない
  • 貸店舗の工事には貸主の許可が必要である
  • 耐震診断の結果によっては建て替えが必要になる

店舗物件を所有している場合には、耐震診断の結果を踏まえて、改修工事か建て替えかを判断しましょう。店舗物件を賃借している場合には、貸主の判断で耐震診断と改修工事・建て替えが判断されます。耐震改修の規模や時期によっては、店舗の休業や移転が必要です。

なお内装工事業者の選び方をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

店舗耐震改修工事の費用

店舗耐震改修工事の費用

店舗耐震改修工事を依頼するためには、必要な予算を確保しなくてはなりません。そこで店舗耐震改修工事費用の相場と内訳をご紹介します。予算内に費用を収められるように、工事費用の節約方法も取り上げます。

工事費用の相場

まず店舗耐震改修工事費用の相場は、3万〜10万円/㎡程度です。100㎡(約30坪)の店舗物件であれば、300万〜1,000万円程度になります。ただし建築物全体の耐震改修工事を想定した金額です。

また店舗耐震改修工事費用は、建築物の構造や規模だけではなく、耐震補強材と工法によっても変動します。例えば店舗付き住宅と雑居ビルとでは、工事の規模や内容が異なるため、費用にも差が出ます。

したがって耐震補強工事を依頼する業者に、工事の費用と期間の見積りを依頼してください。工事前に必要な耐震診断の費用も加えて、予算を確保する必要があります。

工事費用の内訳

下表に、工事費用の内訳をまとめました。

工事費用の内訳工事費用の相場工事費用の試算(100㎡の店舗物件)
耐震補強5千〜3万円/㎡程度50万〜300万円程度
制震補強5千〜3万円/㎡程度50万〜300万円程度
免震補強2万〜4万円/㎡程度200万〜400万円程度
合計3万〜10万円/㎡程度300万〜1,000万円程度

上表のとおり、耐震補強と制震補強に比べて、免振補強の費用が高いです。耐震補強工事費用については、建築物の構造・規模や工事内容などによって50万円以下になる場合もあります。

また制震補強工事費用については、外壁を解体してダンパーを取り付ける場合に費用が高くなります。また補強してから施工する壁材によっても、費用が変動します。

なお免震補強工事費用については、地盤の状態や店舗の敷地と面積などによって、変動します。また免震装置を設置すると、年間数万円のメンテナンス費用も必要です。

工事費用の節約方法

なお耐震改修工事費用の節約方法もご確認ください。

  • 相見積もりを取る
  • 補助金・助成金を申請する
  • 優遇税制を活用する
  • 耐震補強材の種類を検討する

まず相見積もりを取ることで、耐震改修工事費用の内容と費用、期間を比較検討できます。各業者に同じ希望条件や予算を伝えて、適切な業者を選びましょう。

また地方自治体による補助金・助成金を申請することで、返済義務のない金額を受給できます。開業エリアの自治体が運営する補助金・助成金の申請条件をご確認ください。

参照元:東京都耐震ポータルサイト「耐震化助成制度」

そして優遇税制を活用することで、所得税や固定資産税が減額されます。ただし店舗併用住宅などの条件をご確認ください。

参照元:国土交通省「耐震改修に関する特例措置」

加えて耐震補強材の種類を検討することで、費用を抑えることが可能です。耐震診断結果に基づいて、店舗物件に必要な耐震性を確認しましょう。

なお消防法と建築基準法の内装制限についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。

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監修者

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